(1)来 歴
昭和12年、北海道農試で、「男爵薯」に「デオダラ」を交配し、昭和18年に奨励品種になりました。農林登録番号がそのまま品種名になっています。休眠がやや短く、適応性が大きいため、かって全国で栽培されてきました。北朝鮮でもよい成績を収めています。
(2)地上部特性
北海道では、9月下旬〜10月上旬に枯凋期となる中晩生種であり、「紅丸」より数日早いことが多い。
萌芽時の葉色は「男爵薯」同様に紫をおび、茎の二次着色は「紅丸」より淡い。初期生育は中です。
草型は直で、茎はやや太い。分枝は「男爵薯」より多い中。小葉の大きさは中で、「男爵薯」より狭く、粗剛に見え、葉色はやや濃い。小葉の着生は「男爵薯」より疎の中。葉の毛茸は多い。
花色は白い。花数は多いほうですが、「紅丸」より早く終わります。花粉の量は中で、自然結果が少しみられます。花冠の形は「男爵薯」よりやや鈍角です。
葉巻病には一般品種並に弱く、Yウイルス病は、葉の裏面に局所え死、葉脈えそ条斑などがでるえそ型が多い。Aモザイク病、青枯病には強い。やせいも病(わが国未発生)では「ホッカイコガネ」同様に丈が低くなり、株の上部にえき芽が多く出て、ブッシュ状になります。
軟腐病には「男爵薯」ていどの中です。疫病抵抗性主働遺伝子は持たず、圃場抵抗性は中です。
(3)地下部特性
塊茎の形は偏卵ないし偏球で、目の深さは「男爵薯」より少し浅い中に属し、目の数は「男爵薯」よりやや少ない。いもの数は中ですが、中・大粒が多く、「紅丸」に近い多収を示します。いも着きは密で収穫は容易です。大粒のいもでは中心空洞が発生しやすいが、褐色心腐は少ない。ミナミネグサレセンチュウには「男爵薯」より弱い。粉状そうか病の発生は「紅丸」より少ない。
でん粉価は16〜17%の中です。元来でん粉原料用品種でしたが、各種用途に使われております。でん粉粒径は小さく、糊化最高粘度時の温度はやや高い。休眠はやや短い。
(4)調理加工特性
水煮の場合、鉄イオンとクロロゲン酸の反応による非酵素的水煮黒変が多い。貯蔵中期の還元糖含有率は特に低いほうではありませんが、貯蔵末期の加温処理で比較的下げやすいのでポテトチップス用にも使われることがあります。チップス・フライの褐変程度、およびフライの乾湿は中です。
(5)栽培上の注意
畦幅、株間は「男爵薯」より若干広めでよい。
中心空洞のでやすい畑では、窒素の加用や疎植を避け、植付時期が遅れないようにします。移植栽培時の中心空洞の発生は、「トヨシロ」や「ユキジロ」同様に多い。
チロシン含有を下げ水煮黒変を少なくするには、窒素は少なめ、りん酸とカリは多めとし、できるだけ生育を促進させ、地温があまり下がらないうちに収穫できるようにします。浴光催芽の際、温度を高くすると黒色心腐が発生しやすく、減収につながりやすい。
【ジャンボ・ジャガイモ】1991年(平成3年)11月2日北海道新聞の“かわかぜ”蘭に載っていた記事。芦別市上芦別町38、中島幸夫さんの畑で収穫された「農林1号」に961g,757gの特大ジャガイモを両手にもった写真が載っていました。
この年各地でジャガイモが良く肥大し道南の七飯町上藤城239の野沢太郎さんの畑では「ワセシロ」に、なんと1,180g(直径20cm)のものが出たと載っていた。
育成従事者
田口啓作、鈴木美代七、西村昌造、和田忠男、江口俊一、橋本尚史
主な資料
田口啓作(1943).「馬鈴薯新優良品種「馬鈴薯農林一号」の特性」。『北農』.10(11):317-322
田口啓作(1963).「V.馬鈴薯の栽培」。『作物体系 第5編 いも類』.養賢堂.P25