ジャガイモは野菜か

***果物か、いや穀物か***

通常、木に成るのは果物、そうでないものは野菜。甘くて、生で食べるものは果物、火にかけたドレッシングなどで食べるものは野菜。食後のデザートとして食べるものは果物、副食として食べるものは野菜と考えられていましょう。
農林水産省では、野菜とは食用に供し得る草本性の植物で加工の程度の低いまま副食物として利用されるものとしており、植物学の定義では1年生の草本作物としています。
 野菜の定義や分類の考え方については、定義・分類の利用目的などによりいろいろあり、また、例えば、ジャガイモを調理して副食に利用する場合は野菜として取り扱われますが、澱粉原料等に利用する際は野菜とは言わず一般作物としており、利用形態によっても分類が変わることがあります。このため作物単位で分けることはできないのが現状です。
市場では菌類のきのこも果樹の栗も野菜として扱います。そのワケは加工し て食べるものは野菜、生で甘みや香りを楽しむものを果物としています。
人によっては、生で食べるのが果物、火にかけたりドレッシングなどで食べるのを野菜としたり、タネを食べられないのが果物、タネごと食べるのが野菜としている例もあるとか。
 こんな具合でなかなか判りにくい。かってアメリカで、トマトは野菜か果物なのか、と論争、いや裁判沙汰になったことがあったそうです。植物学者は果物派、農務省は野菜派として争ったが、結論は「トマト=野菜説」に軍配があがりました。
  その理由は、裁判所によりますと、
「トマトは食事中にたべられるが、デザートとしては使われない。したがってトマトは野菜である」というものでした。イチゴは果物屋さんで売っています。これは何でしよう。  「野菜」とは、『大辞林』によりますと、「食用に育てた植物」となっています。
  この定義では、かなりの植物が野菜の仲間になります。リンゴ、カキ、バナナも食用として栽培することが多いので果物でなく野菜になります。ジャガイモはもちろん、穀類の米・麦まで入ってもおかしくありません。
 北海道の東部ではジャガイモの大半は澱粉となってしまいますから、エネルギー源の水稲並みに穀物(普通作物)に近いことが判ります。いっぼう、ハワイなどでステーキを注文すると、ポテトかライスと聞かれることがあります。ここではライスは野菜です。ですから、主食を聞かれていると思って、いやブレッドにしてくれ、なとどと言う必要はありません。黙っていても主食格のパンはついてきますので、肉の横のつけ合わせとしてライスが欲しければ、野菜としてのライスを頼めばいい。
しかし、外国のレストランのメニューには、「Vegetable & potato」と区別し、ジャガイモは野菜とは別のものとして扱われることもあります。

 そこで、野菜とは何ぞやを知るため、ノンフィクション作家の村野雅義さんの本を開いてみますと、すこし補足制限を加えています(『狂ってしまった野菜たち』)。
@ それだけを食べて、お腹を満腹にするものではない。(ジャガイモのカロリーはご飯の半分)
A ビタミンやミネラルの摂取ということが、おもな目的である。(ジャガイモはビタミンの種類が多く、バランスがよい)
B 「草」でできているもの。
 これによりますと、果物屋で買ってくるメロン、スイカは野菜ですが、カロリーの多い主食の米麦は除かれています。ジャガイモはカロリーが御飯の半分で、ビタミン類が豊富なので野菜になります。
 さて、あなたならどう捌きますか。

 付1。野菜の分類。これもいくつかありますが、ひとつあげますと次ぎのようなものがあります。(喜田茂一郎氏、1911年)(野菜園芸大辞典)。
 @ 根菜類:直根類(だいこん、にんじん等)、
         塊茎類(ながいも、さつまいも等)
 A 茎菜類:球茎類(さといも等)、
         塊茎類(ばれいしょ等)
         根茎類(れんこん等)
         鱗茎類(ねぎ、たまねぎ等)
         嫩(どん)茎類(たけのこ、アスパラガス等)
 B 葉菜類:キャベツ類、ほうれんそう、しゅんぎく、セルリー、みつば等
 C 花菜類:はなやさい類
 D 果菜類:ウリ類(きゅうり、かぼちゃ、すいか等)、
         なす類(なす、トマト等)
         莢菜類(えんどう、そらまめ、えだまめ等)
 E 雑類:いちご、とうもろこし、マッシュルーム等

 もう一つ、農林水産統計用語辞典では、「一般に、野菜とは、食用に供し得る草本性の植物で、加工の程度の低いまま副食物として利用されるもの」と定義し、野菜生産出荷統計(農林水産省)では,次ぎのように分けています。
 @ 根菜類(だいこん、にんじん、れんこん、ばれいしょ、さといも等)
 A 葉茎菜類(はくさい、キャベツ、ほうれんそう、レタス、ブロッコリー、ねぎ、たまねぎ等)
 B 果菜類(きゅうり、なす、トマト、ピーマン、スイートコーン、さやえんどう、えだまめ等)
 C 果実的野菜(いちご、メロン、すいか)
 D 香辛野菜(しょうが)

付2.栗や茸はどうか(市場からみると)
 食材としての植物の分類は、野菜と果物だけではありません。他に、穀類(米、麦など)、ナッツ類(栗、クルミ、ピーナッツ、カシューナッツなど)、海藻類(若布、昆布、海苔など)など、いろいろあります
 市場では菌類のきのこも果樹の栗も野菜として扱います。そのワケは加工して食べるものは野菜、生で甘みや香りを楽しむものを果物としています。木になるものでも、かりん、銀杏、くるみ、うめなどは野菜部の取り扱い商品です。
草本類のいちご、スイカ、メロン、は果実部の商品です。
 なお、園芸学的には草本類は野菜園芸で扱いイチゴや瓜類などもトマトやきゅうりと同じ果菜類として扱われます。木本類のくり、うめ、などはほかの果実と同じ果樹園芸で扱われます


【蛇足】And for the vegetables?
 わが国ではピーマンは中(脳)が空っぽであり、芋は泥臭い、などと思われていますが、野菜は外国でもいいイメージを持っていないようです。たとえば、強硬な姿勢から「鉄の女」の異名をとったサッチャー Margaret Hilda Thatcher 首相も野菜(vegetables)は「頭が空っぽで活気のない人間」の意味で使っていました。
 ある閣僚会議のおり、昼食を取りながら行うことにした。注文を取るためにメモを持ったウエイターがサッチャーの横にやって来て、「マダムは何がお好みでしょうか?」と聞いた。「牛肉のウエリントン風を」と答え、続く「野菜の付け合わせはいかがいたしましょうか?」(And for the vegetables?)との質問には、二つの意味をかけて「(他の野菜連中には)皆私と同じでいいのよ!」とピシャリと言ったとか。
函館市五稜郭公園裏の「男爵薯をたとう」碑

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