放射線処理ジャガイモ

***放射能と放射線はちがう***

 ジャガイモは、収穫後2〜3か月の間は、適当な温・湿度を与えても、萌芽してきません。この期間を休眠期といいます。この時期を過ぎたものは3℃以上におかれると芽を伸ばしてきます。一度萌芽しますと、その分のロスを生じ、管理が悪いと腐敗や芽の基底部にアルカロイドという毒物を生ずる原因にもなったりします。
 また、芽を出にくくするため低い温度で貯蔵すると、糖分が多くなり、ポテトチップスのようなフライ食品が暗褐色となって売れないものなります。
 適地のジャガイモは、年1回しか栽培できないので、産地では、種いもの浴光催芽、マルチ栽培、べたがけ栽培などで生育を促進させて、なるべく早く収穫したり、3℃以下の低温で萌芽しないように貯蔵して、ジャガイモを食べたい時はいつでも食べることができるよう努めています。
 アメリカなどでは、収穫後クロロプロファムを散布(ポストハーベスト・アプリケーション)して萌芽を抑制し、長期間貯蔵して、フレンチフライ工場などのコストダウンに貢献しております。アイダホポテトなどとして日本に入ってくるものを分析すると毎年半分ぐらいから検出されているようです。
 しかし、日本では、食用となるジャガイモに収穫後薬剤を散布することは一切禁止されております。
 ジャガイモの例では、コストはキロ当たり10〜20円と安く、7〜15千ラド(Krad)を照射することにより室温程度で新ジャガの出てくるころまで萌芽を抑制してくれます。萌芽は抑制されてもジャガイモは生きており、呼吸はし続けております。収穫後一定の期間は、品種により長短ありますが、休眠していて芽を伸ばしてきませんので、長期にわたり貯蔵するものに照射しております。
 このコバルト60から出る放射線により芽どめされたものは、その後ある程度高い温度で貯蔵が可能となって用途の拡大に役立ち、長期の貯蔵に耐えるため市場価格の安定、加工業の操業期間の延長にも役にたっています。
 設置に金がかかりますので、農水省の実験事業として、現在北海道に1か所しか設置されておりません(1973年)。このようなジャガイモへの照射は中国やチリでも実用化されています。上海のものは10万キューリーのコバルト60を使って、士幌に近い1時間に10tのジャガイモに照射しています。
昔、果実の殺虫に発がん性が問題となった二臭化エチレン(EDB)が使われたり殺菌にエチレンオキサイドが使われたことがありましたが、今後は食べ物の殺菌、殺虫、貯蔵技術として、このような化学薬剤を使わないで食品照射が注目を浴びつつあります。
 ジャガイモへの照射はチエノブエリ事故のように放射能を出す灰(放射性物質)をジャガイモにまぶすのではありません。
 がん患者がうけるコバルト60から放出されるガンマ線や毎年健康診断の際受けるレントゲン撮影と同様に、誘導放射能*は生じません。
 日本原子力研究所など世界の研究者たちの長い間の研究により、毒性物質、発ガン物質を生じたりすることがなく、また、ネズミやアカゲザルを使った数代にわたる飼養試験で子孫への悪影響がでたりしないことも確かめられています。
 士幌農協の1974年(昭和49年)の初出荷以来母親大会連絡会、東京都地域消費者団体連絡会などが、@誘導放射能が出ないか、A栄養成分が破壊されないか、Bジャガイモの中の成分が有害なものに変化しないか、C人間の遺伝子に影響が出ないか、D消費者に判りやすくせよ...などとの反対運動がおくており、処理したものは扱わない生協などが出たりしました。日本学校給食会も「かってのリジンで経験したような教育現場での無用な混乱を避けたい」などとしてその使用を避けています。
 照射したものははっきり分かるようにするとともに、照射ジャガイモの安全性について、今後とも啓蒙に努め、理解を求めていくことが必要でしょう。
 *放 射 能=放射線を出す能力、物質のこと。ジャガイモには放射能を持つコバルト60から出るガンマ線という放射線を照射しています。ジャガイモを通過した放射線は、すべて熱として瞬時に消滅します。しかし、出回っているものはマイクロ波照射(電子レンジ等)とはちがって生きています。
 喩えて言いますと、放射能を持つものを電灯とすれば、放射線はその光です。ジャガイモは電球ではなく光を受けたものになります。2011年3月11日の東北沖大震災の原子力発電所の事故の際の基準値を超えたホウレンソウや原乳は豆電球をつけた状態にあると言えます。光を出し続ける電球をもつもの(ホウレンソウ)は、光を受けたもの(ジャガイモ)とは根本的に違います。事故時原子力発電所の近くでは、電球が花粉のように空中に浮遊していたわけです。花粉のようにこの電球が付着したホウレンソウを洗い落さず食べたり汚染牛乳を飲んで体内に入れると、体内で放射線を出し続けまが、光を受けたジャガイモはそのような心配はありません。海水に飛散した電球は、海藻や魚介類に入り、人体への影響が心配されることになります。
地震津波の多い我が国で、何千年にもわたり緊張感を維持して運用しなければならない原子力発電は縮小の方向にもっていくべきですね。
 *:誘導放射能=放射線が原子を活性化して、放射能を帯びさせること。きわめて高いエネルギーの放射線を照射しなければ、誘導放射能はおきないことが知られています。
ガンマ線などの放射線は図のように、光と同じような電磁波です。つまり放射線照射は、調理場の殺菌のための紫外線照射とか食品の加熱のためのマイクロ波照射(電子レンジなど)と原理は同じですが、その電磁波を出すものでなく、受けたものが消費者に行っているわけです。胸部レントゲン撮影では1回に0.1〜0.3ミリシーベルトを受けており、この他に人は年間平均2400マイクロシーベルトの放射線をうれていると言います。人の体にも放射性カリウムがあり、年間400マイクロシーベルト出しております。

『一口メモ』


放射性物質:放射線を出す物質。ヨウ素131、132、134.セシウム134、136、137。
ベクレル:放射能の強さを測る単位。食品などのへの汚染度をみるもの。フランスの物理学者の名前からとったもの。
シーベルト:放射線の人体への影響を表す単位。スウェーデンの物理学者の名前からとったもの。マイクロシーベルトの1千倍がミリシーベルト。その1千倍がシーベルトです。一人あたりの自然放射線(世界の平均、年間)が2.4シーベルト。胸のX線検診は1回につき、0.1〜0.3ミリシーベルトと言われています。
半減期:放射能が元の半分になるまでの期間。β線を出すヨウ素は8日。セシウムは30年。α線を出すプルトニウムは2万4千年。ウランになっては45億年と天文学的に長い。
セシウムは、数カ月は土壌の表層にとどまるのですが、しだいに土壌に深く入っていき、根菜類や果樹の根からも吸収され最終的に人の体内で放射線を出すことになりますので、γ線処理されたジャガイモ(汚染物質ではありません)より怖いことになります。

「メークイン」の芽条変異.1991長沼町にて見たキメラの房

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