剥皮褐変(剥皮黒変、酵素褐変)

***Enzymic browning after peeling***

剥皮褐変(剥皮黒変、酵素褐変)

 英  名 Enzymic browning、Enzymatic darkening,blackening after peeling
 病 原 菌 生理病
 発病部位 生いもの皮をむいたり切断したとき、どの切断面にも発生する。
 症 状
塊茎の剥皮又は切断をした後そのままにしておくと、その部分が褐色に変化し、さらに放置しておくと、切断後2〜5時間で黒色に変わっていきます。
 概して中心部に多い。
生いもの皮を剥いたときに、傷ついた細胞が空気(酸素)にさらされ、ある種のフェノール化合物(クロロゲン酸及びアミノ酸チロシン)からメラニンへの酵素的酸化によって切断面に近いところに発生します。
 つまり、フェノール物質の酸化現象であって、病原菌は関係していません。
 この変色は一般の調理はもちろん、プレ・ピールド・カットポトテの製造などの際マイナスとなります。
 剥皮褐変の発生には、品種間差があり、「男爵薯」、「農林1号」などは発生しやすく、「ムサマル」、「ホッカイコガネ」、「ユキジロ」、「さやか」「インカのめざめ」、「とうや」、「コナフブキ」では少ないことが知られています。
 なお、水煮後のいもを放置しておいて発生するものは調理後黒変、あるいは水煮後黒変と呼ばれ、鉄イオンとクロロゲン酸が反応して第二鉄化合物ができるものであって、この現象(after-cooking discoloration)と剥皮褐変とは異なるものです。
 ポリフェノール類のクロロゲン酸はジャガイモの外、サツマイモ、ヤマイモ、レンコン、ウド、ゴボウにも含まれています。
 ポリフェノールはベンゼン核やナフタリン環にOHが2個以上ついたもので、クロロゲ酸などたくさんの化合物があります。黒ずみ(褐変を)の原因である酸化反応を妨げるには、酸が有効で、家庭では皮などを剥いたら薄い酢水につけておくといい。

発生の誘因
@土壌条件よりも気象条件の影響が大きく、肥大期に降雨が多いと出やすい。(1998)
A何らかの理由で生育遅延がみられるとき発生が増える傾向にある。
B窒素施用が多いと塊茎中の可溶性アミノ酸が増えやすいので、特にカリのやり方が少ないときに発生が増えやすい。
C硫酸カリを使うと、塩化カリを使った場合よりでん粉価が高いが剥皮褐変の発生が多い。

 防除法
@品種の選定:「男爵薯」を「ワセシロ」にかえるなど。
A浴光催芽、早植えの実施により生育を前進化する。
B窒素の多用を避ける。
C排水を良くする。
D剥皮後加熱で酸化酵素を殺すか、水などの溶液にすぐ漬け、酸素の供給を断つ。
E剥皮後 脱酸素剤の二酸化硫黄、または亜硫酸ソーダ溶液に浸す。この方法は食味を悪くする。
 これに替わるものとしては、アスコルビン酸、システイン、フィチン酸などを使ってpHを下げてチロシナーゼの酵素活性を抑制する方法があります。

[注意と蛇足:加工関係で次のようなことを見聞しています。しかし、詳細は不明です。また、執筆者は製造関係に詳しくないので、本ホームページに出てくる食品添加物、脱酸素剤、食品製造用剤、農薬などの薬剤の使用の可否については、最新の対象法律、条例、使用上の注意等に照らしてからお使いねがいます。]
ブランチングなどの加熱により酵素を不活性化すると剥皮褐変は発生しません。
切断、剥皮後水に浸漬するなど、酸素の供給を断ってやると褐変しません。
切断後1〜2日経過した後でも、0.2〜0.5oの厚さで再度切り捨てると元の状態にできます。
 剥皮後真空包装し、5℃で保存すると、4日後には腐敗臭が著しく、食味が低下します。切断し、食塩水に浸漬すると、2,3日外観の鮮度を保持できる。窒素ガス充填処理したパックでは25日経過しても褐変の発生が見られない。真空パックで5月おいて外観の低下はみられないが、肉質が固くなってしまう。
 なお、剥皮すると、ビタミンCが増加または減少し難いとするものと、減少が著しく細菌が増えがちとする意見があります。
 また、調理後黒変を防ぐには、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)により、鉄とキレートをつくらせて防止する。すなわち、皮剥きしたいもをボイルする前にこの1%希釈溶液に約1分間浸すとよい。EDTAの外、ピロリン酸ソーダ、グルコン酸、クエン酸、亜硫酸ソーダなどを使う例もある。これらを収穫の2週間前に葉面散布することも有効と言われています。
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剥皮褐変(酵素褐変)の多い男爵薯

水煮後黒変の多い男爵薯

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