ジャガイモ品種「紅丸」(紅爵 BENIMARU)

(1)来 歴
 北農試(札幌市琴似)において、昭和4年、「レムブケ・フルーエ・ローゼン」を母とし、「ペポー」を父として交配し、選抜を重ね、昭和13年に北海道の優良品種に決定したものです。2023年北海道の優良品種から削除されました。
 名の由来は、育成当時、後志地方では「長白」、「蝦夷錦」などの形が長く、皮色の白黄な品種が栽培されていたのに対し、本品種は丸まるとして大きく。皮色が紅であったことによります。
 道央、道南を除き、澱粉原料用としては「コナフブキ」についで栽培されています。なお、肉崩れ少なく、年が明けてくると甘味がいっそう増してくるので、道東や海岸地方では古くから生食用として人気があり、「紅爵」の名、あるいは「紅白」セットとして売っているところもあります。肉の外部に近い一部にも紅の着色がありますが、固有の特性であり、心配は入りません。
(2)地上部特性
熟期は「農林1号」並ないしやや晩く、中晩ないし晩生種に属します。
 萌芽は早く、その後の初期生育も良好で、生育初期の草姿は開いています。若芽は太く、茎の基部は赤紫色を帯びています。
 茎長は比較的高く、「コナフブキ」を超えます。茎数は多く、倒伏は比較的少ないのですが、多肥などで茎長が伸びてくると倒伏を増してきます。
 分枝は多く、よく繁茂します。茎翼はやや波状を呈します。小葉は広大で、葉色の濃さは中ですが、葉柄には淡紫の着色があるので、他の品種と区別しやすい。
 花色は白、開花数が多く、花粉は少なく、自然結果は見られません。茎当り開花花梗数は「農林1号」の2つ前後より多い。
 疫病抵抗性主働遺伝子を保有してないので(r)、初発生は早く、長期間の防除が必要です。本道でその発生が減った青枯病にも「農林1号」より弱い。
 各種のウイルス病に普通に罹病します。
(3)地下部特性
塊茎は中ないし大いもが多く、皮色は淡紅色(肥大につれい淡くなります)で、一部にラゼット(ネット)があり、それは完熟につれて多くなってきます。
 形は卵形で、一次肉色は白ですが、維管束部に淡紅色の着色があることが多い。
 いも着きはやや密で、いも数はやや多く、粒揃いがよく、現品種中最も多収です。しかし澱粉価は「コナフブキ」より約5%ほど低い。
 澱粉粒子は比較的大きく、「農林1号」、「コナフブキ」より大きい。澱粉の白度はやや低く、糊化時の最高粘度も低いが、澱粉中の灰分は少なく優れています。

 肉質はやや粘で、貯蔵中に容易に還元糖を増していきますので、甘味が増えます。水煮しても維管束部に着色が残るので、食用にされることは少ないのですが、おでん、煮物にどに使えます。甘味の増えない秋のうちなら、ポテトチップに揚げれないこともありませんが、「エニワ」のようにやや固めになります。マッシュポテトでは、肉色のため白度が劣りますが、目が浅くコロッケには使うことも可能です。
中心空洞は「エニワ」についで多く、褐色心腐も乾燥地などで見られます。
 そうか病、粉状そうか病には弱い品種です。塊茎腐敗には比較的強い。環境適応性が大きく、管理が適正であれば多収をねらえる品種です。
 休眠期間は短い。
(4)栽培上の注意
施肥反応は「農林1号」より敏感で、多肥により枯凋が延び増収しますが、澱粉価は施肥に応じて低下します。
生育途中で疫病により枯凋しますと減収が大きいので、適期防除に努める必要があります。特に多肥のときは防除の徹底を必要とします。倒伏を少なくするには浴光催芽、早植えの実施なども必要です。
 採種栽培では、多肥による黄変期の遅延を避け、萌芽抑制のため貯蔵温度は低めに推移させることも必要です。

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左:白い「紅丸」の花。 右:白い花からの連想を外す紅色の塊茎
左:果実(中央のベリー)、右:帯広農業高校の校章(ジャガイモの葉)

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