ジャガイモ品種「トヨシロ」(TOYOSHIRO)

(1)来 歴
 昭和35年に北海道農試で「北海19号」(Prof. Wohltman × Pepo)に「エニワ」を交配し、昭和51年奨励品種に決まりました。北海道外でもポテトチップス用として栽培されています。品種名は、豊産で油加工製品の色のよいことを示しています。
 地方番号は「北海48号」、登録番号は「農林21号」です。十勝、上川、網走地方などで栽培されています。
(2)地上部特性
 枯凋期は「ワセシロ」より遅く、「農林1号」より約20日早く、「メークイン」程度の中の早です。
茎長は「農林1号」よりやや低く、茎は緑色でやや細い。茎翼は「ワセシロ」と同じく直です。分枝は少ないが、草型はやや開いている。茎数は中。小葉の大きさは中で葉幅はやや狭く、淡緑色で、小葉は疎に着いています。萌芽時の葉色は「ワセシロ」同様紫を帯びています。
 花は白色で、大きさは中、数は多いのですが、花粉稔性は低く、自然結果はほとんど見られません。
 萌芽および初期生育は「メークイン」より遅い。萌芽時の葉色は濃緑で、生育が進と緑となります。
 倒伏は少ない。疫病抵抗性遺伝子R1を保有していますので、初発生は「ワセシロ」なみですが、感染後の発病経過は「農林1号」より早くなります。
  (3)地下部特性
 いもの形は偏卵ないし偏球で、偏平度は強い。粒は比較的大きい。個重型・個数型の別では中間型に属します。
 目は浅く、目数は中です。表皮は「ムサマル」同様黄褐色で、弱いネット(粗)があります。いもの粒揃いは良く、いもの分布は中、着生位置はやや浅い。
 褐色心腐は少ないほうです。二次生長の発生は「エニワ」より少ないが、中心空洞はマルチ栽培などで、大いもに発生しやすい。でん粉価の上昇は、「男爵薯」と「農林1号」の中間ぐらいに推移します。肉色は「男爵薯」同様の白黄です。
 休眠は「男爵薯」より長い。
 乾腐病、黒あざ病には「農林1号」よりやや弱く、「男爵薯」程度です。粉状そうか病には「農林1号」より強く、「ワセシロ」程度の比較的強で、疫病菌による塊茎腐敗は少ない。ジャガイモシストセンチュウには、「ホッカイコガネ」同様に弱い。
 軟腐病抵抗性は「メークイン」程度の弱いほうであり、「農林1号」並かやや弱い。
 葉巻病の発生は一般品種並で、病徴は明瞭です。ウイルス病はYウイルス病(無病徴、えそ、れん葉)に弱く、ついでSウイルス病もみられ、Xウイルス病の発生はほとんど見られない。
(4)調理加工特性
水煮による肉質はやや粉で、煮くずれは中位、貯蔵後においても調理後黒変は少ない。塊茎の還元糖含有率は貯蔵中比較的低く推移し、「ワセシロ」より長期の貯蔵に耐えることができます。また、腐敗が少なく貯蔵しやすい。長期貯蔵後の加温処理(リコンディショニング)効果は高いが、「農林1号」に比べると劣ります。
 風味は「男爵薯」に比べ劣ると評価されることが多いのでが、目が浅く、ポテトチップス、フレンチフライ、スライスサラダなどの加工用のほか各種の用途に使うことができます。粉がふく割には煮くずれは少ないほうです。
 剥皮褐変は「アチランチック」より少なく、発生は微です。
(5)栽培上の注意
 栽培管理は「農林1号」に準じておこなってよい。
 目は浅いが催芽中の芽の脱落は少ないほうです。
緑化の発生が多いので、培土は遅れないように充分行うようにします。
乾燥地や、やせ地では茎葉の伸びが悪く、枯凋が早まりやや小さくなる傾向にあります。
肥沃地などでは多肥にしますと、大いもが増え、特大いもに中心空洞を生じるため、施肥を控えやや密植にするなどの配慮が必要です。
 褐色心腐はみられません。肥料反応性は高く、多肥によって増収しやすい。中心空洞は、多肥疎植などで塊茎が急速に肥大するときにみられやすい。しかし、培土の土は充分寄せて欠株や株間の不揃いを少なくすることにより少なくできます。
初期生育が悪いので、早掘りを目的とする場合は浴光催芽が有効です。
加工用栽培の株間は35p程度で、「男爵薯」と「ホッカイコガネ」の中間程度がいい。


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左:「トヨシロ」の色い花、数中で、果実はならない。
右:「トヨシロ」の塊茎。肉は白。

「トヨシロ」は国内チップス原料の主力として使われており、同社の『ジャガリコ』の原料として使われております。
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