ポテトエッセイ第29話

一味同心【ジャガイモ博物館】

 昭和62年ゴッホの絵「ひまわり」を安田火災が約53億円で落札し、話題になったことがありました。翌63年12月には、オランダ東部の都市オッテレローの国立クレラー・ミュラー美術館に何者かが侵入し、ゴッホの絵「ジャガイモを食べる人たち」や「赤いひまわり」など計3点(合計数千万ドル相当)を持ち去ったそうです。
 「ジャガイモを食べる人たち」は、「ひまわり」に匹敵する価値があり、その行方が心配です。この絵は、つつましい食卓に向かった光景を描いた油絵3連作のひとつで、ゴッホ初期の傑作です。1日の仕事を終え帽子をかぶったままのまずしい農民が、ランプの下で1つの皿に盛ったジャガイモを食べている風景、つまり、いわゆる「同じ釜の飯を食った仲」を描いたものです。 飯場の一緒の部屋で過ごしたり、学生寮で袋入りポテトチップスをいっしょに食べている「イモダチ」を描いたとも言えます。

VINCENT VAN GOGH『aardappeleters』
 「イモダチ」はパリッとあっさりして、薄っぺらい仲を指すと言う話もありますが。「食べられることの有難さ」を知らない世代では、おイモよりも、手づかみで食べるチップスの中に、共通の心が育っているのでしょう。西洋でもナイフやフォークは、昔からあった訳ではありません。大皿から直接手でつかんで食事をする習慣は各地にあります。国、時代、文明が違っても、一味同心は心が通じあいます。 仏語アミ・シャネルは、「骨肉の友」、「血のつながった、親しい仲」のことで、英語のコンパニオンは「仲間」の意味です。原義は「ひとつのパンを食べあう人達」で11世紀末にできた言葉です。戸塚文子さんもアフリカ中部の原住民の間に、「一つの皿で、手と手を交えた仲」という表現のあることを見つけたと書いていました。
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