ポテトエッセイ第36話

ベークド・ポテト【ジャガイモ博物館】

 ジャガイモの持っている栄養的価値、特に豊富なビタミン類をそのまま活かすには、ベークト・ポテトが一番でしょう。品種としては風味がよく、水っぽくないものがいい。
 皮つきのままオープンで焼いたベークド・ポテトがお奨め品ですが、皮をつけたままゆでて熱いうちに皮をむいてスライスし、酢と油で和えたもの(フレンチ・サラダ)とか、ゆでただけのものは、山と積まれても、食べ過ぎる心配は少ないでしょう。食べなくなったとき自然に栄養がとれているのです。

 フレンチ・フライはアメリカでは日本の何倍も食べられているから、日本人よりメタボになり難い遺伝子を持ってる人であっても、摂取を抑える人がいる。映画にも食べ過ぎに対する忠告が出てくるほどです。たとえば、小説『逃げるアヒル』が原作の1986年アメリカ映画「コブラ」に出てきました。これはロサンゼルス市警のすご腕刑事コブラ(シルヴスター・スタローン)が、ナイト・スラッシャーが率いて連続無差別殺人を引き起こしている凶悪なテロ集団に闘いを挑む映画です。テレビ用日本語吹き替えに2種あり、私が見たのはカルビー等がスポンサーに並んでいたTBS版(火曜ロードショ−、主役の声は羽佐間道夫)でした。あるモデル女を安全な所に移すためにモンレモスという町のモーテルに立ち寄ります。そこで山盛りのフレンチフライに真っ赤なトマトケチャップをかけて食べるシーンがあって、コブラが、「フレンチフライがおぼれている。ほどほどにしておけよ、フレンチ・フライだ。体によくない」と、忠告します。もちろん、犯人に内通している同行婦警が車の無線を使わず、公衆電話から移送先・現在地を連絡していることも、しっかり目で確認しながら、...
 多くのスタローンファンはこの映画で彼が乗っていて、後日盗難にあってオークションにかけられた1950年型マーキュリーの改造車に関心をもっていますが、私としてはフレンチフライが好きなアメリカ人の出る映画で、これにふれた会話を伴うものを探していたが、ようやく出会うことができ、イモにこだわる私はひとりほくそ笑むことができた。
     この映画では、フレンチ・フライをチョコレートやアイスクリーム並みに扱っていますが、わが国では、心配するほど食べていません。これは、パートナーである肉の消費が少ないこともありますが、レストランではコックさんが原料イモの還元糖を考えることなく、平気で「メークイン」などを使って、まずそうな褐色に揚げることが多く、また、ビーフ・ステーキやポーク・ソティーの横にお義理で3片位付ける程度であり、残念なことです。
コブラは健康にかなりの関心があって、フレンチフライにトマトケチャップをかけるシーンの前にも、「砂糖をやめて、レーズン、魚、ライスを食べれよ」とか、「りんごは?(食べないかい)、体にいいぜ」などのセリフも出てきてました。

(写真は『ムサマル』)  フレンチ・フライと言うから、フランスが発祥かと思われがちですが、ベルギーのロドルフ・ド・ワルサージュという名の1876年生まれの紳士がベルギー東部のリエージュという所の小さな店で買って、帰り途に食べた、と書いています。これがフランス北部、特にリール地方に広がり、ついで世界に知られて行ったようです。今日では、特にアメリカで好まれ、食べ過ぎを忠告される人も出てくるほどになりました。


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