ポテトエッセイ第35話 July,1999手直し
コロッケやカレーライスは余りにも身近でして、人によっては軽蔑のまなざしを捧げる方もいるかも知れませんが、共に奥深く、つきあうと面白いもののようです。
コロッケはフランス語croquetteに由来し、カリカリすると言う意味があります。わが国へは幕末、明治の文明開化期に伝わり、普及し始めたのは明治30年ころと言われています。
当時のものは、ひき肉とジャガイモ、タマネギだでけで牛乳は使わないジャガイモコロッケでした。味付けも塩、こしょう、酒と醤油で、ソースは使いませんでした。大正9年に東京丸の内の帝国劇場で、女優劇10周年の記念興行として益田太郎冠者作の笑劇『ドッチャダンネ』が上演されましたが、その中で《今日もコロッケ、明日もコロッケ、これじゃ年がら年中、コロッケ・・・》の唄が歌われ、コロッケがハイカラな家庭料理として定着し、流行しました。太郎冠者さんは三井物産創始者の息子で、男爵の肩書のある人。このため、じゃがいもコロッケではなく、フランス流のクリームコロッケではなかったのか、とも言われています。または、同じころ銀座のレストラン「煉瓦亭」で日本初のジャガイモコロッケが登場していることからこのレストランのものだつたのかも。大正時代の不況のころ流行したのは、安さと、おいしいさを兼ねたものだからジャガイモを使ったものであったでしょう。
昭和初期の東京では、コロッケは肉屋で牛、豚のくず肉やひき肉、鶏肉も入れたりして売るものが惣菜として一般的で、美味しかった。 肉屋で、ペチャカツでも、カツを買えるのは少なく、普通はコロッケを買ってくる主婦や使いの子供が多かったのです。肉屋のおばさんが引出しに入れたパン粉で握ってくれたものや奥さん特製のものを、うまいうまいと食べた経験がおありのことでしょう。
昭和61年の国民栄養調査によりますと、家庭でよく利用する夕食の惣菜の第1位は、コロッケでした。また、デパート、スーパーマーケットなどの惣菜屋で売っている惣菜のベスト5は、1位がコロッケ、以下、てんぷら、ギョウザ、焼鳥、フライであり、ファーストフードのコロッケは、十代の若者などにハンバーガー同様の人気があるようです。
平成のコロッケブームは、神戸のデリカテッセン(洋風惣菜)によって火がつけられたと言われています。本州大手の百貨店に冷凍コロッケを供給しているのがサンマルコ食品販売(札幌市藤井幸男社長)で、札幌にある2工場の55万食をはじめ長野にも工場をもち、その他にも協力工場(神奈川県厚木市のマルエムフーズなど)をもっています。
原料としては、北海道は羊蹄山麓の有機栽培ジャガイモ、北見の玉葱、柔らかいことで知られる十勝牛などを使用ています。
まともな店のものを食べてみたいという方に1、2軒紹介してみましょう。例えば、東京・原宿の竹下通りにはクレープやハンバーガー、アイスクリームの店に混じって「国際コロッケ堂」があります。ここでは、『男爵薯』品種を100パーセント使いヘルシーを売りものにしています。高いのは、東京・根岸のかに屋の一人前1,700円のカニクリームコロッケでしょう。 東京都北区西ケ原のJR駒込駅から坂を下っていくと霜降橋交差点の近くにある大正時代創業の「本多」、東京都台東区鳥越のおかず横町内にある「松尾肉店」、銀座にある下町の味「チョウシ」も歴史がある。
大阪市では中央区に専門店の「HOT POTATO」があり、北海道産の『男爵薯』とソーセージ、イカ、エビなど15種類を組み合わせた「面白コロッケ」がOLたちの人気を呼んでいるそうです。コンビニエンスストアのローソン・ジャパンでも「男爵コロッケ」を、おいしいと言われるお肉屋さんのコロッケがいつでも食べられる、と売りだしており、おやつや温かい惣菜として人気があるそうです。兵庫県芦屋市のJR駅前の竹園旅館の精肉店では「メークイン」を原料として1日2,000個、日によっては5,000個を売っているそうです。
日本冷凍食品協会の調査によると、この10年間の冷凍食品の生産量は倍増し、昭和62年で84万トンを超えるまでになっています。そのうちコロッケの占める割合は13パーセントの約11万トン。2位のハンバーグ2.6万トンを大きく引き離しています。このコロッケにはジャガイモをベースにしたものとクリーム系の2種類がありますが、ポテトコロッケがその4分の3を占めています。<以上、平成3年記>
○減農薬ポテトコロッケ
ホクレン食品部では、一次加工品から調理加工品まで幅広い商品構成を目指しています。その中から順調に販売を伸ばしている「滅農薬ポテトコロッケ」を紹介します。
原料には、十勝の芽室町で農林水産省ガイドラインに沿って滅農薬栽培したジャガイモ(品種名:マチルダ)を使用して作っているため、おいしいだけでなく、子供から大人まで安心して食べられるコロッケです。ジャガイモの食感を残し粗びきに仕上げることにこだわりながら、手作り風のおいしさを家庭で手軽に楽しめるようにするにはどうすればよいのかという点に力を入れ、開発されたもの。
今ではその点が受けて評判も上々です。「北海道から、おいしさと安心、安全を食卓へ」をキャッチフレーズに販売しています。種類は原料のジャガイモのおいしさそのままを生かした「ポテト」、道産牛肉を使用した「牛肉入り」、道産のたまねぎ、にんじん、コーンを使用した「野菜入り」の3種類。
1999年春からデザインを一新し、ざらに、北見の滅農薬たまねぎを使用した「玉ねぎコロッケ」、十勝の無農薬南瓜を使用した「南瓜コロッケ」、そして北海道産チーズをふんだんに使った「チーズフォンデュコロッケ」の3品も新しく伸問に加わり、コロッケのシリーズ化を目指しています。今後も、道内のホクレンショップやエーコープ、全国の生協や夕食宅配ルートを中心に販売が展開されています。<1999>
○ 大学コロッケ
札幌商工会議所の研究から、1997年「大学 男爵 コロッケ」が誕生した。
札商の「バイオ&食品工業研究会」の北大教授や民間企業の日本冷食(本社・網走管内津別町)が開発した冷凍食品で、電子レンジで加熱して食べるもの。
開発後道内と東京のホテルなどで業務用として販売してきたが、1998年からは札幌市内のホクレンショップ発寒店、デパートの丸井今井本店、札幌西武などで、6個(210g)入り250円でも販売することになった。<1998>
○ 登別コロッケ
登別温泉のホテルゆもと登別(票林知徳社長)は、温泉の湯てふかした「温泉コロッケ」と自家製「コロッケソース」を販売している。
温泉コロッケは、北海道真狩村産ジャガイモを使用。ゆでると水っぱくなるため、1年半かけて、温泉のお湯でふかす方法を考え、1998年秋から同ホテル宿泊客の料理に提供を始めた。タマネギやひき肉、パン粉はすべて北海道産品を使用している。コロッケは1999年3月から予約販売を開始。前日までに注文を受け、当日午前中に揚げたてを手渡すという。価格は1個100円(税別)。
コロッケに合うソースも開発、1999年1月下旬から販売している。リンゴ酢を多く含み、おかみの栗林由喜恵さんは「ドレッシングとしても使えます」と言う。250ml入り350円(同)。1998年秋と1999年2月に札幌のデパートで開かれた北海道物産展に出品して好評を呼び、1999年5月上旬に開かれる同展にも出品予定と言う。同ホテル電話0143-84-2277。 北海道新聞1999年4月付外
〇ポテトレストラン じゃがいもHOUSE
ここで、手作りで長い間こだわり続けた真打ちに御登場願いましょう。
場所は、札幌市中央区南3条西4丁目(狸小路アーケード内)にあります。TEL011-219-2121。メニューとしては、コロッケ、じゃがいももち、グラタン、サラダ、コーヒー、ワイン、ビールなど。1999年4月某日のメニューでは、
じゃがいもHOUSEカレー 780円、コロッケいっぱいカレー 880円、ミラノ風ポークカツレツ、牛肉和風ソース、農夫のハンバーグ、ポテト入りドリア..といった具合。店長の有木 茂さんが頑張っています。
肝心のコロッケ原料は日本一の産地十勝の「ホッカイコガネ」と「メークイン」とし毎日1〜3tを使っている。貯蔵庫を持たないので一部は札幌中央市場から調達。通常は、卵同様、1個の価格が0.何円の競争下にあるため「男爵薯」のスソ物などと言われるサイズの小さめのものを使っており、しかも冷凍されて流通していますが、ここは、その日つくったものを揚げてだしています。
これに20年以上こだわり続けているのが社長の由野幹雄さん。
本社・キッチンは札幌市中央区南29条西10丁目6−10。(TEL 011-512-5006。FAX 011-531-2491)ここ 株式会社じゃがいもはうす では、手づくり生コロッケの全国発送もしています。航空送料、税金は別となりますが、1999年4月現在。ポテト&ミート 6個入り780円、じゃがバター 同、プレーンポテト 同、ポテト&チーズ 960円...
これを受けた方は170〜180℃のたっぷりの油で1〜2づつ揚げていただくことになります。<1999>