味の良い暖地向き品種デジマ

(1)来 歴
 長崎県総合農林試で北海道の食味のよい系統「北海31号」を母、暖地で春秋とも多収の「ウンゼン」を父として交配・育成し、昭和46年に農林登録(ばれいしょ農林19号)された暖地二期作用品種です。品種名は江戸時代に外国への窓口であった育成地近くの長崎出島にちなんでつけられています。愛野町では「愛の小町」の名前で売っており、韓国では、「大地馬」とも呼ばれています。暖地の外、北海道の移出用採種栽培が網走地方などでも少し行われています。
(2)地上部特性
 熟期、茎長は「農林1号」並です。初期生育は「ニシユタカ」より遅い。茎数、分枝とも多いので、草型はやや開き、分枝の発生が多い。倒伏は少ないが、暖地で多肥にすぎると過繁茂になりやすい。小葉は中程度の大きさで淡緑色を呈しています。生育後期の土壌の乾燥を伴うときなどに、小葉が巻き、葉巻病に似た症状を示すことがあります。
 花色は白い。開花数は中程度で「ニシユタカ」より多い。自然結果は稀にみられることがあります。
 疫病抵抗性主導遺伝子R1をもち、二期作では発病の見られないことがあります。普通「ユキジロ」程度の罹病経過を示します。Yモザイク病にはややかかり難いが、乾腐病や青枯病には弱い。そうか病にはやや弱く、粉状そうか病抵抗性は中程度。ネグサレセンチュウには強い。
 Yウイルス普通系統には中程度のえそ症状を示すが、YウイルスT系統の症状は不明瞭で保毒。葉巻病の病徴は明瞭で、ウイルス病の圃場での感染率はやや低い。また春作では二次生長や裂開による変形が発生しやすい。
(3)地下部特性
 いも数、粒大で優れ、「農林1号」や、岡山県で作付けされている「セトユタカ」より多収ですが、澱粉価は北海道では15〜16%で、「農林1号」より劣ります。
塊茎の形は偏球ですが、暖地の秋作では球に近く、外観はきわめてよい。また、春作では目がふくらみ、味もやや劣ると言われています。
   目は浅く、皮色、肉色とも淡黄〜黄白ですが、肉色は「ニシユタカ」より濃い。煮くずれは「タチバナ」よりは多い微発生で「農林1号」程度、肉質は中です。食味は「タチバナ」、「ニシユタカ」より良いとされ、味噌汁の実や長崎の伝統料理『鯨じゃが』のような煮物に適します。
 ふく枝は「農林1号」よりやや長く、太い。春作ではいも着きが疎になりやすいが、秋作では短くなります。いもの着生位置はやや深い。
 いもの肥大始期は中程度だが、その後の肥大性が良い。熟期は晩生に属する。収量は春秋作とも多収で、特に秋作で優れています。澱粉価は12〜14%で、暖地品種の中では高い方です。いもの休眠期間は短く、暖地春作産で64日程度、秋作産で105日程度。つまり、休眠は短く、「タチバナ」程度で、「農林1号」より短く、萌芽の揃いはよい。

品種肉 色肉 質煮崩れ食 味
デジマ
タチバナ
農林1号
黄白

灰白
やや粉




やや否
表 調理特性
(4)栽培上の注意
腐敗は「農林1号」より多くなりやすいので、適期収穫に心がけるとよい。
多肥を避けるなど「ニシユタカ」に準じてよい。
生育後期に繁茂し、いも肥大がよくなる傾向にあります。
 春作では茎長が伸びて徒長しやすい傾向がありますが、秋作では落ち着いた生育をします。
インターネットジャガイモ博物館

左:「デジマ」の花。 右:「デジマ」の塊茎。

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