ジャガイモ品種「ムサマル」(MUSAMARU)

(1)来 歴
 昭和55年道立根釧農試において、線虫抵抗性加工用品種を目標に、「ツニカ」を母、「根育20号」を父として交配後選抜を図り、平成4年奨励品種に決まったものです。名の由来は、育成地中標津町にそびえる無佐岳と、形が丸みを帯びていることを表しています。  地方番号は「根育22号」、登録番号は「農林32号」です。
(2)地上部特性
枯凋期は「ホッカイコガネ」並ないし僅かに遅い中晩生に属します。初期生育は「ホッカイコガネ」より優れています。草型はやや開張で、茎長は「農林1号」よりかなり長い。茎の太さは中で、分枝数は「ホッカイコガネ」より多い。小葉の大きさは「ホッカイコガネ」よりやや小さく、中に属します。
 花の数は「ホッカイコガネ」並で、「農林1号」より少なく、花は赤紫色で、「ホッカイコガネ」とは、花弁の先が白くないことと、花が大きいことで区別できます。結果は稀れで、この点でも区別が容易です。
 ジャガイモシストセンチュウのパソタイプRo1に対して抵抗性です(H1)。
 疫病抵抗性主働遺伝子を持っていませんが(r)、疫病による塊茎腐敗は「ホッカイコガネ」より少ない。青枯病に対する抵抗性は「男爵薯」並の弱です。
(3)地下部特性
 早期肥大性は「ホッカイコガネ」より速く、「農林1号」並の中です。
 塊茎は卵形で、太った感じを与えます。皮色は黄褐で、表皮は「ホッカイコガネ」に比べやや粗です。
 目の数は中で、深さは「農林1号」よりやや浅く、「ホッカイコガネ」より少し深めのやや浅に属します。肉色は淡黄です。
 いも数はやや少ないが、いもは大きく、収量は「ホッカイコガネ」より多収です。澱粉価も「ホッカイコガネ」より高い。用途は加工用ですが、澱粉収量では「農林1号」よりも優っております。
 褐色心腐及び中心空洞の発生は、「ホッイコガネ」より多く、二次生長の発生は「ホッカイコガネ」並のごく微で、裂開はみられません。
 そうか病には「コナフブキ」程度で、「ホッカイコガネ」並〜やや強く、粉状そうか病には「ホッカイコガネ」より弱い。Yモザイク病に対しては、PVY-O系統には罹病し、PVY-T系統には抵抗性です。
休眠期間は「ホッカイコガネ」より長い。
(4)調理加工特性
用途は加工食品用(フレンチフライ)です。
 水煮の肉質はやや粉質で、水煮後黒変は微で「ホッカイコガネ」より多い。
食味は、母が「キタアカリ」と同じであり、父はイギリスで美味とされているものから生まれているので、おいしいグループのひとつです。ビタミンCも「キタアカリ」並に高い。
 フレンチフライの褐変程度は「ホッカイコガネ」並の少で、乾湿の程度は澱粉価が高いためやや乾となり、総じて「ホッカイコガネ」並のフレンチフライ加工適性を持っております。
(5)栽培上の注意
褐色心腐の発生がやや多くなりやすいので、乾燥しやすい土地を避け、培土の仕方などに注意します。培土不足では、緑化発生が高くなり出荷歩留りを低下させます。
開花期のころ、頂部葉の基部が淡緑化し、葉の縁が巻くので、採種栽培時のウイルス抜取りを早めに実施し、アブラムシの防除を充分実施するなどの注意が望ましい。
 多肥すると、草丈が伸び、収穫時期が低温とぶつかるようになるので、畑に見合った施肥量にする。


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左:「ムサマル」の花。
右:「ムサマル」の塊茎。「ホッカイコガネ」よりズングリしています。肉は淡黄。

育成従事者:村上紀夫、奥山善直、浅間和夫、入谷正樹、松永浩、千田圭一
文献及び関連Web
村上紀夫、奥山善直、浅間和夫、伊藤平一、入谷正樹、松永 浩、千田圭一: ばれいしょ新品種「ムサマル」の育成について”.北海道立農試集報.66:35-48(1994) (要旨)

ばれいしょ「根育22号」(ムサマル)  (成績概要書)

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター

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