注目されている海外の病害虫

***生芋輸入で心配なもの***

Q 海外からは生のジャガイモが輸入が禁止されていますが、どんな病害虫が入ってくるのを心配しているのですか?

A <横浜植物防疫所の役割>
 わが国では未発生の病害虫で、ひとたび侵入しますと、農業生産に重大な脅威を与えるものが多い。このため、横浜・門司の両植物防疫所は、わが国の植物に被害をもたらす海外からの病害虫(検疫病害虫)の侵入を未然に防ぐため、全国の海港や空港で輸入検疫を行っているほか、重要病害虫の国内でのまん延を防ぐための国内検疫、諸外国の要求に応じた輸出検疫などの業務を行い、わが国の農業を守るために力を注いでいます。

 万一、生のばれいしょの輸入が許されると、恐ろしい病害虫としては次のものがあります。

(1)ジャガイモシストセンチュウ
 Golden nematode of potato(Globodera rostochiensis)
これに幾つかの系統が知られているが、その1系統が1972年後志管内、1982年清里町、斜里町などで発見され、平成に入り長崎県でも認められ、防除対策、抵抗性品種の開発に多大の費用をかけてきています。線虫密度が高くなると、抵抗性のない「男爵薯」などでは収量は半作以下となってしまいます。
 他にも系統がありその侵入が警戒されている。ヨーロッパ、ニュージーランド、北米などで発生。密度を0にするのは不可能とされています。

(2)シロシストセンチュウ
 White potato cyst-nematode (Globodera pallida)
 これにも数種の系統があり、万一入って来た場合には、系統ごとの抵抗性品種の育成が必要になってきます。この影響は@と同様です。

(3)ニセネコブセンチュウ
Fale root-knot nematode(Nacobbus aberrans)
ヨーロッパ、ロシア、北・南アメリカ、インドなどで、トマト、バレイショ、フダンソウ属植物などの生植物の地下部であって栽培の用に供しうるものは現在輸入が禁止されています。

(4)コロラドハムシ
Colorad beetle (Leptinotarsa decemlineata)
 ヨーロッパ、北アメリカなどに分布している重要害虫。寄生する植物の範囲は広くばれいしょだけでなく、キャベツ、アザミ属植物、モウズイカ属植物及びナス科植物があります。
<写真はPotato Production and Pest Management in North Dakota and Minnesotaによる>

(5)ジャガイモヒメヨコバイ Potato leafhoper(Empoasca fabae)
ロッキー山脈の東側などを中心に発生し、年数世代を繰り返して幼虫と成虫が加害している重要害虫。セミを小型スリムにしたような虫。

(6)癌腫(がんしゅ)病
Wart (Synchytrium endobioticum)
 カリフラワー状の癌腫が塊茎より大きくなることもある重要病害。世界各地で発生し、トマトやとうがらしなどのナス科植物を侵す。商品価値をさげるこの病気は、この撲滅はきわめて困難で、厳重な検疫措置がとられています。
<写真左はSvensk Matpotatiskontroll。右は横浜植物防疫所原図。>

(7)やせいも病  Spindle tuber viroid
 アメリカ合衆国、カナダ、ロシア、南アフリカ、韓国などに発生。生育が劣り、塊茎に深い割れ目を生ずるもの。汁液伝染もするので警戒されています。
<写真はPotato Production and Pest Management in North Dakota and Minnesotaによる>

(8)Potato yellow dwarf virus
 アメリカの北東部諸州やカナダ南東部諸州などに分布しています。茎葉が黄化萎縮して、減収するもの。塊茎に褐色のえそを生じる。ヨコバイの一種が媒介するウイルスです。ナス科、マメ科、アブラナ科の植物にも寄生します。

関連法律等
 わが国は世界でも有数の農産物の輸入大国になっていますが、それにもかかわらず、一部の国からですがばれいしょの輸入要請が来ている現状にあります。その受け入れは、輸入自由化に伴いある程度やむを得ない、と言うような考えをもつ方も居られるかも知れませんが、各国の土つきいもの輸入禁止処置はWTOやFAOの取り決めに則り行われているものであり、植物検疫上安易にこれを受けることができないものです。
 つまり、土つきばれいしょの輸入は、車を買っていただいている国が望んでいるからとか、輸入障壁の撤廃は世の流れだなどとする情緒的、政治的なものではなく、エイズ、恐牛病、ペスト、コレラに準じた防疫が必要な重要病害が多くあり、国の軽々な判断は許されません。
 「植物防疫法 第7条」では、有害動物又は有害植物、土又は土の付着する植物を、試験研究の用に供するために農林水産大臣の許可を受けたもの以外、輸入できないとになっています。
 このような法律による輸入規制は、わが国だけが設けているものではなく、多角的防疫体制の枠組みの中で、国際的に調和させたものが必要であるとして、WTO協定の一部をなす『衛生植物検疫措置の適用に関する協定(PSP協定)』の発効(1995年1月)に合わせて、各国が国際基準に基づく植物検疫を行っているものです。たとえば、「病害虫の危険解析(Pest Risk Analysis:PRA。病害虫の潜在的定着能力、まん延能力、経済的重要性等により病害虫の危険度を相対的に評価するもの)」に関するガイドラインもFAOによって承認された国際基準です。わが国でもこれを受けて上記のA、Bにつき1996年4月改正し有害動物に追加しています。

 上に書いたものは、『輸入禁止対象病害虫』(「植物防疫法施行規則 別表1に掲げる有害動物又は有害植物」に載っているもの)です。これらは万一生いもの輸入解禁などに伴ってわが国に侵入してきた場合、わが国のばれいしょに深刻重大な損害を与える恐れのあるものです。
植物防疫法
輸出入植物の検疫、発生予察事業のことなどに関係ある法律。植物防疫所(植物防疫官)は「種馬鈴しょ検査実務要領」により、種いもの検査を実施しています。
○北海道種馬鈴しょ生産販売取締条例...<集荷販売業者の登録のことなど>
○北海道種馬鈴しょ生産販売取締条例施行規則...<登録生産者のことなど>
○農産物検査法
○馬鈴しょ生産管理基準
  このホームページは官庁の広報担当ではありませんので、法律などの中身についての問い合わせをいただいても、返事は書きません。関連官庁としては横浜植物防疫所 札幌支所 TEL:011-852-1808があります。

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