放射冷却により気温が−2℃以下になるとジャガイモに霜害が発生します。霜にあうと、茎や葉が褐色ないし強い場合は枯死黒変します。しかし、被害の5〜6日後ころより枯死茎の地際部から5(トョシロは少ない)から最多10数本(紅丸は多い)の側芽や腋芽分枝を再生させてきます。枯死した場合など、草丈は、直後はかなり低く推移しますが、分枝が多いため、葉面積では差のないほど回復していき、後期は十分繁茂し、結果的に枯凋期が何日か遅れます。
収量への影響は、被害が出芽直後では、ほとんど影響しませんが、培土時期の晩霜では、上いも個数、やサイズの大きいいもが減少することがあります。てん粉価は下がる場合、上がる場合などいろいろです。昭和60年6月15日朝の例では中晩生種では、初期生育の遅延、生育日数の短縮、塊茎の小粒化等の悪影響がみられます。
通常特別な対策はしなくてよいが、茎葉繁茂後の疫病防除に注意しておくとよいでしょう。
施肥量の多い畑ほど被害は少く(北海道澱粉工業協会刊「細菌病と生理障害の防除と対策」p53に写真<丘の上に向かった多肥、少肥各2畝が交互に続く畑の写真など>)、窒素を散布する事例を聞いたことがあります。
また、お茶畑では、危険な時期に、畑に1時間に2〜3mm程度の散水をしてやり、水が凍るときの潜熱を利用して霜害にならない温度(0〜-2℃)に保つという例もあるが、気温が下がっているときに散水が切れると、霜害がかえってひどくなると言う。
さらに、1980年代の始めにカリフォルニア大学バークレー校のある科学者は、バクテリアがつくり出す化学物質が、ジャガイモの葉の表面での結氷を助長するため、ひどく霜にやられてしまうので、都合の悪い遺伝子と組換えた新しいバクテリアをジャガイモ畑に散布し従来のバクテリアを駆逐しようとしました。
しかし、ジェレミー・リフキンさんをリーダーとする環境保護運動グループは、その安全性を確かめないまま新しいバクテリアを環境にばらまくのは無責任で、危険であると反対し、1984年に裁判所の中止命令を勝ちとりました。
かって道立十勝農試でもジャガイモの葉の上で霜をつくる原因となる氷核細菌を防ぐ試験をしたこともありました。
通常被害の出る温度は−3℃程度です。わが国では耐霜性の育種はほとんどやられてきておらず、品種間差もはっきりしませんが、耐霜性で知られるS. acauleとの種間雑種で知られる「Alaskan Frostless」はもっと低い温度にも耐えることが知られています。S. commersonii種も耐霜性があります。
3月からジャガイモを植えるのがあたり前のイギリス、オランダなどでは、6月の晩霜は無と言ってよいが、北海道ではほぼ毎年被害にあっています。主な晩霜の記録を拾いますと、1898明治31年、1900明治33年、1922大正11年、1925大正14年、1932昭和7年、1937昭和12年、1938昭和13年、1950昭和25年、1954昭和29年、1966昭和41年、1974昭和46年、1976昭和51年、1985昭和60年、1998平成10年があります。