いろいろの機会にジャガイモ栽培農家回りをして、ちよっとした工夫を発見するのも楽しみなものです。気の利いた小道具を使っているのに出会うと、自分がそっくり真似して直接使えるものではなくても、何か得をしたような感じになり、某テレビの御人のように、「いい仕事していますね」と言いたくなるのもあります。
たとえば、多少品質が低下しても、より多収をねらっている畑で、のたうち回りかけた茎葉をトラクタが踏まずに走れるように、前輪の前に”茎分け機”とも呼べそうな鉄棒とか平板プレート状小道具をとりつけ、それを運転席から操作できるようにしたものもありました。また、種芋切り作業は長時間膝を折り続けなければなりませんので、ミニコンテナに腰掛けて作業できるようコンテナを斜めに置く鉄パイブのスタンドをつくったり、ジャガイモをあける木の傾斜した台、それも手元に転がってくるように出口を狭めたものも見ました。
30年ほど前に弟子屈町の川湯で見て、今でも忘れられないのは、地上式簡易貯蔵庫の入り口にノラゴボウかアザミの乾いた花を数珠つなぎにした紐1条を倉庫入り口に発見したことがあります。これは特別金のかかる仕掛けではありませんが、ネズミの倉庫内への侵入を防ぐ装置と読んで、「お主、なかなかやりおるのう」と感心したものでした。
ネズミの足の裏は意外と薄いので、とげのようなものに敏感らしく、あまりジャンプせずにチョロチョロ走ってくる鼠公には効果があるらしい。そう言えば、昔、デーン人の攻撃を受けたスコットランド軍は、素足でアザミのトゲを踏んだ相手方の斥候の悲鳴を聞いて、敵の夜襲を察知し、難をまぬがれたことがあったとか。それでアザミは国花にもなったのでしょう。
露地に芋に土をかぶせた山を盛り、冬雪の下になるところでは、換気用に立てた小穴のあいた筒からネズミが入るため、とげのあるものを詰めたり、周辺だけ悪臭のはげしい農薬の粉を撒いたりしています。鹿対策で畑の山側を光るビニールとか電気牧柵で囲っている例もよくあります。
春マルチしたフィルムから芽が出られるようにしてやるため、いっせいに出てこない芽を相手に毎日見回り、いちいち腰を曲げて反5千株なら5千個の穴を開けてやるのは大変なことなので、できるだけ軽くて丈夫な棒の先にナイフをつけたり、飲料の空缶を切ってマンガのワニがサメの歯のようにして先につけ、腰を曲げないですむようそれぞれ工夫しています。パオパオなどの不織布や防除ホースを巻き取る輪に自転車の車輪を活用したり等々。身代わりロボットのような発明とは言えないまでも、それなりに光るアイデアが生きていたりしています。次の旅でどんなものを発見できるか、目的外の楽しみのひとつです。