ジャガイモウイルス病罹病株の減収率May,2000


 ジャガイモがウイルス病にかかった場合どの程度減収するかは、感染した時期(早いほど減収が多い)、品種、ウイルスの種類により違いますが、田中智「ジャガイモの採種栽培技術」(農業技術普及協会刊)などによれば次のようです。【写真はYモザイクウイルスによる病徴例】

表  種いもが収量(%)に与える影響

   区 分

  留寿都村

十勝増収記録会

  採 種 圃
  更新1年目
    2年目
    3年目

 

   100
   95
   82
   77

 


   100
   91
   79

 
注)調査した年:.留寿都村昭和36〜38年、十勝昭和43〜44年の平均。
 
○PLRV(ジャガイモ葉巻病)ウイルス(potato leafroll luteovirus)
 感染当代株で7〜13%、翌年これを植えてたとき、症状の軽いもので65%、中症で80%、重症で92%の減収となります(田中)。
収量に及ぼす影響は大きく、北農試(1963)によれば、感染率(2次病徴)50%の時約20%の減収となり、100%の時約70%にも達する。また、100%感染の時62%、31%の時40%の減収(Reestman,1972)したのと報告もある。病徴の強さが軽、中および重症の時それぞれ65、80および92%減収した(Harper et al,1975)。

○PVY(ジャガイモYモザイク病)ウイルス(potato Y potyvirus)
  日本には、普通系統(O系統)とT系統の2系統があります。ジャガイモでは、一般的にO系統の方が病徴が激しい。
防疫検査などにより、症状の激しいO系統が減り、それほど強いモザイク症状を現さないか、品種によっては病徴を出さないT系統の比率が高まっています。「男爵薯」など症状の判り難いものでは、健全株か罹病株症状を区別するにはかなりの熟練を必要とします。しかし、タバコ(北海道では栽培されていない)には茎葉が黄化枯死するなどの激しい病徴を現します。
澱粉用では、Yモザイク病に免疫の「コナフブキ」が普及し、ウイルスによる減収はほとんどみられなくなりました。
 普通系統(O系統)の重症株で60〜80%、モザイクなどの軽症株では20〜30%とかわり、それ以下のこともあります。えそ系統(T系統)の軽症で13.8%〜20.6%と言われています。

○PVX(ジャガイモXモザイク病)ウイルス(potato X potexvirus)
最近は、めったに見ませんが、たまに、強系統がでることがあります。
このウイルスは、上の2つと違ってアブラムシでは伝搬しません。汁液と接触感染のみです。減収率は強毒系統で約35%、弱毒系統で約5%(佐藤ら、1958)ですが、弱毒系統では減収しないとの報告もあります。
 周辺にある株に感染した場合(当代感染)は、葉巻病でさえ当代株で10%程度の減収ですから、他のウイルスの当代感染の場合の減収はより少ない。

 【家庭菜園の方へ】保毒し生育の悪い株の隣に健全株がある場合、健全株にはより陽が当たり、根を張るなど生育が良くなり保毒株の減収を補償してくれますので(保毒株ばかりでは期待できないが)、アブラムシの駆除をしていれば、上に書いたものより被害が大きくなることはありません。しかし、タバコが近くにある地方では特に、必ず防疫検査に合格したものを使わないと迷惑を与えます。

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