ジャガイモに悪さする数ある病害虫のなかで、その根絶が困難なもののひとつにジャガイモシストセンチュウ(Golden Nematode)があります。これがペルーから輸入の海鳥の糞ことペルグアノと共にわが国に入ったらしく、1972年羊蹄山のふもとで発生確認以来、北海道の東の端に近い地域、函館近郊、長崎県などでも認められ、その汚染拡大が警戒されています。
最初の発見以来、その拡大の防止と畑の線虫密度を下げる努力、たとえば、土の移動防止をする、麦類などを入れた輪作をする、ナス科作物の植え付けを避ける、殺線虫剤を使うなどの対策、が取られました。直ちに抵抗性品種の開発に着手するとともに、新品種ができるまでの間、海外からの品種導入が行われ、それらを親とした交配を行うとともに、とりあえず北海道の風土に合った旧東ドイツ産の『ツニカ(Tunika)』が選ばれました。
『ツニカ』は、芋の肥大が遅く、『紅丸』に近い熟期をもち、でん粉価は2%ほど高いものの収量は2割減で、ヨーロッパに比べ、春遅く秋の早い北海道ではやや小粒になってしまい、表面がザラザラの欠点もあった。しかし、畑の中の線虫密度を大幅に下げてくれ、そして肉の色が黄色という特徴があり、味のいいものでした。
ところで、この耳慣れない名前は、古代ローマ時代に人びとが着用した半そでまたはそで無しの上着に由来しています。日本でも「チュニック」と言って、スカートの上までかぶさった上着がありますが、これも同じ語源です。当時はこのトウニカを男性も着用したが、袖のある白い毛織りという単純なものでした。早い話、今のシュミーズやブラウスの元祖にあたるものです。
今日の英国で、チュニックと言えば軍人や警官などの上着をさしています。
東ドイツのこの品種に、何故この名をつけたのか不明ですが、『ツニカ』の花色が白いためにつけたものと想像しています。この品種の役割は終えましたが、子供としては、肉が黄色の『キタアカリ』(黄金男爵、ゴールデンポテト、くりジャガ)や『ムサマル』が知られています。