暖地向き品種 普 賢 丸(農林39号)

(1)来 歴
  長崎県総合農林試験場愛野馬鈴薯支場において、1989年S. andigena由来のジャガイモシストセンチュウ抵抗性をもつ「Atlantic」(北海道の奨励品種アトランチック)を母、国際バレイショセンター(CIP)から導入した種間交雑由来の系統「P−7」を父として交配し、選抜育成後平成9年に発表されたもの。1992年に発生が確認されたジャガイモシストセンチュウに抵抗性(H1)を持つ暖地向きとしては最初の品種です。
 品種名の由来は、育成地の圃場から展望できる普賢岳に因み、丸いいもの形を表現したといわれます。農林登録番号は、「ばれいしょ農林39号」です。
(2)地上部特性
 茎長は「ニシユタカ」より低い。茎数は春作で減る「ニシユタカ」よりはやや多く、秋作では「ニシユタカ」のほうが多めになります。出芽は早く、地上部の生長や芋の肥大が早いのが特徴ですが、最終収量では「ニシユタカ」より劣ります。
  分枝数は「デジマ」より少なく、茎の基部がわずかに紫を帯び、葉柄は長い。草姿は中間〜やや開張。着蕾初期に落蕾するので花を見るのは稀になります。
茎葉の熟性は「デジマ」、「ニシユタカ」より早く、特に春作では早い。
(3)地下部特性
皮色、肉色ともに鮮やかな黄色で濃い。いもの形は、名のように「デジマ」より球に近く球形〜短楕円形で全体的に目が浅くて外観が良く、皮はむきやすく歩留まりが高い。
食味に優れており、肉質はやや粘質で、煮崩れはデジマなみ。
グラタン、ポテトピザ、粉吹きいも、ポテトサラダ(マッシュ)等和風、洋風、煮物、サラダなどに適しますが、還元糖が多く、ポテトチップスには適さない。小いもを下茹でして串揚げするには使えます。剥皮後の酵素による褐変や調理後の黒変がほとんどなく、見た目に美しい料理ができます。
(4)栽培上の注意
春作ではストロン基部から腐敗しやすいので、そうか病の発生を考慮しつつ、石灰資材や完熟堆肥の施用を心がけるのがよい。早掘りでよい結果が期待できますが、収穫が遅れると粗皮になりやすく、春作では高温障害がでやすい。
葉巻病抵抗性は強、そうか病には「デジマ」より強いが中、粉状そうか病にはやや弱い。青枯病には弱いので、秋作では早植えしないようにします。強風による茎葉の損傷を受けやすく軟腐病が発生しやすいので注意します。


左:「普賢丸」の花。 右:「普賢丸」の塊茎。
↑ この写真は長崎県総合農林試験場愛野馬鈴薯支場資料によります


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