1.イモグサレセンチュウ 英名:potato rot nematode
学名:Dithlenchus destructor
イモグサレセンチュウは、欧米ではその名のとおりpotato rot nematodeとしてジャガイモの重要害虫です。
日本では、1984年にニンニクに寄生する新しい系統が出現し、1990年には北海道でも発生が確認されました。
この線虫は、根の内部に侵入するネグサレセンチュウなどとは異なり、外部に寄生して腐敗や褐変をひきおこします。北海道では、現在ニンニクで被害が発生していますが、寄主範囲が極めて広いことから、一度定着すると防除は難しく、将来ジャガイモなどに容易に寄生できる系統が分化して出現する可能性が懸念されています。道立道南農試病虫科では、DNA鑑定法なども利用してこの線虫の特性を解明し、新たな発生地域の拡大を防ぎながら既発生地域では根絶を目標に有効な防除法の確立を目指して取り組んでいます。(道南農試だより 第9号。平成10年5月発行)
北海道では渡島、檜山、十勝などで発生が確認されています。ジャガイモの根が褐変し、腐ります。塊茎にもつき、周皮下に直径0.4mmの不定形褐色斑点が散在します。高密度では減収することも知られています。
九州へは長野などから入った例があり、暖地では、毛ばたき状となりstuntingし、葉色が薄れるそうです。
下記の野菜の品質低下をもたらすので花木の移動などを含む強い防疫体制が望まれています。
だいこん、にんじん 、ごぼう(黒変、岐根)、うり類、ねぎ類、サーバル、ナス科、キャベツ、はくさい、ほーれんそう、小麦 にも発生しています。だいこんでは低密度でも被害がでてきます。
このように多数の作物に発生するため、多数作物の抵抗性品種の育成が困難です。線虫密度を下げるアフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールド、えん麦の「ヘイオーツ」、「サイアー」、ギニアグラス、てん菜、とうがかし、ピーマン、アスパラガスなどを栽培します。
pHが高いと出やすい。やや腐植が多いところとか、土が粗く、軽いと密度が高まりやすい。ジャガイモと大根の被害許容密度としては生土25g当たり10頭ほどとされています。
3.サツマイモネコブセンチュウ 英名: Southern root-knot nematode
学名: Meloidogyne incognita
北海道の露地では越冬できないものですが、加温栽培施設に発生することがあります。
トマト、キュウリ、ニンジン、ジャガイモなどに寄生します。キタネコブセンチュウとは違って、ラッカセイには寄生しません。数種のレースがあるようです。
ジャガイモでは、根をみると、根にこぶが数珠状に連続してつき、よくわかります。出回っている塊茎では、表面に小さなこぶができ、しだいに目立ってきます。線虫密度の高い圃場では生育は悪く、また根が加害され着水分の吸収が妨げられるため、しおれがみられます。
雌成虫は体長約0.8mmの円ないし洋梨形。塊茎を薄くスライスすると、30〜40倍の顕微鏡で見られます。
防除法
1.本種は一度侵入すると根絶は困難なので、道外からの苗木、サツマイモの購入や移動には十分注意します。
2.盛夏期に施設を密閉して、湛水処理とビニ−ルマルチにより太陽熱処理を行う。
3,本種は露地で越冬できないので、冬期間施設を解放して低温にさらてやる。
4.トマトでは「桃太郎」「ハウス桃太郎」が抵抗性品種なので利用する。ただし、この品種はキタネコブセンチュウに対しては抵抗性をもっていません。
トマトでは多くのネコブセンチュウ抵抗性品種が市販されていますがこれらの抵抗性品種に寄生できる「打破系銃」が出現しています。
5.くん蒸剤による土壌消毒を行う。
6.ギニアグラス、ステビア、ラッカセイなどの対抗植物を栽培して線虫密度の低減に努める。
7.多数の施設がある場合には、順次ローテーションで行う。この場合、再感染に十分注意する。