食べ続けるほどおいしさのわかる

ジャガイモ品種「ワセシロ」(WASESHIRO)


長 所
  • 北海道の新じゃがは6月下旬の『ワセシロ』から始まります
  • 肥大が早く、マルチ・紙筒移植栽培などと併用により、ほとんど農薬を使わないで栽培できます。
    <今一番安心・安全な品種>
  • 大粒でも「男爵薯」、「キタアカリ」に見られる中心空洞の発生がほとんどありません
  • ホクホク感高く、太陽の恵みを実感できます
留意点
  • 新じゃが揚げに好適。ポテトチップスにできるほどホクホクし、煮上がりが早い。越冬前のものは、煮すぎると煮くずれが多いので、水から煮たり、沸騰したら火力を下げる。皮つきを蒸かす手もある
  • 低温下などで長期間おいていると、次第に粘質を増し、甘みが増えてきます。
  • 用途:皮つきのベークドポテト(電子レンジ)、つぶしサラダ、ポテトチップスなどの揚げ物、コロッケ、芋もち。しかし、煮物には向きません。

(1)来 歴
北海道立根釧農試(←写真。馬鈴しょ科、中標津町。科は平成10年北見農試へ移転)で、昭和37年「根系7号」を母、「北海39号」(「オオジロ」×「96−56」)を父として交配し、昭和49年に北海道の優良品種に決定されたものです。肥大が速く、大きくなっても中心空洞が発生しにくいことから、今では千葉県、茨城県など北海道以外での栽培が多くなりました。野生種デミッサムの遺伝子のほか、「男爵薯」の遺伝子が25%入っています。地方番号は「根育11号」、農林登録番号は「農林20号」です。「新じゃが」、「伯爵」(中標津町)、「ネオ男爵」(端野町)、「キング伯爵」、「白爵」、「肌美人」(伊達市)などの名でも売られています。
(2)地上部特性
 茎長は、「男爵薯」より高いですが、低いほうに属します。茎数や分枝は少ない。草型は「男爵薯」よりやや開き、茎はやや太いが、倒伏は生育後期にやや多くなります。
 葉色は萌芽時には濃緑ですが、生育が進むにつれて淡くなります。
 花色は紫で、これも日数の経過とともに淡くなります。花梗は「メークイン」より短く、花の数は少ない。節間の着色は淡赤紫で、「男爵薯」よりやや濃い。茎翼はやや波状です。
 萌芽後の生育は「男爵薯」より良好です。茎葉の枯凋は、疫病に弱い「男爵薯」に比べると2,3日遅れることが多いのですが、いもの肥大では「とうや」同様に早い早生種です。
 疫病抵抗性遺伝子R1を持っていますので、疫病の初発生は「男爵薯」より数日遅れることが多い。半身萎凋病のでやすい畑をさける。
 Yウイルス病の発生は少ないですが、罹病しますとえそ症状を示します。Xウイルス病では軽いえそ症状をみせることが多い。軟腐病には「男爵薯」並に弱い。夏疫病、菌核病には並ないし弱い。貯蔵中に発生する乾腐病に弱い。これにいくつかの分化型がありが、 Fusarium solani coeruleum では特に注意が必要です。
(3)地下部特性
塊茎の形は偏球〜偏で、目の深さは中で、ともに「男爵薯」と「農林1号」の中間程度です。皮色は、分類上両品種と同じ白に属しますが、両品種より白く、既存品種の中では最も白いほうで、肌がよい。
 塊茎の着生時期は、ほぼ「男爵薯」並みです。しかし、その後の肥大経過は良好で、早生としてはごく多収です。いも数は少なく、粒は大きくなり、Lサイズが多く、くずの少ない品種です。いもの着生位置は「農林1号」より浅く、「男爵薯」並です。
澱粉価は「男爵薯」より約1%高い。いもの分布は「男爵薯」より疎で、ふく枝の離れはよいに属します。
中心空洞の発生は、2Lでもほとんど発生しません。裂開も少なく、こぶ型の二次生長の発生は中くらいで、黄変期の前に干ばつにあうと出やすい。また、土中で新しい塊茎から萌芽する型の二次生長はごく少ない。
 休眠は「男爵薯」より短く、「農林1号」より長い。
 早掘りでは、常に「男爵薯」より増収します。早掘りを行うにはやや密植により増収しますが、施肥量や栽植密度の影響は受けにくいほうです。
疫病菌による塊茎腐敗の発生は一般品種並です。粉状そうか病には中ないしやや弱い。そうか病には「ユキジロ」より弱い。また、北海道ではほとんど発生が見られない青枯病やミナミネグサレセンチュウには弱い。
早期肥大性があり、また、黄変期以降の早掘りにおいて「男爵薯」より甘さ(グルコース)が劣るためチップカラーがよくなり、歯ざわりなども優るため、端境期をねらった生食・加工用に活用されています。<.BR>また、早く新ジャガを収穫できるので、関東以北の家庭菜園に向きます。
(4)調理加工特性
 食味は「キタアカリ」と共に「男爵薯」ファミリーに属し、舌ざわりがよく、やや粉質〜粉質です。しかし、くせはやや少なく、長く貯蔵するとしだいに粘質を増していきます。肉色も低温下で貯蔵しますとやや黄色みを帯びるようになり、甘みも増加し粉質からやや粉質に変わります。このため、ポテトチップス工場の操業前期に主として使われ、カルビーなどの『新ジャガ でーす』などと呼ばれているのはほとんどこの品種が使われています。
 水煮時の煮上がり時間は「男爵薯」より短いので、業務上は有利になりますが、それぞれの品種に合った時間を選び、煮過ぎないようにします。早掘りしたものは、甘味(ブドウ糖)が少ないので、ポテトチップスやフレンチフライに適します。コロッケよりはサラダに人気があります。
 剥皮後放置した場合の酵素的褐変(剥皮褐変)や、水煮後のいもの基部などにみられる黒変(水煮黒変)は「男爵薯」より少ない。いもに光を数日あててしまうと容易に表面が緑化しやすい(葉緑素が増えやすい)が、ポテトグリコアルカロイドは増えにくい品種です。
(5)栽培上の注意
 乾腐病にかかりやすいので、過去に発生のなかった排水のよい圃場を選んで作付けし、周皮が固くなってから晴天の日など畑の乾いたときに、傷をつけないように収穫し、コルク化後選別、出荷するようにします。
暑い夏の日の収穫が多いが、そのような場合は早朝に収穫し、暑い畑に長時間放置しないようにし、仮貯蔵は高温を避け、冬期の貯蔵温度もできるだけ低温とします。種いもの切断後はキュアリングが終わるまで乾燥を避けるため、一時納屋でむしろを掛けておいたり、植付時まで離さないでおくのがよい。
 茎数が少ないので、小粒全粒種いもを活用するなど目数の確保につとめるのがよい。
浴光催芽の期間は「男爵薯」などよりやや短くてもよく、温度を上げすぎないようにします。<.BR> 紙筒移植には、初期生育がよく、床で黒あざ病にかかり難く、奇形や中心空洞がで難いため、好適します。
いもの分布は「男爵薯」より疎なので、緑化防止のため、培土は遅れずにやるほうがよい。


左:「ワセシロ」のヘリオトロープ色の花1房。 中:「ワセシロ」の塊茎。右:「ワセシロ(伯爵)」を使い、そのイメージの720ml瓶に入った2011.9発売の本格焼酎。25%、軽快な香り、お酒やほどよいジャガイモらしさを感じる。定番のロックの外炭酸割りで飲む女性も多い。


左:知床が近い中標津町の『なかしべつマリンスクラブ』の仲間達。
本格焼酎『伯爵』の栽培でも頑張っています

これは馬鈴薯の中国語読み「ま−リンシュ」からとっています

右:端野町では「ネオ男爵」の名で、中標津町では「男爵薯」より上だとして「伯爵」をつけて(煮崩少ない「紅丸」は「紅爵」として)売っています。育成時の品種名第一候補は、当時漢字は使うことが許されていなかったので、『ハクシャク』でしたが、国に採用されませんでした。



中標津町の【じゃがいも伯爵まつり】(第17回2004年の風景)
問い合わせ先:中標津町商工会青年部:0153-72-2720。または中標津農協:015-37-3275。第1会1988年(昭和63)
こんな状況


【北海道で一番早くジャガイモを出荷する伊達市】
"北の湘南"と呼ばれ、雪の少ないことで知られる伊達市。その地の利に加え、栽培技術でマルチを活用し、加えてでん粉のノリや肥大の早い「ワセシロ」の特性を活かした栽培をしている伊達市上長和(かみながわ)の特選馬鈴薯組合があります。

【7月の新ジャガ(ワセシロ)に向く料理】
 「ワセシロ」の新ジャガは揚げものに最適です。例えば、ポテトチップス、フライドポテト(ポム・フリット)、ジャーマン・ポテト、北米の朝食で人気のハッシュブラウン(ハッシュド・ポテト)、コテージフライ(ホームフライ)、ポテト・オブライン、ポテト・リヨネーズ、レイュテイ(スイス風 ジャガイモ・パンケーキ)などがあります。
例.いんげんとじゃが芋のオイスターソース炒め
http://cookpad.com/recipe/386504 

 寒くなるまで保管したものは「コゲの素・グルコース」が増えてますので、逆に普通の料理に使いましょう。


【ビッグ・ポテイトウ】1991年(平成3年)11月2日北海道新聞の  “かわかぜ”蘭に載っていた記事。芦別市上芦別町38、中島幸夫さんの畑で収穫された「農林1号」に961g,757gの特大ジャガイモを両手にもった写真が載っていました。
 この年各地でジャガイモが良く肥大し道南の七飯町上藤城239の野沢太郎さんの畑では「ワセシロ」の畑で、なんと一つ1,180g(直径20cm)のものが出たと載っていた。
映画『釣りバカ日誌20 ファイナル』に紅白ジャガイモ配布 これが公開される2009年12月26日、メイン館となる東京・千代田区の丸の内ピカデリーでは、初日を記念して紅白のジャガイモセットが先着2000人にプレゼントされた。最後の舞台となったのが北海道・中標津(なかしべつ)町だったため、中標津農業協同組合の協力により同町特産品であり、同町にあった北海道立根釧農業試験場が1974年に育成した「ワセシロ」(伯爵)と赤い「レッドムーン」のセットであった(写真)。

【付記】北海道立根釧農業試験場名称の推移

1927年 - 国費により北海道農事試験場根室支場が標津郡標津村(現:中標津町)に設置される。
1942年 - 北海道農業試験場根室支場に改称される。
1950年 - 北海道へ移管され、北海道立農業試験場根室支場となる。
1957年 - 国費によるばれいしょ指定試験地が置かれ、馬鈴しょの育種が開始される。
1964年 - 本支場制を改め、北海道立根釧農業試験場となる。
1998年 - 馬鈴しょ科が北海道立北見農業試験場に移転。 2010年 - 地方独立行政法人北海道立総合研究機構の設立により北海道から移管され、名称を「地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部根釧農業試験場」と改める。
2018年(平成30年)7月1日に、根釧農業試験場を酪農試験場と改める。

ワセシロ大好きの猿<アビシニア・コロブス >へ行く
伯爵夫人のいももちのつくり方へ
 品種コナフブキ
品種メニューに戻る *スタート画面へ戻る*