421.『百姓貴族』
2023年、TVアニメ。監督:澤田裕太郎。
2023年7月7日(金)夜から放送開始されたTOKYO MX1のTVアニメ。荒川弘(新書館「ウィングス」連載)の原作により、農業監修を一般社団法人 全国農業協同組合中央会が担っている。メインキャストは、本作の主人公である、農家出身のマンガ家で眼鏡をかけた牛(ホルスタイン)のビジュアル で登場する荒川弘を田村睦心(むつみ、女性)、新書館の荒川弘担当編集者のイシイを本多真梨子、荒川農園で農業に従事し数々の武勇伝を持つ荒川の父を千葉繁、荒川家を支える荒川の母をくじらがやっている。
第1話の『牛乳』に続き、2023年7月14日(金)の第2話は、『ジャガイモ』であった(写真)。 ジャガイモの畑からの収穫はポテトハーベスタと呼ばれる機械で収穫される。土の中から掘り出されコンベアに乗って流れてくる。その中にセッカチなジャガイモがいてポテトチップになっているものもいた。コンベアには形の整った規格品だけでなく、サイズがこれより大きいもの、小さいもの、傷みの入ったものもあり、クズいもと呼ばれ、ベルトから除かれていた。クズいもはその後の選別でも出てきていた。クズいもは専らでん粉原料用に回されるが、自家用食用や御近所さんに配られたりすると言う。規格外がポテチにまわるととれるような話もあったが、ポテチは勿論片栗粉もその専用品種が栽培されている。ともあれ、日本の食糧倉庫"北海道"で、人々を飢えから救うべく、日々泥にまみれて働くマンガが描かれていた。
第6話では、畑のジャガイモシストセンチュウにふれ、観光客などが勝手に畑に入ることは土の汚染の拡大になる恐れがあることを解説する教育的側面も紹介していた。
422.『フェルマーの料理』(フランス語題: Cuisson dans le Fermat )
2023年、テレビドラマ。脚本:渡辺雄介、三浦希紗、制作:TBSテレビ。
2023年10月20日からTBS系金曜ドラマ。 金曜午後10時に放送。
元となるのは小林有吾による日本の漫画作品で、2023年『月刊少年マガジン』(講談社)に連載された。つまり、数学者を志す私立ヴェルス学園3年生・北田岳(高橋文哉)が、その夢を諦め、学食のアルバイトをしながら無為な日々を過ごすが、謎に包まれた料理界のカリスマシェフ・朝倉海(志尊淳)に出会い、数学的思考で周囲を驚かせる料理をつくり、料理人として成長していく姿を描いた料理漫画である。
この中で、志尊淳(28)は、レストランのオーナーシェフ役を演じるが、2023年10月14日、都内で行われた、記者会見に出席し、役作りでジャガ芋を大量に切っていたことを明かした。 「毎日スーパーに通い、ジャガイモ15個買って切ってました。スーパーの人には裏では『ジャガイモ』と呼ばれていたと思います、また、カリスマ感を見せるために、たくさん包丁で切ったり、フランベで火を出す練習をしていました」と笑顔で説明し、「1話で見られます。めちゃくちゃ高速で切りました」とアピールし、一緒に出席していた高橋文哉、小芝風花、仲村トオルらをうなずかせた。
10月27日の第2話は、北田岳が厨房に入ることが仮許可され、「1週間の内に先輩コック全員に認められるならば正式採用してやる」、と言われる 。まずジャガイモやニンジンをダイスに切ることから始まる(写真)。この初日は名前さえ教えてもらえず、食器洗いに終始し、クタクタに終わる。
423.『頑固じいさんとしあわせな時間』(原題:Ilosia aikoja, Mielensapahoittaja)(英題:Happier Times, Grump)
2018年、フィンランド映画。監督:ティーナ・リュミ。
トゥオマス・キュロの同名小説を映画化したフィンランドの大ヒットコメディドラマ。
ある田舎で、長年連れ添った妻を亡くし生きる意味も失った頑固じいさん(ヘイッキ・キンヌネン)は孤独を感じ、葬儀後から終活に入ろうとする(グリーンフィールズの曲も流れて雰囲気を出している。)そして自分の死と向き合うつもりで棺桶を自らつくり始める。
それが完成に近づいたその時、人生に新たな転機が訪れる。都会育ちの17歳の孫娘ソフィア(サトゥ・トゥーリ・カルフ)が家出して転げ込んでくる。彼女は妊娠しているトラブルメーカーだ。じいちゃんは頑固だし考え方も古いけど彼女は知恵と暖炉のような温かさを持つ祖父を必要としていた。受けとめるじいさんの孫娘への気遣いが素敵に展開する。
おじいちゃんの息子でソフィアの父親であるペッカが、観客から嫌われるがスパイス役となり、奇抜な隣人もおり、サウナに松茸等と楽しくする。森に暮らすタイ人労働者達が翁の窮地を救う場面は今日的でありつつも、その佇まいがもののけ姫の木霊のようで和む。総じて他のキャラクターたちもみんな良くて、隣人とのくだりはすごく笑いを誘い、ソフィアのお母さんも素敵な人であった。サウナでは隣の人がひとりごとのようにアドバイスを授けたり、フィンランドらしく、自然も美しい。フィンランド流の幸せを見せられ、静かで優しく、思わず涙が出る人もあろう。最後はうまくいきすぎかもしれないが、とても幸せな気持ちにさせてくれる作品となっている。