ジャガイモ品種「エゾアカリ」(EZOAKARI)

(1)来 歴
 北海道農業試験場においてジャガイモシストセンチュウに抵抗性の食用品種育成を目標に、昭和50年東ドイツの黄肉品種「ツニカ」を母とし、ソ連の低澱粉だが早生の「Priekulskii Ranny」を父として交配を行った組合せから選抜した系統です。
名の由来は、育成地北海道に線虫被害から守る希望を示す曙光「アカリ」を組合せたもの。
 地方番号は「北海66号」、農林登録番号は「農林30号」です。「コスモ男爵」の名でも売られています。十勝地方(大樹)で若干栽培されています。
(2)地上部特 性
 そう性はやや開帳型で、茎長は「男爵薯」と「農林1号」の中間で、「キタアカリ」よりやや高く、草型はだらしない。茎は緑色でやや細く、茎翼は直です。分枝数は少ないが茎数はやや多い。幼芽には僅かに赤紫色の着色があります。萌芽時の葉色は淡緑、小葉の形、大きさとも「男爵薯」に類似していますが、色調はやや淡い。小葉の着生粗密は中に属します。
 萌芽、初期生育とも「男爵薯」より早く、「ワセシロ」に近い。茎葉枯凋期は「男爵薯」より3〜5日遅い早生種です。
 花色は白で、大きさは中、花数は少なく、少肥とか乾燥条件に遭うと開花しないことが多い。花粉量は多く、稀に自然結果を見ます。
 疫病抵抗性遺伝子型はrで、疫病抵抗性はありません。疫病菌による塊茎腐敗に対する抵抗性は中、粉状そうか病抵抗性は中ないしやや強、青枯病には弱、塊茎の軟腐病には「男爵薯」よりやや弱く、茎葉の軟腐病は「男爵薯」並の発生がみられます。
 葉巻病などのウイルス病の発生は一般品種並で、抵抗性はありません。葉巻症状は強く現れ、Yウイルス感染翌年の症状はれん葉症状が多い。
ジャガイモシストセンチュウの寄生型 Ro 1 に抵抗性で、抵抗性遺伝子H1を持っています。
(3)地下部特性
 塊茎は球形で、皮色は白黄色、表皮はやや粗です。目の深さ、目の数とも中、肉色は淡黄色で肉質は粘質です。いも数は「男爵薯」より多く、個数型で、塊茎はやや小さいものが多く、着生は密で、ふく枝は短い。
塊茎の肥大速度は並であるが、澱粉価は肥大初期には「男爵薯」より低いが、茎葉黄変期にはほほ同じになる。上いも数は「男爵薯」より多く、上いも平均一個重や大きさ別重量割合とも同程度です。中いも以上収量は「男爵薯」より2、3割多収です。
 施肥量に対する収量反応は「男爵薯」に似て、多肥で澱粉価が低下します。密植効果は小さいが、上いも平均一個重は小さくなる傾向にあります。
 塊茎の中心空洞、褐色心腐は発生しません。
 塊茎の休眠期間は「男爵薯」より短く、「農林1号」より長く、中です。
(4)調理加工特性
 水煮塊茎の肉質は粘質で、煮くずれ程度は微なので、煮物などの調理に適します。舌ざわりはやや滑です。水煮黒変は「男爵薯」よりやや多く、食味は中です。肉色は淡黄です。
(5)栽培上の注意
 施肥量、栽植密度などの栽培管理は「男爵薯」に準じていいが、密植では大きさ中以下のいも重割合を増加し、必ずしも経済収量の増加にはなりませんので10a当り3,500〜4,000株でよい。
 茎が細く、倒伏しやすいので、茎葉の軟腐病発生地帯では防除対策が必要です。
 萌芽が「男爵薯」より早いので、土中貯蔵種いもの取り出しを遅らせないよう注意する必要があり、施設貯蔵が望ましい。
疫病抵抗性は「男爵薯」、「メークイン」並に弱く、すべてのレースに侵されるので、防除対策が必要です。


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