ポテトチップ用のきたひめ

(1)来 歴
 低温下で長期貯蔵が可能な加工食品用(ポテトチップ用)品種の育成を目標に、ホクレン農業協同組合連合会農業総合研究所(以下、「ホクレン」とする)と農林水産省北海道農業試験場ばれいしょ育種研究室(以下、「北農試」とする)との共同研究により育成された品種です。
 平成3年に北農試で、早生・良質(難糖化性)の「島系560号」(ホワイトフライヤー)を母、中生・大粒・多収の「島系558号」(さやか)を父として人工交配された。 翌年以降ホクレンにてポテトチップ用として選抜、育成を行い、平成10〜12年に同系統に「P982」の系統名を付し、北海道立十勝農試などで、生産力検定試験・特性検定試験などを行う外、平成ll〜12年に道内各地の現地試験に供試し、13年北海道の奨励品種に決定された。すべての権利がホクレンにあることがせ確認されているもの。
名称は北海道で大切に育ったおいも、の意味でつけられました。

(2)地上部特性
 そう性はやや開張し、茎長は[トコシロ」並です。花色は白(花裏に紫)です。
 枯凋期は「トヨシロ」や「ノースチップ」より約1週間遅く、「農林1号」より10日ほど早い中生です。
PVY-O、PVY-Tの接種葉は局部斑点又は脈えそを現す。PVY-Tの症状はやや軽いが、ウイルスは上位葉にまで移行し、軽い脈えそないしモザイクを出す。  

(3)地下部特性
 塊茎は球〜偏球形で、皮色は「トヨシロ」並の黄白、表皮はやや滑です。目の数はやや多で、深さは「トヨシロ」より深い"やや浅い"だが、土落ちはよい。肉色は白です。
 いも数は「トヨシロ」より少なめでサイズは大きめ、いも収量は「トョシロ」並ないしやや多い。でん粉価は「トヨシロ」並ないしやや低い。いも着きは若干深く、ストロン離れは少し悪い。
 「トヨシロ」、「ノースチップ」及び「スノーデン」とは違って、ジャガイモシストセンチュウに抵抗性があります。  疫病圃場抵抗性、ジャガイモYモザイク抵抗性及びそうか病抵抗性は弱、塊茎腐敗は「トヨシロ」より少なめの中である。
 褐色心腐・二次生長の発生はどちらも「トヨシロ」並です。中心空洞は「トヨシロ」並の微発生であるが、大きいので、全体の比率では少し多い。ポテトグリコアルカロイドは「トヨシロ」より若干多いが、「メークイン」よりかなり低い。
 休眠期間はやや短い。  

(4)調理・加工特性
 6℃の貯蔵で、しかもリコンディショニングを行わなくても、高温貯蔵や前処理を行う従来品とほぼ同等の品質を5月まで得ることができるため、高温貯蔵による原料の損耗を防ぐことができる。
 なお、この品種は中晩生の「農林1号」及び、中生の「トヨシロ」の一部を置き換え、高品質原料の安定供給に寄与することをねらうもの。
 

(5)栽培上の注意
 (1)大いもに中心空洞が発生することがあるので、多肥や疎植を避ける。
 (2)疫病には概して弱いので、防除を励行する。
(3)芋の肥大は遅いので、採種栽培などで茎葉を早く枯らすと減収する。
(4)窒素を増すと増収するが、実際には、あまり多肥したり、あまり疎植しないほうがよい。(40cmで大粒化するが、芋数は増えず減収しました。(平成11年ホクレン))


上:「きたひめ」の花と塊茎

平成24年度民間部門農林水産研究開発功績者表彰で、【社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞】(業 績 ポテトチップス用ばれいしょ品種「きたひめ」の育成)を受賞しました。育成グループ代表:安田 慎一。


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