ジャガイモ品種「とうや」(農林31号)(TOUYA)

(1)来 歴
 農林水産省北海道農業試験場において、昭和56年にジャガイモシストセンチュウ抵抗性系統「R392-50」を母、Yウイルス抵抗性の種間雑種系統「WB 77025-2」を父として交配し、平成4年(1992)北海道の奨励品種に決定されました。
 地方番号は「北海70号」、農林登録番号「農林31号」。
名称は主産地を期待している道南地方にあり、形が円の洞爺湖にちなんでつけられました。「黄爵」と呼ばれることがあります(JAたんの=北見市の隣)。
 道内の会議では。でん粉価が低く、食味の評価は必ずしも芳しくなかったが梅村室長の巧みな弁舌で、滑らかな舌触りで、でん粉価の少なさを逆手にとって低カロリーでヘルシーなことを強調するとともにシャキシャキサラダなどの調理法の提案するなどして、食味に対する悪評を払拭しました。 平成22年(2010)年の北海道における作付面積は1,204haで、緩やかに増加を続けています。
(2)地上部特性
 分枝は少なく、そう性はやや直立です。茎は太く、緑色ですが基部に赤紫の分布があります。茎長は「男爵薯」よりやや長い。葉色は並(緑)で大きさは大きく、光沢があり、厚くてややでこぼこしています。小葉の着き方はやや疎で、全体としては粗剛な感じがします。
 花色は白で、大きさは中位です。自然結果し、果実はごく大きく、3cm以上のものもあります。
 萌芽、初期生育は「男爵薯」並ですが、茎数が少なく、着葉が疎のため生育不良に見えることがあります。出葉停止期は「男爵薯」より1週間ほど遅いが、茎葉枯凋期は4日ほど早い。萌芽のおくれ、倒伏、多窒素または乾燥後の降雨などが原因の茎葉の二次生長はなく、均一に黄変します。倒伏は少ない。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を2個持っているので(H1H1hh)、この品種の栽培により「キタアカリ」同様、土壌中の線虫密度が低下します。疫病抵抗性遺伝子型はR1です。
ウイルス病株の発生率は少なく、Yウイルスを接種したときの反応は弱く発現します。
 疫病発生後の進行はやや遅く、また生育後半の夏疫病の発生は「男爵薯」並です。
 そうか病、粉状そうか病および塊茎腐敗の抵抗性はありません。
(3)地下部特性
 塊茎形成始期は「男爵薯」より遅いが、その後の肥大は「ワセシロ」同様に早い。早掘り時の大いも比率も「ワセシロ」並です。
 塊茎は球で、目は浅くて少ない。皮色は褐色を帯びた黄色で、表面がやや粗い。肉色は黄です。大いもでも中心空洞は少ない。7月高温乾燥する畑では褐色心腐の発生が多い。
 ふく枝の長さは短〜中、いも着はやや密で深さは中です。ストロンが太いので離れ難い。いもの粒揃いはごく良い。茎数が少ないため、株当りいも数は少なく、平均一個重は「ワセシロ」並に大きい。
 澱粉価は「男爵薯」、「ワセシロ」よりやや低い。
 ビタミンC含有は、「キタアカリ」より劣るが両品種より高い。
 施肥量および栽植密度に対する反応は鈍く、多肥や疎植でも過繁茂になることはありませんが、いもの大粒化が著しいので、L規格いもを揃えるには密植が適します。黄変期前の掘取り時には、ふく枝の離れが悪い。
 いもの休眠はやや長い。
(4)調理加工特性
 球形で目が浅く、大いもの揃いが良いので、外観は「男爵薯」、「ワセシロ」に勝ります。また、剥皮しやすく、歩留りも高い。
 剥皮褐変は少なく、調理後黒変は見られないので業務用に適します。肉色は黄で、肉質は極めて滑らかで、舌ざわりがいい。「キタアカリ」のような香りや、「農林1号」のようなジャガイモ臭はありません。
 ジャガイモ臭は少ない。食味の評価は、好みによって異なり、粉質好みの人は低く、粘質を好む人は高い傾向にあります。煮物やスライスサラダ、リヨネーズなどに向き、チップスやフライには向きません。コロッケの場合は肉色、乾物率の低さから使い難い。
(5)栽培上の注意
 マルチングなどの促成栽培に向きますが、紙筒移植栽培など高温多湿下で育苗すると腐敗しやすいので避けるほうがいい。
 北海道で7月高温・乾燥に遭遇すると褐色心腐が発生するので、発生が予想される畑ではサンプリング検査をするとよい。
澱粉価の上昇しづらい肥沃地、湿地では栽培しない。多湿な畑では、植付後などに腐敗が多くなりやすい。
生育を促進させて、疫病の発生前に収穫することで無農薬・減農薬栽培が可能です。
大いもに裂開(クラッキング)が発生することがあますので急激な肥大を促する条件下では注意が要ります。この裂開や澱粉価の低下を防ぐため、多窒素を避けて5,000株/10a程度の密植とします。
 浴光催芽を十分に行い、初期生育の促進に努めましょう。
「男爵薯」に比べ緑化いもになりやすいので培土などに注意しましょう。
 いもが大きく目数が少ないので、原採種では密植するようにする。


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左:「とうや」の白い花。 右:「とうや」の塊茎

 表  ビタミンC含有率(mg/100g,生)北農試平成5年1月
品 種ビタミンC
とうや17.8
メークイン15.3
男爵薯14.6
ホッカイコガネ12.9

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