平成9年の春、北海道のジャガイモ宣伝のために品種を多数並べたポスターが十勝から送られてきた。
その中のコピーで、ポテト、パパスなどとともに「カルトフン」と言うのがこだわり癖の目にとまりました。これは何語かと気になって聞いてみたところドイツ語を電話で聞いて書いたとのこと。
発音より文字重視のわが国にあっても、かって、新聞でリーガン大統領と書いていたのが、途中で発音に近いレーガン大統領になったり、ホワイト・シャツがより発音の近いワイシャツが一般化していることがあります。外国語を無理にカタカナ日本語で表示しても、いっぽうが絶対間違いだとは言い難い面もありますが、できるだけ、ネイテブに近いほうが良いに違いありません。
ドイツ語でジャガイモは、紳士諸氏の想像とは違って、何故か女性名詞で、Kartoffelと書かれます。発音はカルタッファルに近いが、カルトッフェルと
書かれていることが多い。Kartoffelnカルトッフェルン もある。
これらは古いイタリア語のtartufo(あるいはtartufol)からきたTartuffel(uの上に点が二つ横に並ぶウムラウトがある)が変わったものです。
このドイツ語に近いものでは、デンマーク語のkartoffelやルーマニア語のcartof(oの上に′がつく)があり、ロシヤ語картофепъ、картошка(どちらもоの上に′が要ります)カルトーシカも近い。
もうひとつのドイツ語Erdapfel(エールトアップェル,こちらはリンゴと同じく男性名詞)は隣国オランダのaardappel(アーダポル、アールドアッペル)の流れを汲み、「土中のリンゴ」の意味を持っています。フランス語もはっきりpomme de terre(ポム・ド・テール、ポンム・ドゥ・テール)土中のリンゴと表現しています。
私どもが広く使っている米英語のポテトは発音からはパティトウと書いたほうがいいと思いますが、さかのぼればインデオのpapaに由来し、スペイン人がヨーロッパこれを持ち込み、スペイン語のpatata(パタタ、パタータ)又はpapa(パパ)、イタリヤ語のpatata(パタータ)とか、ポルトガル語のbatata(バタータ)、トルコのpotatesやフィリピンのpatatasも同系列です。ただし、後でつくったエスペラント語のpatatoやbatatoはサツマイモのことであり、ジャガイモは土地tero+リンゴpomeからterpomoとなっております。なお、アイマラ語ではchokeとかamkaとかいいますが、後者は睾丸の意味でもあり、その形から判りましょう。
ついでにアジアやその近くの発音も参考までに書いておきますと、脈絡は不明ですが、
中国で馬鈴薯ma ling shu*(マーリンシュ、マーリンシュー)、土豆tudou(トゥドウェ、口語的に広く使われる)、洋山芋iangseu、洋薯yan shu、洋芋yang yu、山葯蛋 (shanyaodanシャンイャォダン) 、番薯fan shu、
洋は外国の意。片をつけるとチップス。
チベット語p'an su(番薯から)、rgya gro、
朝鮮語kam-tsa(ガムザ 、カンジャ )、
ベトナムkhoai tay、
インドネシアkentang、
ジャワ語kantang、kentang
フィリピン語papas(ペルー語から)、patatas
タイman-farang、
ビルマar-lu、
スリランカala、
インドalu、
イランsib
アラビア語 バタータ
現代ギリシャ語 パタタ
マレーシアubi-beng-gala、
マライ語artapel(オランダ語のaardappelより)
南アフリカ共和国mazamban,aardappel
となっています。(*北海道東部にある中標津町でジャガイモを大切に育てて売っているグループ「マリンスクラブ」
はマリンこと海とは関係なく、この語に由来しています)
ジャガイモの学名はSolanum tuberosum ソーラーヌム・トゥーベロースム、ソラナム・ツベローサム 。
「Solanum」は「慰め、安静」を意味するラテン語「solamen」に由来花言葉は「博愛」「恵み」「貧困」「生計」。5月17日の誕生花はジャガイモです。