北海道のバスを使った本格的観光は初夏からのことが多く、これに備えて早春には新人ガイドさんの研修が開かれる。基本マナー、地場産業のあらまし、時期別見どころなどについて学習していくわけだが、農作物では、本州で見てきた水稲よりも、北海道に多い変化のある畑作物の解説が求められる。ばれいしょ、北海道ではこう呼ぶことが多い、では地域別の花咲く時期、花の色から品種を区別する方法、花の色と薯の皮に関係があるのかなどについて学習しているようだ。ここで学んで、北海道では何故ジャガイモ、質問ではこう呼ばれる、がたくさんつくられてるか、何故ホコホコして貯蔵性があるのか、実(ベリー)は毒か、などの話に対応できれば一人前となる。ベテランともなれば、赤皮品種「紅丸」の読み方が『コウガン』か『ベニマル』かとか、川田龍吉男爵の詳しい紹介をやってのける。
道内農家でも種いも防疫検査が終了したあとや観楓会などに観光バスを利用する。そんなとき、特に種薯生産農家の入っている観光旅行では、大手の中央バスに、稀に次の歌を歌って驚かす超ベテラン?が昔いたとか。これは北海道の江別市にお住まいの村山 亨さんから送られてきたものでしたが、作詞は、渋谷正五郎さんで、昭和27,8年ころの札幌近郊の農家の集まりとか、種ばれいしょ検査が一段落したときに出かける視察旅行の車中とかで歌われだしたのが始まりらしい。
やがて芽が出るすくすく伸びる
バイラス(ウイルス)残らず抜き取りだ
これが真症それが疑似と
貴方は手を取り教えてくれる
気になる検査もこと無くすんで
ほっと安堵の胸なでる
これも皆の指導のお陰
胸に感謝が込み上げるのよ
今日は楽しいアベックバスで
二人仲良く揺れている
年は取っても新婚気取り
一人者には チト照れるのよ
(若い者にはまだ負けられぬ)
最後の1行は、横浜植物防疫所で長い間種いも検査をやってきた伊藤茂郎さんの記憶によるものです。(1997年刊『海軍と植物検疫』)