ジャガイモ「紫いも」ほか
紫いも、銀山紫、銀山紫(兵庫)
昔、札幌の二条市場などで、皮が紫で、肉色が黄の美味しいものが並び、外見が悪いが、風味がよいので、関心のある消費者の間に、口こみで知られていた。その産地は道南の倶知安(くっちゃん)地方のニセコ町銀山でした。昭和50年前半のころ、これに関心を寄せたのが道立滝川畜産試験場で豚や牛の研究をしていた佐野信一さん。早速道立根釧農業試験場馬鈴しょ科浅間和夫あてに小包で送った。調べてみたが、品種名は不明であったため、ニセコが産地と言うので仮に「銀山紫」と名づけて保存することとした。馬鈴しょ科はその後訓子府町の北見農業試験場に移転しました。これが後日神戸大学→北海道農業研究センター→ジーンバンクへと移ったときには「銀山紫(兵庫)」となっていました。
晩生で、小葉は小さく、色は濃い。茎が細い。花は淡青色先白。
皮色の紫なもので、農家の自家採種などで、こだわりの個人在来種化している可能性のある古いものとしては、「島系143号」、「根室紫」(明治時代)、「蘭谷3号」(青森県など)、「同5号」の外、淡紫皮の「北海10号」、「農林3号」があります。
これと同じ品種かどうか不明ですが、皮色の紫なものとしては、新篠津(西篠津田中勢記男さんら栽培、茎細、晩生)、焼尻島(根室紫?)、富良野、伊達(伊達紫)、日高、苫前(バイオレット)、紫糯(むらさきもち、空知南部)などがあります。肉の紫なものには「島系571号 」、「島系576号」、「島系578号」もありましたが、一般に出回ったかを掴むことは難しい。来歴不明?の「長崎紫」(中生、淡黄肉。バイオレット、紅太郎と呼ぶことがある)もあり、「豚いも」、「紫いも」などとも呼ばれたり、同名異種や異種同名が多く、DNA鑑定でもしないことには、その交通整理が難しい。
なお、「根室紫」は、本州の大滝村で古くから栽培されている「紫いも」(来歴不明)同様にS.andegena と同じA型葉緑体DNAを持ち、日本に入ったのは、かなり古いと推定されている(神戸大保坂)。
区別するための、一応の目安としては、
1.熟期が中早生
@ 「根室紫」:花が青紫色。形がながく、小粒。明治時代に栽培されたものです。
2.熟期が中生
A 「蘭谷3号」:花が青紫色。偏卵形で小粒。
青森県などで昔つくったことがあります。来歴不明。
B 「蘭谷5号」:花が紫色。卵形で小粒。これも青森県の古い在来品種で、来歴不明。
3.熟期が中晩生
D 「島系143号」:花が淡い青で、絞りの模様のため区別が容易。
S45208×根室紫。
4.熟期が晩生
F 「島系439号」:花が青紫色、多収。偏卵形、肉色?、大きさ並。R1。
48005×Pepo
G 「銀山紫」:花淡青で先が白い。小葉が小さく、葉色は濃い。茎は細い。
肉色は黄。美味しい。 来歴は不明。
H 「北海10号」:花淡青紫、球形で大粒なもの。R1。
41089-8×農林1号
5.熟期が極晩生
I 「島系427号」:花が淡紫、茎は濃紫、肉色も紫で区別が容易です。
一村一品として取り上げているところもあり、消費者のグルメやニーズの多様化に対応し、潜在需要の開拓を図る動きもあります。小粒、他と違う皮色、肉質、あるいは肉色、高ビタミン(カロテン)、低アルカロイドなどの点で差別商品が開発されれば、取り上げるところがでてまいりましょう。たとえば、富良野の「チーズ工房」で出している紫肉ジャガイモの色素を使ったアイスクリームがあります。
南米のインデオ栽培種の中には、皮色のマダラ(パンダ)のものなど多様にあります。皮の赤いものはハワイやアメリカのレストランでスライスされてよくでてくるようですが、紫皮となるとやや汚くなるので、評価がわかれましょう。
紫ポテトは新じゃがを皮をむかずに茹でると、色が鮮やかに残ります。茹でてから皮剥きするか、そのまま皮ごと食べるとよい。
アメリカでも、ナス科を確認実感できる All Blueというう花, 茎、いもの表皮、および果肉まで紫のものがあります。これらを導入するところがでてくるかもしれません。
オレンジ果肉のポテトも系統として、米国USDA(ワシントン州)で育成されております。
オレンジ・ポテト
わが国では、第二次大戦後皮の赤いのはほとんどありませんでしたが、近年ファッション化の影響でしょうか、赤いものも出てきております。北海道の白肉でコロッケなどに向く品種「ベニアカリ」とか、長崎の黄肉の「アイノアカ」があります。「アイノアカ」は、目が赤で楕円形をしているのですぐ区別できます。
アメリカでは、数年前、ワシントンの試験畑で、アンデスからの導入種との交雑種の中から肉色がカンタロープ(マスクメロン)かトウモロコシに似たジャガイモを発見しています。この黄色はゼアザンチンとルテインという色素により発現しているものです。ゼアザンチンはその名がトウモロコシの学名Zea maysに由来していることからも判る通り、黄色のカロテノイドの一つで、ホオズキとか卵黄にもあるものです。また、ルテインも同じカロテノイドの一種で、秋の黄葉中にあり、緑葉中にもベータ・カロテンとともに多量にあります。
米農務省プロッサー研究所の遺伝学者チャールズ・ブラウンは、この二つのカロテノイドの栄養的価値は知られていないが、今後の研究によりその効用が解明されるであろうと述べています。このポテトを直接、あるいは親として使用し、差別化商品として使うことが可能です。セールスポイントのオレンジないしサツマイモ色は、これに近い化合物(例えば、ベータ・カロテン、ビタミンC)は、がんの発病を防いだり、抑制するのに役にたつことが知られているものです。
<<肉や皮の色>>
ジャガイモの肉色は白ないし黄で、その中間ないしクリーム色のものもあります。
黄色はカロテノイドによります。その内訳をみますと、主にビオラザンチン(violaxanthin)やルテイン(lutein)であり、β−カロテン(ニンジンなどに多い)はごく微量しか含んでいません。
また、塊茎の周皮(periderm)や厚皮(peripheral cortex)に見られる紫や紅の着色はアントシアニンによります。収穫後光の下におくと緑化しますが、この着色は葉緑素によるものであり、同時にグリコアルカロイドの生成にも深く関わっています。
異種ばれいしょの中には、肉色の外表皮が紫、紅、それがパンダ状に分布したり、頭部のみに分布するものなどいろいろありますが、広く消費者に受け入れられるものとして、黄白が選ばれることが多い。卵の卵黄は黄色が消費者に人気が高い。このため、餌としてマメ科植物の「アルファルファ」を与えたりしています。オレンジ色にするには「パプリカ」などが使われ、約10日も与えていれば、ほぼ完全に変えることができます。緑色にもできます。緑にするには油に溶ける色素をニワトリに与えると、卵黄に移行して着色します。しかし、ジャガイモの紫色などと同じく、これを好む人は少ないので、実用化するまでは行きにくい。
近年北海道農業研究センターで育成された皮色が紫の品種
1.キタムラサキ(北海88号)
2003年育成。紫皮・紫肉の「島系571号」×「島系568号」内髄も紫。「島系571号」の祖母は「根室紫」の自然結果した系統。肉質はやや粘質。サラダやフレークの原料として優れています。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性。
2.シャドークイーン(北海92号)
2006年育成。キタムラサキの開放受粉で得た真正種子から育成。肉は濃い紫で、アンチエイジングとして関心が高いアントシアニンの含有量はキタムラサキの約3倍。肉質・肉崩れ度は中間。サラダに適します。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性はありません。
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