ポテトエッセイ第5話
ジャガイモの品種育成に従事していたころ、夏の朝一番の仕事は、品種改良中のイモ畑めぐり(御回診)と決っていました。 ある日、庁舎から一番遠くの畑まで来たところ、異常事態を直感しました。畑の一角が鳴門の渦潮を連想させるように乱れているのです。茎が倒され、抜かれ、新ジャガが飛散しているのです。
野良犬軍団の悪ふざけだろう、と思いながら近寄ってみてさらに驚きました。なんと男性用パンツも捨てられているのです。 じっくり検証してみたところ、優れたジャガイモの種を求めて、私どもが品種改良中の畑に入った泥棒の仕業と判明しました。 それまで近所の主婦が、朝食のワカメ汁などのみそ汁用新ジャガを求めて、さぐり掘りに来たこともありました。しかし、その日のものは有望な系統を求めての本格的侵入と見うけられました。
「盗まれるほど優れたイモをつくろう」、と頑張ってきた効果がでた?のです。喜んでいいのかもしれません。しかし、何故パンツを脱ぎ捨てる必要があったのでしょうか。 早速仲間と論議した結果、次の結論に達しました。 2枚重ねてはいてきて仕事にかかり、汚れた外側の1枚を捨てて帰ったものであろう、と。
<書き遅れて申しわけありませんが、アメリカではズボンをパンツと言うそうです。>