アイスシェルターによるばれいしょ長期貯蔵

***水と氷で1年貯蔵***

アイスシェルターによる省エネバレイショ貯蔵
 建物の中に冷風を導き、貯氷室の水を人為的に凍らせ、バレイショをいつでも2度Cに貯蔵するシステムが元北大教授堂腰純により開発された。1988年北海道上川管内愛別町にテスト的に建設されていたが、同教授の元に留学していた、現中国農業大副学長の李里特さんが指導して1998年河北省、遼寧省、甘粛省などに、土盛り断熱などで、よりローコストで建設した。

 これは、水の凍結、融解の際に放出、吸収する大量の潜熱を利用するものであり、電気を使う冷蔵庫とは違い、費用はファンに使う電気代程度ですむという画期的なものである。これとは別なものに氷室(ひむろ)などもあるが氷が溶けてしまえば終わりとなり、何年も続けることができない。また、雪を圧縮する機械なども必要とせず、溶けた後のごみ処分の心配もいらない。
アイスシェルターは、一度設置すると、ファンを回す電気代だけですみ、毎年氷や雪を圧縮して夏まで持たすアイスポンドなどに比べて、毎年支出するコストはただに近い。

 冬に水が凍る時に潜熱を出し、夏には氷が融けても0℃という、寒冷地の気象条件を利用したものであり、半永久的に0℃の利用を可能にしているのが特徴である。しかも水と氷のある部屋を通過した空気があるため、湿度は90%で推移し(2度なので95%にする必要がない。北檜山町の実験では0〜1℃で15か月経過してもしわしわにならず、甘さとこくがあった)、秋生産しそれを翌年の夏まで2度Cに貯蔵しても、塊茎が乾燥して皺が発生することはない。

 1988年つくったテストケースのものは、施工株式会社土谷特殊農機具製作所(帯広市)により愛別町に設置され、野菜貯蔵室は100t規模、防凍貯氷室の水槽は75・水槽約670個、貯氷室には75・水槽約2千個をおいたものから成っている。この100tタイプでは、78坪である。夏と冬の断熱のため鉄骨造り100mmのウレタンフォーム吹き付けたものを断熱材とし、床は地下ピットダクト、チャンネルスノコ床とし、部屋に送風機、自動開閉ダンバーを付けている。中国にみられるように施設が大型になるほど貯氷室は相対的に小さくてすむので、北海道に是非導入したいものです。
 長期貯蔵には腐敗の混入していないものを入れるのが前提となるが、7月北海道で新しいバレイショが生産される時期まで、萌芽を完全に抑制している。夏の高温時の出荷には外気にふれて結露を生ずるため、出荷前にゆっくり昇温させるための防露室が用意されている。

 平成2年夏に実施したこの2度C貯蔵ものといわゆる新ジャガとの比較を参考までに載せておくことにする。
 2度C貯蔵の「男爵薯」は、減耗がほとんどなく、外見は入庫時と区別できないほど、水みずしかった。初年めは貯蔵温度が3度Cのため萌芽が見られたが、2度Cでは見られなかった。肉色は入庫時に比べ黄色味を増していた。また、でん粉含有率が少し低下するが、甘味(還元糖)を増していた。私が見た7月9日(平成2年)の時点では新ジャガよりもやや粉質であり、みそ汁、コロッケ、グラタンなど広く惣菜的利用が可能であった。しかし還元糖が増加しているため、油で揚げる料理には適さなかった。また、7月31日でも利用可能であったが、完熟新ジャガの方が粉質となっていた。常温では萌芽が早いので、大量を市場で扱うには向かないが、こくと甘みを増した差別化を求めるところとか、特定ホテルやレストランへの供給が可能である。

 北海道では紙筒移植あるいは萌芽時ころの全面被覆などによる前進栽培により7月の出荷が可能であるが、この施設によるその時期までの貯蔵が十分可能であり、ポテトチップス原料などには不適であるが一般家庭料理に十分使用可能であった。中国のように、規模を大きくし、貯氷室を地下ないし、周囲を土盛り断熱にすることにより、建設費を安くできます。他の方式に比べ、ランニングコストも非常に安く、毎年雪や氷を用意する無駄もなく、省エネを考えた方式と言えます。電気冷蔵庫では、0℃に設定しても波状に変温し、肉の変色があったり、電気を必要とする。道産穀類等を含めた安定供給、備蓄に役立つものと言えます。地球温暖化が心配されているおりから、水<−−−>氷と外気を使っただけで貯蔵できるこの方法を是非広く普及させたいものです。(問い合わせは、(株)土谷特殊農機具製作所0155−37−2161か堂腰宅011−221−4951)
氷になり始める水の槽風景(堂腰氏提供)

 この「アイスシェルター技術」が2010年2月環境省主催のストップ温暖化「一村一品」大作戦全国大会で審査員特別賞「寒さが作るエネルギー賞」を受賞しました。
受賞したのはもちろん北海道帯広市西21条北1丁目3番2号の(株)土谷特殊農機具製作所です。
冬エネルギーを使って雪を集めてどこかに貯めておき、その溶けるときだけ利用できる雪冷熱とは違って、この氷冷熱は水が氷になねとき放出する熱と氷が水になるときに吸収する熱の両方が使用できるもの。まさに地球環境にやさしい無限エネルギーです。この通年温度を0℃にできる技術を通年カーリング場「カールプレックスおびひろ」に生かして2007年12月オープンした実績もあります。

土谷特殊農機具製作所のアイスシェルター「氷室」が北海道の地域資源「寒冷気候」を活用しているため、北海道グリーン・ビズ認定制度により認定されています。

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