俳句のルールとして定型があり、季語を入れることがあるらしい。ジャガイモのようなものは花の咲く時期なのか収穫時期なのか、新なのか旬ことヒネの時期なのかわかりません。ジャガイモの収穫は、1月九州南部から始まり、長崎県の新ジャガは5月ころ食卓に上り、収穫前線は日本列島を次第に北上し、北海道では7月から9月が新ジャガの季節となります。完熟したものはその後保存され翌年の初夏まで美味しい。これらを考えると季語はいつにしたらよいか迷ってしまいます。
仕方がないので、季語辞典のようなものがないか調べてみました。
ウィクショナリーによりますと、 「馬鈴薯」と書いて「じゃがいも」と読む慣習が広く浸透しているが、本来、「ばれいしょ」と しか読まない。なお、俳諧・俳句においては「馬鈴薯(ばれいしょ)」と「じやがいも」は別の 季語であり、「馬鈴薯(じゃがいも)」という読みは用いられるが、正しくは通用しない。」
そうです。
 馬鈴薯の花は初夏、馬鈴薯自体は初秋の季語となるようです。
また、凡茶さんによりますと、単にじゃがいもは秋の季語ですが、新じゃが、新馬鈴薯、新ジャガイモは(初)夏の季語に分類されています。
また、別のHPでは、芋植う、ジャガイモ植う となると春の人事としてが載っていました。
蛇足だが、ジャガイモは万葉集に記載のない外来植物。芋の花はサトイモの花であり、晩夏に使われ、薯粥(いもがゆ)は自然薯 のことで秋の季語になり、 藷粥 はサツマイモで冬の季語になっていることを知りました。

ジャガイモ 俳句 集

***俳句を拾ってみました***

 

5月17日の誕生日の花は、じゃがいもです。
じゃがいもの花のさかりのゆうまぐれ   日野草城
じゃがいもの花の三角四角かな      波多野爽波
ジャガいもの花の主張は無視されて    石川勝
じゃがいもの花に朝の蚊沈みゆく     阿部みどり女
じゃがたらの花咲く島へ退院す      中井ユキ子
ジャガいもの花連休はもう終わり     藤下直国
ジャガいもの花はやさしい雨に逢う    坪田深雪
ジャガイモの花は徒花種知らず       よしもと
じゃがいもに竹ぐしの跡母心       三谷輝枝
じゃがいもの花に言魂ねむりけり     佐藤鬼房
ジャガいもも僕もころがる 日曜日    石川勝
じゃがいもや十勝野覆う花盛り       和泉清和
じゃがたらの真面目な花の咲き揃ふ    仙道房志
じゃがいもの花咲く城下町に来し     稲田眸子
ジャガ芋の芽はざわざわと孤独だね    千島鉄男
ジャガ芋の芽ほどの毒はあってよし    小宮美奈子
じやがたらの花の北見路鎖塚       三浦光芳
じやがいもの腋芽とりつゝ暮れにけり 飴山實 辛酉小雪 じやがいもは男爵末枯収穫季 山口青邨 薯の花地の果てまでも大十勝        石原光男
蝦夷富士やじゃがいもの花果てしなく    山口悦子
病みぬればじやがたらの花もいとほしく   松藤夏山
ジャガいもを掘る楽しさも山の幸     和田智恵
じゃがいもころころホラ吹き男爵もいる  普川 洋
豚(とん)汁のじゃがいも溶けて母の味   中村正也
泣きべそや ジャガイモ植うてまんまる笑顔 きおき
春の夜ジャガイモ小僧が現れた      メークイン畑
田の母よぼくはじゃがいもを煮ています  清水哲男
北の地にじゃがいもの花整列す      奥野品子
楚々としてじゃがいもの花健気なり    晴好雨独
笑ってるジャガイモ畑の花そよぎ     木こり屋洋ちゃん
去りがたしじゃがいもの花盛りなり 蜂太郎日記より
姉妹夕餉のじゃが芋煮ゆるとき      川崎展宏
冬越すじやがいも遊蕩の父は死に   佐藤鬼房
臥て啖らふ妻の作りしじやがたらいも 日野草城

じゃがたらの真面目な花の咲揃ふ     仙道房志
じゃがたらの花の北見路鎖塚       三浦光芳
じゃがたらの花咲く島へ退院す      中井ユキ子
じゃがたらの真面目な花の咲き揃ふ    仙道房志
病みぬればじやがたらの花もいとほしく   松藤夏山
みっしょんの丘じゃがたらの咲く日かな   中村汀女
弁当の 主役はいつも つぶしジャガ   武沢恭子
肉ジャガに 汁よくしみる 母の愛    大曾根正博
居酒屋で食べた 肉じゃが 母の味    片桐卓
ジャガなしの コロッケ作り 母の技   高野弘子
肉じゃがは なんと言っても 母の味   加納富弥
肉じゃがは 料理下手の 免罪符     鈴木恭子
大皿の肉じゃが皆で奪い合い       八原純子

新じゃがをほかほかと食ひ今日を謝す   大野林火
新じやがや野風の先の田舎富士      凡茶
新ジャガの笑くぼ磨いて出荷待ち     田中弘子
新じゃがのほのかな香りに母の味     福島正純
新じゃがの土を乾す風の道         むく
新じゃがのゑくぼ噴井(ふけゐ)に来て磨く  三鬼
注 ふけい=水の絶えず噴き出している井戸、ふきい、ふきいど
新じやがいもころころ転び名は男爵  村山故郷
新じやがいも顔まるまると煮られけり 村山故郷
さぐり掘り新ジャガ指に快く       荻野綺映
待ちきれぬ旬の新じゃが玉の汗      たんと
土の香を添えて新ジャガうれしそう    土師芳子
あつあつの新ジャガ口で逃げまわり    片田加代子
さぐり掘り新ジャガ指に快く       荻野綺映
病みぬればじやがたらの花もいとほしく  松藤夏山
じゃがたらの花咲く島へ退院す     中井ユキ子
じゃがたらの花の北見路鎖塚       三浦光芳
豚(とん)汁のじゃがいも溶けて母の味   中村正也
俎板の上でジャガイモ笑窪見せ      関根信八
じゃがいもうう天保の大飢饉 お日様

馬鈴薯を夕蝉とほく掘りいそぐ      水原秋櫻子
馬鈴薯の花に大小の雲垂れぬ       加藤楸邨
馬鈴薯の花咲き団扇(うちは)売来る   塩谷鵜平
馬鈴薯の花に羊蹄晴れわたる       安西須枝子
馬鈴薯の花に触れれば樺太が       黒田真悦(砂川)
馬鈴薯の花遺りし者に染みやすく     大庭 青城
馬鈴薯の花小函の様な汽車が行く     杉本 松枝
馬鈴薯の花ひとつづつ無口なり      萩野 幸雄
馬鈴薯の花くろがねのごと黒き岳     米澤 草水
馬鈴薯の花の終わりし畑広し       kou
馬鈴薯の花の大地や北の果て       清水恵山
馬鈴薯の花の日数の旅了る        石田波郷
馬鈴薯の花流線の丘となり        山中英美
馬鈴薯の花や雨降る日本海        橋本幹夫
馬鈴薯の花慎ましき夜明けかな      有馬たく
馬鈴薯に花咲く青い空が好き    瀧春樹(『花嵐』 2002)
馬鈴薯の笑窪くり抜く夕厨(くりや)    小野寺敏子
馬鈴薯のゑくぼ大きな男爵か       千葉 仁
馬鈴薯の花アンデスの布の色       照れまん
馬鈴薯のアンデス恋いて花ざかり    宇佐見美保(音威子府) 
馬鈴薯の山に憩へる一家かな       柴田かつ枝(札幌)
馬鈴薯の芽の絡み合い出てゐたる     茨木和生
馬鈴薯の芽のからまりし箱の中      埋田あい
馬鈴薯の芽の箱蓋を押し上げる      茨木和生
馬鈴薯植う丘の幾重を畑として      墓田伊左雄
馬鈴薯掘れば昃りやすし地平線      矢口 隆子
馬鈴薯がころころ秋の子守り唄      中野いわお
馬鈴薯咲くや赤彦旧居へあと二町     大野林火
馬鈴薯植う ポテトチップを 食べながら 抹香鯨
馬鈴薯植うよ汗と一緒に         四時間代
馬鈴薯植う我が家の鉢にメダカみる    高橋龍則
馬鈴薯の花に触れれば樺太が       黒田真悦
馬鈴薯の花の日数の旅了る       石田波郷
馬鈴薯咲くや赤彦旧居へあと二町    大野林火
馬鈴薯植う美瑛の丘をめぐる畝     福良ちどり
馬鈴薯植うあかねにひとみさやかかな   まどん
馬鈴薯植うドルシールーシーシェリーかな まどん
馬鈴薯植う悪魔扱い克服し       加和 志眞
馬鈴薯の冬芽よ被弾死守の家     佐藤鬼房
馬鈴薯の初夏や新婦の眼鏡光り    下村槐太 天涯
馬鈴薯畑蝶いまだ望楼そちこちに   山口青邨
馬鈴薯の芽のむらさきに雨がふる   山口青邨
  馬鈴薯の芽の濃きを見つまだめとらず  松崎鉄之介
馬鈴薯を掘るたび我は何處へ行く   永田耕衣
馬鈴薯を植う汝が生れし日の如く   石田波郷
馬鈴薯掘り両墓あるを疑はず     松崎鉄之介

馬鈴薯植う髪飾るアントワネット    28ひろきち
アンデスの 馬鈴薯植う 日ノ本で   オイラー
馬鈴薯の花アンデスの布の色     照れまん
馬鈴薯のアンデス恋いて花ざかり    宇佐見美保
じゃがいもの植ゑるインカのめざめかな 秋桜
馬鈴薯植うアホママ手向く奇形芋    摂津浪人
●アホママ(Axomamma)は馬鈴薯の女神。最も形が歪な芋を選び、大地の女神にお供えすることで、豊穣を願う習慣があるそうです。これを怠ると、母なる大地の祟りである地震が起こるとか

馬鈴薯の顔で馬鈴薯堀り*通す        永田耕衣 *原文のまま
『俳句歳時記 第四版 秋』(2007・角川学芸出版)所載。(今井肖子)より

新馬鈴薯小さきは小さく煮ころばし    大野雑草子
悴む手馬鈴薯植え空見上ぐ     千波
植う馬鈴薯喰ひ尽くして眠る子よ  三重丸
原原種馬鈴薯植うる試験管     石川焦点
汗ながし馬鈴薯植うや空の青    宮写楽
丘のぼる馬鈴薯の花空へ果つ    太平茂雅
愛の終わり馬鈴薯の芽がのびる   長谷川博子
腰おれて 馬鈴薯植う祖父神々し   如月
飛燕鳴けり馬鈴薯の花咲く丘に   川端茅舎
かなしくて馬鈴薯を掘りさざめくも 石田波郷
待ちわびて馬鈴薯植う子らの笑み   獺祭
お待ち遠さまと馬鈴薯花を見せ   藤井平八郎
万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり  奥坂まや
マダムの外寝馬鈴薯個々にころがり 赤尾兜子
練馬区のトマト馬鈴薯夏青し    嶋田洋一
自己流の短き畝や馬鈴薯植う    磯城
天保の飢饉救いし馬鈴薯植う    タマモクロス
寝る子は育つそつと馬鈴薯を植う  江戸人
芥火(あくたび)や馬鈴薯咲けりどんよらと 石塚 友二
切り口にお化粧塗って馬鈴薯植う  月光庵
意外にもナス科ナス属馬鈴薯植う  矢野リンド
なすの科の地下茎育つ馬鈴薯植う  加和 志眞
段畑や 猫のひたいに馬鈴薯植う  ゆきこ
大収穫 今年も夢見 馬鈴薯植う  望空
飛燕(ひえん)鳴けり馬鈴薯の花咲く丘に 川端茅舎
  麓まで蝦夷富士に借る馬鈴薯の花     木村一雄
馬鈴薯畑蝶いまだ望楼そちこちに 山口青邨
かなしくて馬鈴薯を掘りさざめくも 石田波郷
ぶつぎりの馬鈴薯匂ふスキー小屋 林翔 和紙
マダムの外寝馬鈴薯個々にころがり 赤尾兜子 蛇
俺が食う馬鈴薯映して友の眼鏡 金子兜太
六月野子のために馬鈴薯買ひにゆく 大野林火 早桃 太白集
卯の花腐し馬鈴薯籠に芽を吹きて 鈴木真砂女 夕螢
土間打ちてよろこぶ俵出し馬鈴薯は 伊丹三樹彦
地を躍り出る馬鈴薯よ自殺せず  永田耕衣
女の鼾高し馬鈴薯植えし夜は   西東三鬼
幸福の沓首にかけ馬鈴薯を掘る  山口青邨
我が馬鈴薯実のれ燕雀たのしげなり 中村草田男
春暑く馬鈴薯の芯も摘み了へし  村山故郷
未来語る馬鈴薯菓子の紅の上   古沢太穂 三十代
母に随ひ風立たぬ日を馬鈴薯まきに 松崎鉄之介
粘土割り出し馬鈴薯の芽や日曜日  西東三鬼
累々と馬鈴薯を掘る墓地つづき  右城暮石 句集外 昭和四十六年
肉・葱・馬鈴薯ごつた煮にして走り梅雨 能村登四郎
たしかな凸凹泥刷きて冬の馬鈴薯なり 能村登四郎
身にまつはる細雨北地に馬鈴薯掘る 松崎鉄之介
雷雨あと馬鈴薯露呈臍も二三 香西照雄 素心

菅原 進 さん作
無農薬といふ虫喰いの薯もらう    菅原 進
薯の花 爆音ひそと夜へつづく       針谷定史
薯の花 雲と交はるところまで      横山瑞枝
薯の花 地の果てまでも 大十勝     石原光夫(室蘭)
雪を見て 暦を見ては 種芋を買い    上野陽泉
種いもは 袋の中で 春を告げ      西村政夫
種芋が去年の嘘をしゃべりだす      出原敬一
種薯のこのあえかなる芽を信じ      山口青邨(せいそん)
朝空の雫敷きつめ薯の花         中谷真風
観覧車回る地の果て薯の花        松尾ふみ
真狩の空につづける薯の花        上田芳江
食の危機強い味方はお芋さま       小林 晃(函館市)
ばば作り 母なき孫に じじ味見       柴田絢三
隠し味 種あかされて 真似出来ず      倉澤美津子
隠し味 舌で覚えた 母の味         小林義雄
大鍋で 一気に煮込む 得意技        山本加代子
目分量 母のようには いきません      松本ゆみ
頼んだら 次の日にくる 母の味       山本芳枝
弁当の 主役はいつも つぶしジャガ     武沢恭子
甘やかな秋はガレット焼きながな       有希
リバイバル出番近づく芋団子       西山幸子(江別市)
(北海道で「芋」と言えば「サトイモ」ではなく、ジャガイモを指す)
開道後 百年という 薯の味         梶川雄次郎

 【蛇足:川柳紹介】
じゃがいもが土にころがり陽を浴びた      ピタヤ
ジャガ芋の芽ほどの毒はあってよし       小宮美奈子
ジャガいもの花の 主張は 無視されて     石川勝
ジャガいもの花 連休は もう終わり      藤下直国
ジャガいもの花は やさしい雨に逢う      坪田深雪
ジャガいもを掘る 楽しさも 山の幸      和田智恵
ジャガいもも 僕も ころがる 日曜日     石川勝
俎板の上で ジャガイモ 笑窪 見せ      関根信八
      俎板=まな板  笑窪=えくぼ
馬鈴薯がころころ秋の子守り唄         中野 いわお
お待ち遠さまと 馬鈴薯 花を見せ       藤井平八郎
愛の終わり馬鈴薯の芽がのびる         長谷川 博子
戦後史を語ればボロ屋いもカボチャ       石黒 石雄:2015年8月
肉じゃがとSTAP同じ割烹着(かっぽうぎ)    天野 道子:2014年
開道後 百年という 薯の味          梶川雄次郎
段畑は 風の踊り場 芋を植う アカツカ
開道後百年という薯の味            梶川 雄次郎
春光を恋して薯の芽が伸びる       三浦 強一
お日様 大地咲く 命の泉 薯植ゑる        かおる
新ジャガの 笑くぼ 磨いて 出荷待ち     田中弘子
土の香を添えて 新ジャガ うれしそう     土師芳子
あつあつの 新ジャガ 口で 逃げまわり    片田加代子
さぐり掘り 新ジャガ 指に 快く       荻野綺映

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