蛋白質含有が少ないといっても、東欧諸国やアイルランドのようにジャガイモを多量に食べることはなく、また、ジャガイモ自体の味が淡白なため、蛋白の多い食品と組合せて食べることが多いため、心配は不要です。蛋白質のバランスからいうと、、卵との組合せにより、バランスのよい食べ物になります。
蛋白質含有が少ないと言っても、ジャガイモの反(単)収はおコメの10倍ほどあり太陽エネルギーの固定率が高いですから食糧の外国依存に事あるときの国民食糧の確保の上ではこれに勝るものはありません。蛋白含有はサツマイモの約2倍あり、寒冷地にも栽培可能であり、植えて90−100日で収穫可能なこともいい。事あるときはゴルフ場や空き地に植えることになりましょう。今北朝鮮でジャガイモに力を入れているのはこのような理由なのです。
蛋白質の少ない食事でお酒を飲んでいると動脈硬化になるのは、コリン不足が原因であって、メチオニン不足もコリン不足を招くとされています。ジャガイモにはメチオニンもコリンもあります。コリンの含有は生ジャガイモ100g中に27mg含まれていて、これはニンジンやサツマイモより多いのです。カルビーのポテトチップになったり、おいしい品種で知られている『ワセシロ(伯爵、白爵、ネオ男爵、新じゃが)』にはうまさに関係するアミノ酸が多く含まれているようです。昔いくつかの品種を並べておいてネズミに食われたことがありますが、味にうるさいネズミ君が一番食べたのが『ワセシロ』でした。
繊維の含有率は0.4gで、幼児の離乳食や老人の食事の中に入れて欲しい食べ物の代表です。アメリカでは、血中コレステロールを下げるリノール酸の摂取が増え、砂糖の摂取が減っているにもかかわらず、心筋梗塞による死亡が増えていますが、その原因は繊維のとり方が少なくなったことが原因と考えた方がよい、とする学者がいます。イタリー人は、豆、野菜、果物を多く食べているためか、アメリカ人に比べ、血中コレステロールが低いそうです。繊維、特にペクチンが胆汁と結合し、コレステロールを下げるが、これが心筋梗塞を防ぐとされています。
ジャガイモの味は淡泊なので、料理の際外の食品との組合せが容易であって、「組合せの王様」とも呼ばれています。コラニ−という人の計算によりますと、ジャガイモの蛋白を卵のそれと組合せると、個別の蛋白を摂取するときに比べ、高い栄養的効果がもたらされ、その場合の蛋白の比が1対2が最も良いそうです。すなわち、体重70kgの人で、1日ジャガイモ800gムと卵1個で、必要蛋白量の8割が得られる計算となるのです。イモ自体のカロリ−は少ないのですが、油を使ったポテトチツプスやフレンチフライなどにして多量にとりますと、カロリー高い食べ物となります。牛乳とジャガイモを使った食事をしていると、栄養のバランスは自然に良い方向に向かってきます。ジャガイモは、見たくれから想像つかないほど中身が充実しているのです。食べ過ぎて、ジャガイモアレルギーになった、とは聞いたことがありません。
栄養分は産地や貯蔵条件によっても差ができます。概してイモの完熟を待って掘ることの多い北海道産のものが優れていますが、皮をむかないで煮ることができる新ジャガもいいものです。
子供のころは、ジャガイモを大きな鍋で炊いて食べました。最近でも、チンしたり、アルミフォイルで包んで焼いて食べたりすると、太陽を腹一杯吸い込んだ気持ちになります。太陽のエネルギ−は膨大なものですが、その太陽エネルギ−を食べ物に固定する能力を比較したアメリカの飼料学者マックス・クライベルさんの計算によりますと、卵は0.002%、豚肉は0.015%に対し、ジャガイモでは0.1%と高い固定率だそうです。そして、人間が1日3,000カロリーをこの3種の食べ物だけから摂取するとすると、卵3万平方メートル、豚肉4千平方メートルに対し、ジャガイモではわずか600平方メートルですむのです。世界的にみると、ムギ、トウモロコシなども重要な食用作物ですが、わが国では、イネとジャガイモがエネルギーの固定、国土利用面などから考えて、効率のよい作物と言えましょう。
【付】カルシウムは体液をアルカリ性にし、リン酸(多くの炭酸飲料など)は体液を酸性に傾かせますが、アルカリ性食品を意識してとっても、血液のpHが7.35〜7.45からはずれることは少ないし、酸性食品(肉、卵類、穀物)有害説は迷信とされています。特に問題のない人はバランスのよい食事をしていれば、気にしなくていいでしょう。