塊茎表面にあめ色ないしレンガ色の浅い窪みを生じます。切断すると患部は褐色になっています。本病による腐敗を「塊茎腐敗」と言いますが、病患部から二次的に細菌が入ると軟腐してきます。
春の気温上昇が早く、夏以降多湿冷涼な年に発生が多く、乾燥した年は少ない。
排水の悪い場所の初発生を見落とさず、曇雨天が続くときは、蔓延させないように防除します。菌の侵入は、葉では裏面から、塊茎では主に目(くぼみ)で、皮目や傷口からも入ります。
そうか病56
細菌に属する放線菌。病斑の大きさは不同です。周辺部がやや隆起し、中央部がやや陥没した淡褐色〜灰褐色のかさぶた状のものが多いが、陥没型や網目状亀裂のものもあります。数種のストレプトマイセス菌が知られています。
罹病種いもの外、過作、連作により土壌中の病原菌密度が高まり、発生が増え、他の根菜類(てん菜、人参、大根など)をつくっても発生がみられます。土壌のpHが高い場合も発生が多くなります。アグリマイシンやアタッキンでの種いも浸漬処理が有効です。北海道では九州で使用しているクロルピクリンは使用しないことになっています。
本病は、着蕾期から開花始期に畑が乾燥した年に多い。萌芽期からこの時期までの潅水が発生を抑制します。えん麦、豆類の緑肥の施用は、他の作物の茎葉や堆肥(特に未熟堆きゅう肥)の場合よりも発生が少ないことが多いようです。
亀の甲症<象皮病類似症状>57,58,56
塊茎表面に褐色で網の目に似た亀裂がみられます。そうか病に比べると、亀裂は浅く、病班の周囲が盛り上がることはありません。
そうか病に近い放線菌(ストレプトミセス菌)によりますが、いくつかの放線菌が関与している可能性もあり、症状からの判断が不明の点もあります。
そうか病同様に、塊茎肥大期に雨が少なく、地温が高い年に発生が多くなります。
土壌伝染と種いも伝染もします。種いも伝染は少ないようでが、病班のあるものは除去しておきます。過作、連作により土壌中の病原菌密度が高まり、発生が増えます。
病班は浅いので、加工用ではほとんど支障になりません。
粉状そうか病55
褐色のやや隆起した円形の病斑。間違ってそうか病と呼ばれていることがありますが、病斑の周囲には表皮破片がひだ状に残りますので、そうか病や皮目肥大とは区別できます。多湿な畑で発生する皮目肥大と混在していることもあります。
土壌pHが低く、6,7月頃低温、多湿な場合に発生が多くなりやすい。堆肥や家畜の腹を通っても生きています。発生地はナス科以外の作物を4,5年作付したり、フロンサイドやネビジンを使うと減少します。
乾腐病73,74
塊茎の傷口、打撲部、ストロン基部に陥没した病斑があります。湿度が高いと、この病斑部が水浸状に腐敗し、さらに進と褐色、灰色、黒褐色となり、しわを生じて乾腐します。
病斑内部には空洞部ができ、病斑表面などに白〜淡紅色のかびを生じます。二次的に細菌が入ると軟腐することがあります。
数種のフザリウム菌によって発生しますが、地域や畑で違います。いずれも、連作を避け、収穫はていねいに行い、収穫後よく風乾しておくと発生が少ない。貯蔵は、高温多湿にならないようにします。
紅色斑(班)点病76
塊茎表面に淡い紅色の斑点がみられます。その病班の大きさは大小不定です。地下部茎や根をよくみると、そこも紅色に変色していますので、区別が容易です。2つのピレノレータ菌が知られていて、トマトの根腐病やたまねぎの紅色根腐病をおこすものがあります。防除には、これらの作物を避けた輪作が有効でしょう。
銀か病75
病斑は、ほぼ円形に近い径3〜30mmで、銀灰色をしています。赤色の品種では色がぬけたようになっています。水に濡らしてみると少し判りやすくなります。
有機質に富んだ多湿な土壌で発生しやすく、貯蔵温度が高く、湿度が高いと病勢が進展しやすい。
炭そ病80
はじめ、微細な褐色斑点を生じ、多湿な状態の下で拡大し、直径数mmの円〜楕円形の陥没病斑となります。病斑は散在したり、互いに融合して不正形に陥没していきます。切断刀で感染することもあります。その消毒にはケミクロンGが効きます。
枯凋の近い頃、茎の地際の木質部が露出し、やや細くなり、灰褐色となっていてます。黒い小班点があり、それから小さな毛が出ていれば、半身萎凋病などと区別できます。
多量に堆積したり、覆土が厚かったりすると貯蔵中に急速に進みます。病斑にごく小さなへそがあることがあります。土中貯蔵で湿った状態では、病斑が大きくなりやすいので、消石灰を粉衣してもよい。
黒斑(班)病78
径1〜11mm、平均5,6mmくらいの炭そ病に酷似した病斑を生じます。この病斑は炭そ病よりもやや大きく、窪みが深く、色はやや黒みがかっています。
収穫間近の降雨、地温、土壌条件などが関係しているようです。貯蔵には消石灰を芋の目方の1%をまぶしておき、春浴光催芽しても芽の出てこないものは除いて植えます。夏疫病に近いアルタナリア・アルタナータによります。
軟腐病49,50
細菌によります。塊茎の皮目部に赤褐色の水浸状小班点を生じ、高温多湿下で拡大していき、周囲が褐色の不明瞭な斑紋となります。その下の柔組織はクリーム状に軟腐し、膿(のう)状となり臭みを増します。
7月中、下旬以降の高温多湿な年に発生が多く、始め地面に接した小葉が水浸状で、暗緑色になります。この頃から防除します。畑の排水をよくし、窒素の多用を避けると発生が少ない。
黒あざ病51
黒いあざ状に盛り上がった土壌に似た菌核が、散在しています。茎葉枯凋後10日〜2週間後くらいから増加してきます。 植えると萌芽前に幼芽がやられ、細い茎が増えます。バリダシン粉剤の効果が劣ることがあります。リゾレックス、モンセレンの外、そうか病にも効くアグリマイシン、アタッキンも使えます。
過作、酸性土壌、春の低温などで発生が増えます。逆に、菌核の無い種芋を使い、浴光催芽をして、畑が早く乾燥したところに植え、枯凋後あまり土の中に放置しないようにすると発生が少ない。
黒あし(脚)病66
細菌によります。ストロン基部から褐変し、柔組織が少し空洞化しています。激しいものは全体が腐敗してきます。軟化腐敗部は空気に触れるとしだいに黒変します。
3種の細菌が知られていますが、区別が難しい。軟腐病よりも早くから発生し、地際が黒く、茎が空洞になっています。種いもは信用のおけるものを入手します。
Yモザイク病
← 九州で知られたもの。内部から病斑が進み、後塊茎表面に指斑病によく似た円形〜楕円形の褐色の窪みを生ずるようになります。
指斑(班)病63
はじめ、塊茎表面に小さな変色陥没部を生じ、貯蔵末期には拡大して1〜3cmの親指で押したような円形〜楕円形の褐色の窪みとなります。
枯凋後畑に長く放置せず、傷を少なく収穫し、十分キュアリングをさせるため、傷のついたものを低温に置かないようにすると、貯蔵中の進行が少ない。
二次成長
種には、伸張型ではほとんど影響ありませんが、さらに進んだこぶ型、人形型、鎖型、あるいは萌芽型は除いたほうがいい。
いずれも肥大期の高温・乾燥が火付け役となり、その後の降雨なども加わって発生します。二次成長部分のでん粉価のほうが高い場合もあります。
二次成長の型:多肥に、高地温・乾燥の後の降雨など加わって発生する伸長型、こぶ型、人形型。高地温や土壌の乾燥によるジベレリンの増加などによる鎖型・萌芽型。降雨後の急速肥大などによる列開型があります。
打撲、切傷69,67
収穫機械などの打撲によって生じた傷。切ってみると、打撲により皮下に黒斑や空洞を発生していることもある。傷の軽いものは種として使用できます。、亀裂の深いものや強い力で押されて、外の亀裂から想像できないほどの空洞を生じたものでは、塊茎単位の栽植ができなくなるなどの障害がでてきます。
爪趾状障害については、61をみてください。
緑化
塊茎の一部が緑になっているもの。土が亀裂していたり、培土が浅かったりして、日光に当たり皮層にクロロフィルを生じたもの。種いもとして使用可能ですが、高温下にあったものは萌芽が早くなったり、肉部に赤紫のアントシアニン色素ができているるのもあります。
緑化とほぼ並行して、苦味のもとになるα−チャコニン、α−ソラニンなどのグリコアルカロイドも増えており、これらは熱にも強いので、食用にしないほうがよい。
皮目肥大
畑が多湿なためにできた生理的障害。塊茎表面に分布している皮目が発達して大きくなったもので、粉状そうか病と混同されることがあります。この障害は、大きさがほぼ一定で、あまり大きくはならないので、区別できます。局所のみのものは種として使用可能です。
アントシアン84
花青素ともいう。植物の花弁や果皮などの美しい色の原因となっている一群の色素の総称。ときにはジャガイモ塊茎にも見られ、茎(赤ジソ,赤キャベツ)、葉あるいは根(ハツカダイコン)にも存在することが知られています。発生原因ははっきりしませんが、地表面から浅いところに芋があったとか低温との遭遇などが考えられます。
アントシアン(赤紫色)色素含量を高め、これら色素の持つ抗酸化性等の機能性の高い食品としての利用を可能にする品種開発が進められつつあり、戦中、戦後に栽培の多かった皮の薄紅色で肉色の一部も紅色の『紅丸』品種に加え、近年『インカレッド』、『インカパープル』などが開発されました。しかし、色素の回収にはムラサキキャベツの数倍のコストがかかり、色価はサツマイモ『アヤムラサキ』(色価9〜10)より劣り、チップスなど調理加工した場合の色合いも劣ります。
ラセット粗皮60
生理的障害によるものですが、そうか病と間違えてクレームがきます。やや大きめの網目(ネット)や細い亀裂を生じています。
高温乾燥がからんだ二次成長のひとつであり、軽度のものは種いもとして使えます。
品種に固有のものは目が細かく、均一に出ています。
裂開59
二次成長の一種で、干ばつのあとに降雨があるなど肥大が急速に進んだ場合などにできやすい。「とうや」、「アトランチック」などでみられます。ライマン価が1,2割低下することがあります。
多肥で、培土が不適切だと、年により発生します。
爪跡状障害61
比較的軽い衝撃を反復して受けた場合などに、発生します。平坦な所に当たった場合よりも、床が凸凹していたり、斜めから強い力が加わった場合に見られます。
「男爵薯」で見られることが多く、その澱粉価が高い年によく見られるので、取り扱いに注意します。菌によるものではないので、傷が深い場合を除き、種として使用可能です。
圧傷(押し傷)62
バラ積み貯蔵などで、下の芋に重圧がかかった場合に、2月以降に表面が窪んできます。窪みの著しいものは復元できず、脱水状態になってその部分がコルク状になることがあります。2月に入ったら、堆積山を崩して、コンテナなどに積み替えると、発生が減ります。
バラ積みの山を低くしてもよい。澱粉価の上がっていない芋の早掘りとか、多肥などで未熟な芋を長期間バラ積みすると多くなります。
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