ジャガイモ品種「ベニアカリ」(赤皮で白肉)

(1)来 歴
 昭和59年、北海道農試で、高澱粉の「北海61号」を母、早生・大粒でジャガイモシストセンチュウ抵抗性の「R392-50」を父として交配、選抜を繰り返し、平成6年奨励品種に決定されたものです。「北海61号」は「コナフブキ」同様、狭義のジャガイモ(S.tuberosum)の外、S.phureja、S.chacoense、S.demissumに由来する種間雑種後代の育成系統であり、父はS.andigena、S.demissumに由来し、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子(H1)を3重式にもっているものです。
 地方番号は「北海73号」、登録番号は「農林33号」です。
 名の由来は皮色の紅に、北海道農試がこれまで線虫抵抗性品種につけてきたアカリを組み合わせたものです。

(2)地上部特性
幼芽は紫で、萌芽時の葉色は「男爵薯」並の帯紫、萌芽(出芽)は「男爵薯」よりやや遅い。熟性は中生。
草姿は、生育前半は中間型ですが、茎が柔らかいため、後半にはやや開張します。茎長は中位で、「男爵薯」より10〜20cmほど長い。分枝数は「男爵薯」よりやや多く、「農林1号」より少ないものです。
茎色は紫、葉は濃緑で、やや細く、大きさは中、葉脈は紫色です。
 花は赤紫で、自然結果は少しあります。自然結果は「農林1号」並の少です。葯の色は橙で、花柱は低いす。

(3)地下部特性
いもの肥大は「男爵薯」よりやや遅い。
塊茎は赤皮で、肌はよくない。
 肉色は白系、形は楕円、目の数は並ですが、深さはやや浅い。いも数は多く、「男爵薯」に比べ大きく、1割ほど多収です。いも着は中、粒揃いはよい。
 澱粉価の上昇は早く、最終の澱粉価は「男爵薯」に比べ、4%ほど高い。
中心空洞、褐色心腐、黒色心腐、二次生長の発生は「農林1号」よりも少ない。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1をもっております。疫病抵抗性主働遺伝子R1R3をもっています。そうか病、粉状そうか病、及び青枯病には「男爵薯」並に弱い。
 休眠は「男爵薯」より長く、長に属します。

(4)調理加工特性
 生いもの剥皮褐変と水煮後黒変の発生は「男爵薯」より少ない。肉は粉質で、煮くずれしやすい。このため、蒸しいも、マッシュ、コロッケに適します。これらの原料は生食用より安価に取引されるので、農家のメリットは少ない。煮物には適せず、また還元糖が多いため、チップスやフレンチフライには向きません。
コロッケの蒸し時間は「男爵薯」より短く、肉色は白くなります。剥皮歩留は「男爵薯」より高く。「農林1号」より低い。舌ざわりは「男爵薯」より粗です。食味は悪くない。
 ビタミンC含有は、「キタアカリ」より低く、「とうや」>「男爵薯」より高い。

(5)栽培上の注意
施肥量・栽植密度に対する反応は、多肥による過繁茂が少なく、増収の傾向があります。しかし、軟腐病や菌核病の発生の危険がありますので、多肥栽培を避ける必要があります 「コナフブキ」同様疫病抵抗性遺伝子R1R3をもっていますが、これに対する親和性レースが発生しているので、普通品種なみの防除が必要です。
赤皮のため、緑化いもの識別が難しいので、光を当てないようにします。


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