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平成10年(1998)に北海道立北見農業試験場にて人工交配を行ったもの。 母親はでん粉品質がばれいしょでん粉固有用途に適し、多収な「紅丸」で、父親は近縁野生種「Solanum chacoence」由来の高でん粉価で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ中晩生系統「根育39号」です。平成22年(2010)に北海道の優良品種に採用されました。
形態的特性:
草姿はやや直立で、葉の形は「紅丸」に似ており、倒伏は少ない。花は白色で、花数は「コナフブキ」より少なく、果実の着生はほとんどない。茎長は「コナフブキ」なみですが、年によって「コナフブキ」より短いことがあります。複葉の大きさは「コナフブキ」より大きく、茎数は「コナフブキ」より多く、ストロン(匐(ふく)枝)の長さは短く、いも着生は浅い。塊茎の形は球で、皮色は紫色です。肉色は白色で紫色の斑が入っていますが、でん粉の白度および品質に悪影響はありません。
生態的特性:
休眠期間は「コナフブキ」より短く、植付け後の萌芽および初期生育は「コナフブキ」より早い。北見農試における4カ年の試験では、枯ちょう期(茎葉が自然に枯れた日)はほぼ「コナフブキ」なみで、熟期は中晩生です。いも数は「コナフブキ」より多いが、小粒です。いもの収量は「コナフブキ」よりやや多く、でん粉含有率(でん粉価)は「コナフブキ」よりやや低くでん粉収量は「コナフブキ」なみです。
病害虫抵抗性:
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持っています。疫病およびそうか病には「コナフブキ」と同様に弱い。Yウイルス抵抗性は「コナフブキ」の“強”に対して「紅丸」と同様の“弱”で、病徴は明瞭なれん葉モザイク症状を示すことが多い。
褐色心腐は「コナフブキ」並に少なく、中心空洞、二次生長は「コナフブキ」より少ない。打撲黒変耐性は「コナフブキ」なみにやや弱い。
品質特性:
でん粉粒子の大きさは「紅丸」より小さく、「コナフブキ」程度。離水率(注1)およびリン含量(注2)は「紅丸」並で、「コナフブキ」より低い。灰分含量は「コナフブキ」より低く、「紅丸」並である。ゲル物性および糊化特性はほぼ「紅丸」なみです。以上のことから「コナユキ」のでん粉品質は「紅丸」に近い特性を持ち、固有用途全般に適すると考えられます。固有用途のうち、特に蒲鉾等の水産練り製品に用いた場合、「コナフブキ」より弾力性が高く貯蔵性も優れていました。
(注1) 離水率は、塩水中で糊化させたでん粉ゲルを冷蔵貯蔵するときに水が分離する割合を示す。でん粉製品の貯蔵性の指標で、値が低いほど良い。また離水率が低くなると、固化する温度が低下し、でん粉製品の弾力性が向上するなど、他の品質も向上します。
(注2) リン含量は、でん粉に結合しているリンの含量で、糊化した時の糊の粘りの強さに関係しており、リン含量が高いと粘りが強くなる。粘りが強いことは、ばれいしょでん粉を他のでん粉と分ける重要な性質ですが、強すぎると安定性が低下するため、リン含量は高すぎない方がよい。