ポテトエッセイ第60話

最近「メークイン」の形が丸くなった?【ジャガイモ博物館】

 『最近「メークイン」の形が丸くなっていませんか』

 こんな質問を、市場などに顔を出したときなどに、受けることがあります。
 変わったと言うからには、元の形を知った上での話と受け止めますが、へひ曲がりには、必ずしもそうでないような気がします。
 そんなことが重なったので、「メークイン」らしきもの、どう見ても違うものなど、10の形を図に書いて、『あなたの知っていた本当の「メークイン」とはこの中の何番の図ですか。選ぶのはひとつでなくてもいいですよ』といろいろの人に尋ねてみることにしました。
 当然『球形のものは該当しない』と思っているようですから、丸い形の1つは候補から除かれましょう。残った9つから選ぶとして、次の対象さがしも形から見ている。洋ナシかナスに似て一方が少し膨らんだものと、皮の剥きやすそうな小判形(卵形)も書いておいてあります。そのどちらかを相手は考えているのか、『両方あり』なのか。仮に、ナスに似た方を本来のものとして考えていたとして、浅い窪みの目のつき方まで知っているかどうか。
 人間ではまゆげの下に目があります。ジャガイモの芽も同じだと思っている人、逆に、三日月状の涼しげなまゆげの上に芽があるのが正解とする人など、いろいろです。一般家庭向けの園芸書でも、人間のようにまゆげをかいたり、ひどいのになると、お正月の福笑いゲームの失敗作のように、上を向いたり、下を向いたりしているのをよく見ます。
 このまゆげに着目できれ人はよいほうで、『「メークイン」は頭でっかち』なのか、下半身(基部側)が太っているのが正しいのかまで知っていれば完璧です。
 本当の形としては、曲玉とまではいきませんが、中央から基部の方が多少曲がっているのが「メークイン」だと思っていいでしょう。
 そこで、本当に形が変わったか否か、となりますが、それには遺伝的に変わってしまったか、栽培環境の変化に伴って見かけ上変化しただけなのかに分けて考える必要がありましょう。そのどちかであるかについては、素人はもちろん、専門家でも即答は出しにくい。「メークイン」の基種は国の種苗管理センターでつくられます。その増殖過程でウイルスを除いてきれいにして配布していますが、その際成長点の分裂組織を切って、培地で育てることがあります。この際、カルス(細胞の塊)から絶対に形の変化したものが生まれない、という保証はありません。しかし最初いもはごく小さいので変化したとしても判らないこともあるかも知れません。
 そこで、ある農業試験場や普及センターの者が、形の丸いものと長いものを選び出して、翌年植えて見たことがありましたが、翌年にはこの差が無くなったそうです。
 それでは、環境、つまり昔のつくり方と最近のそれが変わったか、となります。変わったことは事実ですが、地域によってはあまり変わらなかったり、年の差もありそうです。「メークイン」についてはもうひとつ、『最近ホクホクして煮崩れして煮物に使えないのがある』との指摘も聞かされるようになりつつあります。「メークイン」を上手につくりますと、特に秋口は、ホクホクします。多肥したり、茎葉のまだ青くいもも未熟なうちに収穫したものは期待した粘質のものとなります。肉の粘質なのが本来のものとは言えないのです。
 ここまで読んでいただきますと、私の考えがお判りでしょう。そうです、結論は、『「メークイン」が変わったとは言えない』となりましょう。
 普通のいもの【長さ】を【幅】で割ってみて(長さ/幅の値が)、2.3〜1.8が「メークイン」らしい。これが1.5以下となるとらしくなく、丸くなったと感じる人が多くなるようです。

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どれが本当の『メークイン』か。答えは、エッセイ& Uを参照