ポテトエッセイ第3話

ジャガイモの形【ジャガイモ博物館】
 

 ある日、マメを研究している友人から、
 『ジャガイモでは、どんな形がいいんですか』
との質問を受けたことがあります。
 最近は価値観が多様化してますので、その質問の意味がすぐには判りませんでした。
 ミロのビーナスのように、人びとから好かれそうな、バランスのよいものについて知りたいのか、チップスやフライド・ボテト製造業者とか家庭の主婦が求めている加工しやすいものに関心があるのか、少し戸惑ったのです。
 とりあえず、研究者仲間なら後者であろうと、加工のしやすさについて答えました。フライド・ポテトでは、それをコップに立てたとき中に埋まらないほどの長さが必要です。同じフライド・ポテトでも皮つきのナチュラルカットとか、チップスでは、それほど大きなものは必要ではなく、形も球のほうががいいのです。そして、どちらも目や尻のくぼみの浅いほうがロスが少なくていいのです。
 主婦相手の生食用では、形が球のものが好まれるようです。昔、市場を代弁してか、まん丸で、白いイモを開発して欲しい、という声をときどき聞かされました。
 しかし、調理用に便利な形としては球が最上であるか疑問に思っていました。手に持って皮を剥くときは、卵形のほうが楽かもしれません。特にピーラーを使うときは卵形が便利でしょう。ジャガイモ自体からみても、イモは塊茎と言って、茎が太ったものですから球より長めが自然体です。
 ところで、友人の質問を美学の面から答えるとしらどうだったのでしょうか。
 昔から、秋田美人は、「瓜実顔、すがすがしい目、濃い眉、鼻筋が通って口が小さく、透き通るような白い肌」と言われ、また、顔のランクとして、「一瓜実に、二丸顔、三平顔、四長顔、五まで下がった馬面顔」というのも聞いたことがあります。
 人の顔の美醜は時代によって変わりますが、今日では卵形を望ましいとしている人が多いのではないでしょうか。形にはバランスというものがあり、古代ギリシャ以来黄金比(1対1.62)が最も調和がとれていて美しいとされています。
形のいいのは、概して機能的にも秀れているものが多いのです。店頭で眺めても美しく、手にして皮むきにも楽な卵形が、今もこれからも、球より好まれるのではないでしょうか。その卵の形でも、やや尖った方と丸みのある方とありますが、冷蔵庫に保管するとき貴方はどちらを上にしていますか。卵の丸みのある方には『気室』と呼ばれる空洞があり、卵はここに空気をためて呼吸をしていますので、尖がった方を下にしておくのがいい。

  表 ジャガイモの形 (%)


 
長さ
A
 

B
 
厚さC
 
A/C

 
形状

 
メークイン 50 27 23 2.17
ホッカイコガネ
トヨシロ
47
41
30
34
23
25
2.04
1.64

紅  丸 41 33 26 1.58
ワセシロ 41 34 25 1.64 偏球
農林1号 38 35 27 1.41 偏球
コナフブキ 39 34 27 1.44 偏球
男爵薯 38 34 28 1.36
デジマ 37 35 28 1.32
注) 新潟大 伊藤に加筆した。
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