ジャガイモ品種「アスタルテ」(ASTARTE)

(1)来 歴
オランダのカルナ(Karna)が、「SVP RP 62-5-43」に「S. vernei-Bastard VT5 62-69-5」を交配して育成したものをアグリコ(AGRICO)を通じて、昭和61年北海道澱粉工業会とホクレンが共同で導入した、ジャガイモシストセンチュウに抵抗性の品種です。オランダにおける1985年頃の澱原主要品種のひとつです。現在同国ではシロシストセンチュウの発生が多いため、これに弱い本品種は栽培されていません。
原品種名はギリシャ神話の豊饒(ほうじょう)の神「Astarte」(右上写真)に由来しています。平成5年北海道の奨励品種に決定された。
(2)地上部特性
 初期生育は遅い。萌芽は、非常に密で球状、濃褐紫色、毛はかなりまばら、頂芽はやや大きく、通常開く、分枝の発生は遅い。
そう性は中間〜やや直で、茎長は「コナフブキ」や「紅丸」より長い。しかし倒伏は少ない。
 茎数は多いほうで、細く、かすかに紫の着色があります。小葉は小さく、かなり固い、色は淡緑、側葉はやや小さく卵形で葉脈は、はっきりしています。
 茎葉の伸長はかなり早い。茎長は「紅丸」より高くなります。しかし倒伏は少ない。花色は赤紫で、花弁の先が白い。花数は多いが、自然結果は稀れです。
熟期は、「紅丸」より遅い晩生です。
 茎葉の疫病には、疫病抵抗性主導遺伝子R1R3を持っていますが、とくに強くはなく、塊茎腐敗の発生は並です。
 Xウイルスには免疫です。また、Yウイルスにはかかり難いようです。しかし、ウイルス・フリー株でも2期防疫検査後頃から頂部小葉基部が卷いてきたり、生育後半に葉脈に黒褐色の細いえそが見られるのがありますが、葉の表にには出てきません。
 葉巻病の次年度症状は、下葉より卷き上がり、退緑がよりはっきり現れます。葉に葉巻病類似症状は施肥量の少ない場合に多い傾向にあります。
 Sウイルスにはかかり易く、症状が軽いと判り難い。ごく稀に脈間の色抜けや斑点がでることがあります。やせいも病(わが国では未発生)にかかったいもを植えると、側枝が増え、小葉幅が細目になります。
 ジャガイモシストセンチュウには抵抗性ですが、そうか病には「紅丸」並に弱い。
(3)地下部特性
 塊茎は卵〜長卵形で「紅丸」よりスリム、皮色は白黄、周皮は滑めらかです。目は「紅丸」や「コナフブキ」並にやや浅く、目の数は中、肉色は黄白。いも数はやや多いが、上いも平均一個重は「コナフブキ」より小さい。このため早掘りには不向きです。いもの着生は「紅丸」よりやや深めの中で、食味は劣り、澱粉原料用です。中心空洞、褐色心腐ともに「コナフブキ」並の微です。
 いも収量は「コナフブキ」並〜やや勝り、「紅丸」より劣ります。
澱粉価は「コナフブキ」より2%弱ほど低い。また、澱粉の白度、糊化最高粘度は「コナフブキ」より低い。澱粉粒径、澱粉中の灰分、りん含有率、糊化開始温度、糊化時のブレイクダウンは「紅丸」程度で優れています。最高粘度時温度は「紅丸」より低く、「コナフブキ」より高い。
 休眠は「コナフブキ」並のやや長に属します。
(4)栽培上の注意
 萌芽、初期生育は、「コナフブキ」より早いが遅いほうであり、塊茎肥大澱粉価の上昇「コナフブキ」より遅い後期肥大型なので、浴光催芽によって生育の促進を図るのがよい。
 疫病抵抗性遺伝子R1R3をを持っているが、高次レースなどに特に強くはないので、「紅丸」に準じた防除が必要です。
一個重は「コナフブキ」より小さく(70〜100gが多い)、小いもが多いので、収穫時には掘り残しのないように注意します。
採種栽培では、ウイルス病に似た症状が多いので、注意する必要があります。
 「コナフブキ」同様に、疎植では減収の傾向にあります。


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左:「アスタルテ」の花。 右:「アスタルテ」の塊茎

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