ポテトエッセイ第13話

花の咲き方【ジャガイモ博物館】

 ジャガイモの花の鑑賞時間帯としては、朝をお薦めします。午後になりますと花弁がしぼんでくるからです。
 花の数は、1房につき、通常数個ないし10個程度です。花房の数は早生種では茎の数と等しいのですが、晩生種や窒素を多用した場合には第1花房だけでなく、その上に2段、3段にも咲いてきます。肥料が多すぎた場合など、ジャガイモはあなたに言葉では教えませんが、施肥量の多少などを花で語ってくれます。また、たくさん肥料をやり過ぎますと太い茎を倒して教えてくれます。
 さて花ですが、開花は規則的です。たとえば、今3個の花が咲いており、散った跡が無いとしますと、この花は3日前に咲き始めたことを語っています。初日は1個のみ、2日目はもう1個加わり合計2個・・・と言うように咲いていきます。そしてひとつの花は数日咲いて花弁を落してしまいます。10個以上あると、仲間がまだ咲いている間に受精したものは子房が膨らんできます。
 花梗が大きく2分しているものは、1日に左右一つずつ併行して咲いていきます。 開花初日の花弁は外への反りが強く、2,3日目のものは反りがしだいに消え、大きく見えます。この期の雌しべ(花の中央の黄緑の柱)は粘っこい宝石のような液をだしていて、花粉が付きやすい状態になっています。
 また周囲の黄色い葯を下にして軽く叩きますと葯の上(先)に一つある花粉口からたくさんの花粉をだします。一度花粉の粉を黒い下敷などに集めて見てください。
 花弁の数は5つで、その五稜は隣と着いていますが(合弁)、間違って離弁に描かれているのが時どき見うけられます。
 ジャガイモの近縁種のなかには5弁の切り込みが深く、サッポロビールのマークのように、星状のものもあります(コンメルゾニ種などがそうです)。また、花弁の裏の色が表と違い、表が白でも紫になっているものもあります(デミッサム種のある系統)。長い間ジャガイモをいじっていますといろいろな変わり種に出会うことがあります。雌しべが2本のものとか、花弁の無い紅丸を見たこともあります。これはまとめて植えると黄色い花畑に見えました。近縁種には正真正銘の黄色もありますが、黄色は非常に稀です。ペルーに自生しているペンネリー種に見ることができます。
 平成3年6月には4弁の花を見ました。クローバでは4葉のものを発見すると、ハッピーな気持ちになりますが、ジャガイモではそれ以上にめずらしいことです。それはキリンビールが「ジャガキッズ・パープル」として1990年秋に市販したものの中の1株の特定の1花房のみに見られました。4角な花をひとつ見つけ、畑に日参したところ、3日目以降は正常の5弁の花が咲いていました。結局1花房5つの花のうち2つのみが4角で、その外は正常の5角でした。
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