ポテトエッセイ第48話

フレンチフライ、フライドポテト=欧米で人気【ジャガイモ博物館】
 ポテトフライは海老フライ、牡蠣フライなどと同様の和製英語なので、アメリカ英語のフレンチフライ、フランス語のポム・フリッツなどと呼ぶのがよいいでしょう。日本では、アメリカ英語のフレンチフライと呼ぶことが多いようです。この時のフレンチは、一説によると元来さやいんげんをフランス風に切ることをさし、その形に似せた拍子木形揚げポテトをフレンチフライ(小文字で始まるfrench fries)と呼んだそうです。我が国では英語表現のフライドポテトも使われますが、こう呼ぶと揚げたジャガイモつまり、シューストリングやハッシュドブラウンを含むことになり、英語圏のレストランで使うと予期せぬものがでてくるでしょう。

 マックのフレンチフライのようなものを他の国ではどう呼ぶか。
アメリカ英語でフレンチフライズ(米:French fries)
ベルギーではフリッツ(ベ:Frietjes、La Frite)【ブルッヘ(ブルージュ)にはフリッツ博物館がある】
イギリス英語でチップス(英:chips)または、フレンチフライドポテイトウズ(米:French-fried potatoes)
フランスなどではポム・(ド・テール・)フリット(仏:pommes [de terre] frites)あるいは単にフリット (仏:frites)と呼ばれる。
 フレンチフライ(French fried potato,French fries)は、その名からフランスが元祖のように感じますが、実はベルギー(Belgium)で始まったとベルギー人は主張しています。一説ではベルギーでは古くから小魚のフライが大人気。ところが17世紀に小魚の不漁が続き、ジャガイモを細切りにして代用品にするようになったと言うもの。もうひとつは、1876年生まれのロドルフ・ド・ワルサージュ(Rodolphe de Warsage)と言う紳士がベルギー東部のリエージュ(Liege)の小さな店で揚げたてのFrench fried potatoを買って、食べながら家に帰ったことを書いていたのです。当時はまだ家庭では揚げていなく、買って食べる習わしであった。この人気がフランス北部地方のリール(Lille)などに広がり、欧米へと広がった。ブルッセルではケチャップやマヨネ−ズをかけ、円錐型に丸めた紙に入れて売っています。これにソーセイジを買って、石段などに腰掛け手軽な昼食にしたりします。
いっぽう、ワルサージュの生まれる20年前の1856年ウオーレンは著書『若い婦人のための料理書Cookery Work for All Maids』に、細長くカットしたジャガイモの揚げものとして「フレンチフライドポテト」のレシピを載せていた。この本は1858年にアメリカで出版されいてた。1918年ころからは「フレンチフライ」は「フライ」と縮められこの言葉はアメリカやカナダに広まった。 なぜ「フレンチ」が付いているのか、これはフレンチフライを初めて口にしたアメリカ人が、フランス語圏のベルギー人が作るのを見てフランス料理だとカン違いしたせいなのだとか。さらに、フランスの新聞『フィガロ』電子版が2018年8月1日付で、19世紀初頭のパリで登場したと唱える研究家のインタビューを掲載し、論争になっている。

 今、フレンチフライは、フランス、アメリカ、イギリスなどの欧米で好まれています。イギリスではこれをチップス(Chips)と呼び、魚と組合せた『フイッシュ・アンド(又はウィズ)・チップス』は人気があります。また、フランスでは、アンリ四世がこれを好んだので、その騎馬像のあるセ−ヌ川にかかるポン・ヌフ橋にちなみポム・フリットと呼んでいます。フランスではビフテキにフリットが常食です。トマトかキュウリの輪切りあるいはニンジンの千切りなどにドレッシングをかけた前菜(サラダ)に200g弱の肉を焼き、塩コショウしてカラシで食べ、揚げたジャガイモを添えて食べるのがごく普通で、それにチーズがつくことも多いそうです。アメリカでもポム・フリッツ(Pommes Frites)と呼ばれステーキに着きます。
【左:煮上がりの早い『伯爵』】  フレンチフライは冷凍食品の代表とも言えましょう。アメリカでは、加工用ジャガイモの過半数を超え、外食の占める割合が大きいものです。主婦はこれらの冷凍食品をスーパーから買ってきます。
 アメリカのフレンチフライは、パリに遊学し、大のスパゲッティ好きで、アメリカにフィンガ・ボ−ルを持ちこんだことなどで知られる第3代大統領トーマス・ジェファソンがホワイトハウスでだしたのが始まりですが、近代的冷凍フレンチフライは、アイダホのポテトキングことJ・R・ジャック・シンプロットが元祖でしょう。
 アメリカでのフレンチフライの製造は、良質のジャガイモが生産されるアイダホ、ワシントン、オレゴンの3州で主に行われています。そして主に中部や南東部の人びとによって消費されています。肉類との組合せが最も適し、中年で比較的所得の高い層に好まれており、昔ヨーロッパで言われたことがある『貧者のパン』と言うイメージはありません。
 アメリカのフレンチフライに使うジャガイモは、形がよく大きなものが好まれます。コップに立てつまめるぐ らい長く、目が浅く、肉が黒く変色しにくいのがよいとされています。これに適する品種には、「ムサマル」、「ホッカイコガネ」などがあります。良いものをつくるには、比重が1.08(でん粉価13.9%)以上あり、甘味の元の還元糖含有量が0.25%以下でなければなりません。
 フレンチフライドポテトは、太さの揃ったものを低温と高温で2度揚げにすることが多いですが、薄くて小さ いものは高温ですばやく1度で揚げてもかまいません。概して細めのものがカリカリに揚がります。太さを揃えるには、市販の道具を使うと楽です。皮をむいたジャガイモの上からギュッと押すと1cm角の拍子木型のものが得られます。太くて短いのもありますが、品種を選べば細くて長く、中折れしないものが選べます。
 形は拍子木(ポンヌフ)のほか、千切り(パイユ)、球(パリジェンヌ)、らせん切り(コポー)、皮つきのナチュラルカット、船型のポテトシェル、皮そのもののポテトスキンなどがあります(ポン・ヌフの項も参照)。

 わが国でのフレンチフライの製造は、昭和41年森下仁丹食品(本社・大阪市)が、きれいな水で知られる羊蹄山麓の京極町で始めましたが、以後消費は伸びつつあります。原料は円高のため安く外国から入り、国産を圧迫しつつあります。外食で食べることが多くなりました。共稼ぎの多い団地族、ヤング層などに人気があります。加工に手間かからず、添加物がなく、貯蔵がきく、アイダホポテト攻勢によつて価格が比較的安いなどの理由で、一般用、学校給食、外食産業などの業務用を中心に伸びています。
 近年アメリカ政府は、TEA(特定輸出助成計画)により、農業生産者や農業団体が海外市場で、自分たちの農産物の宣伝や、販売促進を行う場合、資金の援助を行っています。日本のテレビ、新聞、雑誌を使って、牛肉、カルフォルニア・ウォルナッツ(くるみ)アーモンド、アボガド、ワイン、レーズンなどの宣伝をし、猛烈な売り込み作戦を展開しつつあります。アメリカ・ポテト協会でも2億円をかけて全国紙夕刊の広告欄全面を買い切ったりして、大宣伝をやったことがあります。さらに、円高の進行によって国産より安いフレンチフライが入り、スーパーをのぞくと、500gの皮付ナチュラルカットが、230円で売られているなど、北海道の加工原料生産農家に打撃を与えつつあります。冷凍フライドポテトの国内需要量は1982年に8万トンほどでしたが、外食産業の成長とともに増加し、1988年147,000tと増加してきました。このうち国内産物は42,800tから約2万t減り、逆に輸入物が37,600tから127,400tに急増しています。(平成8年の冷凍ジャガイモの輸入量は227,656tと増えています。平成25(2013)年)は100万tに届こうとしています

 冷凍フレンチフライのつくりかたは、まずスチーム処理、グラインダー処理などの方法で皮をはぎ、芽を除いた後、1cm角の柱状(波状のクリンクルカットもあります)に切断し、選別したうえ、1度油で揚げた後、冷凍して出荷します。
 油の揚げ方に強弱2種あって、それによって解凍の仕方が違います。強く揚げたものは冷凍品の約3倍の重さの油を約170℃まで加熱してから入れ、2,3分かけて揚げるか、ガスオ−プンで加熱します。軽く揚げたものは135度くらいに熱してフレンチフライを入れ、130℃近くに下がってから約6分、ついで油温を4分かけて140℃付近にし、さらに約170℃に上げて表面が黄金色になるまで入れて揚げるとよくできます。
 好きなものを好きなだけ食べたり飲んだりするのが最高の幸せ、と思い、空腹になると腹がたってくる人もいましょう。しかし、フライドポテトは油で揚げているので、カロリ−は低くありません。スマートになりたい人には粉ふきのほうがよいかも知れません。
フレンチフライに似たものにシューストリングとかハッシュ・ブラウン・ポテトがあります。後者はアメリカのハイウエーのレストランやセルフサービスの食堂などの朝食でお目にかかることが多いものです。ソーセージ、ベーコン、卵などと一緒に出てきます。これの上手下手でお客の数が違ってくるそうです。ゆでたジャガイモはできるだけ細かくきざまれ、カリッとした狐色の焦げめをつけてバターでいためています。



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