平成のある年のゴールデン・ウイーク、職場の仲間と一緒に韓国旅行に出かけたことがありました。
旅の目的は、観光、買物、カジノ、と言ったカ行に集約されたと言えましょうが、私こと熟年おじんには気楽なリフレッシュでした。私たち両国の人びとは、人類の進化とか分化とかの関係からみると、共通の遺伝子を多く持っていますので、裸になれば区別は不可能に思えた。それでも、在日経験のあるガイドさんは、「韓国の女性のほうが間違いなくスマートで美しい」、と幾度も強調していたことが、南大門市場の汚さと抱合せで印象に残った。
韓国の木はムクゲに代表されている。ムグンフアと呼んで一番好かれている花と言えましょう。
できれば、これもじっくり見たいと出かけたのですが、グループ旅行という束縛の中で意のままにならないでいたところ、ようやく釜山の国連軍墓地で整枝された1列を間近かにできました。その花が咲けば、白か紫か、あるいは紫紅なのか。開花は未だだったが、芝の広がりを背景に頭部だけを新緑で飾っており、美しかった。
そのハイビスカスのような美しさに惹かれて知床半島の付け根付近にあり、ジャガイモの採種地として知られる清里町では町木にしています。
実はこの木はジャガイモのYウイルス病を媒介するワタアブラムシの巣になるものなのです。昭和50年台の始めの9月に同町で黒いアブラムシによって丸坊主にされた畑を見たことがあるので、その虫の恐ろしさはよく知っています。このため、採種地の行く先を思い、ムクゲを愛するのはほどほどにと心配しているところです。
ムクゲはアオイ科の落葉低木で、庭木とか生け垣として使われることがあります。この花を韓国の国木としているのは、この花が1本の木にたくさん蕾をつけ、ひとつの花が散っても次つぎと咲き、永遠を連想し、民族の生命の強さを表し、またその清らかな色は気高い心を示すとされています。
しかし、わが国には『槿花一朝の夢』という言葉があります。1つの花だけを見て、朝咲いて夕にはしぼんでしまう儚さを示すものにもなっています。清里町においては、そのようにならぬようジャガイモの採種栽培のほうは長く続けてほしいと願っていますが、幸いにもこの町で多く栽培されている品種はワタアブラムシが媒介することで知られるYモザイク病には圃場免疫性の「コナフブキ」であるのが救いです 。
「知床の岬に ハマナスの咲く頃・・・」と歌われる知床半島から網走の海岸には、随所にハマナス(ハマナシ)が咲いています。秋モモアカアブラムシの有翅の雌虫がこれらのバラ科の木に飛来してきます。その後アブラナ科、ナス科、ウリ科。マメ科などから飛来してきた雄と交尾すると、卵での越冬の場になります。このため、ジャガイモの採種ではハマナスやヤマザクラの無い場所を選らび、野菜や一般食用ばれいしょの少ないところで、イネ科を入れた輪作をして、アブラムシ発生の少ない環境つくりに努めております。(いも類振興情報41号登載,1994.10.)