211.『悪童日記』(原題:A NAGY FUZET)
2013年、ドイツ・ハンガリー映画。監督:ヤーノシュ・サース。
原作者のアゴタ・クリストフは、ハンガリー動乱が鎮圧された後、オーストリアに逃れ、スイスに亡命し、1986年51歳で書いた「悪童日記」である。
時代は第2次世界大戦下(ハンガリー動乱)の1944年8月。双子の兄弟(アンドラーシュ・ジェーマントとラースロー・ジェーマント)は母親と列車に乗ってブタベストらしきところからオーストリア国境に近い田舎町へ向かう。田舎の人達から魔女と呼ばれる祖母(ピロシュカ・モルナール)のところにへ疎開する。20年ぶりに帰った娘である母を祖母は抱きしめようともしない。「強くなって。迎えに来るまで生き延びて。何があっても勉強は続けてね。手紙を書くわ」と言い残し、母は去っていった。祖母の敷地には川があり、それを越えればオーストリアであるが、そこはナチス・ドイツの支配下である。村人たちから魔女と呼ばれる肥って意地悪な祖母に重労働を強いられ、薪割り、水汲み、家畜への餌やりなどに従事する。実は、二人は出発の前、父から大きなノートを渡され、それに日記を書くようにいわれた。母親との約束を守り、日々の暮らしをノートに綴る形で淡々と描くという形式をとっている。
『強くならなくちゃいけない。寒さに負けないようにしなくてはならない。友だちは大切にしなくちゃ。
そして、生き残っていかなくては――』双子は身体を鍛えるため、祖母から日頃言われるように「くそがき!」などと罵り合いながら、互いに殴り合ったりする。冬になり、樹にもたれかかる負傷兵を発見し、食べ物と毛布を持って引き返すと、兵士はもう死んでいた。双子はその武器を盗み、空腹に耐える訓練もする。
ある日、祖母が郵便配達夫から小包を受け取るところを見た。母から送られた衣類と手紙だ。それらを祖母はずっと隠し、双子には渡さないでいたのだ。母を思い出すと心が痛む。だから、母を忘れなければいけない。双子は精神を鍛える訓練として母からの手紙と母の写真を焼く。ニワトリを可愛がってから殺す。残酷さに慣れるため、虫、魚、カエルなどを次々と殺す。
ジャガイモからみのシーンでは、祖母の家に、司祭館の若い女中がジャガイモを買いに来る。二人でジャガイモを司祭館まで運んでやり、その後女中の指示により3人一緒に風呂に入る。その窓から、過日少年に靴をくれたことがある靴屋さんが連行されるのを目にし、女中と争いを起こす。兄弟は心を一つにして、生き延びるため、自らを鍛え、よく思慮し、許しがたい事実には、きちんと報復を加える。
戦争が終わったがまだ混乱が続くある晩、母が赤ん坊を抱いて車から降りてきて、「早く車に乗りなさい」と言う。ケチで、汚らしい祖母の意地悪にも慣れ、二人がそこをを離れたくないと言うので、母が車と家の間で迷っていたとき、庭に砲弾が飛んでくる。遺体となった母と子供を土に埋めていた時祖母が発作を起こして倒れる。父親が来て、再度しっかり埋めなおすことになったものの、祖母がまた脳卒中の発作を起こしてしまう。祖母の体を清め、母親の隣に埋める。
父親は、(ハンガリーらしきこの場所から)「国境を越えて出ないと捕まってしまう」と言う。国境の鉄条網までたどり着くのは大変なこと。見張りがおり、一帯は地雷だらけなのだ。でも、大股で歩けば、成功する可能性がある。それは、二人にとって最後の別れ訓練にもなるかも・・・。
(2019.1.26)
212.『トレマーズ3』(Tremors 3: Back to
Perfection)
2001年、アメリカ映画。監督:ブレント・マドック。
地底から出現し地上の生き物を襲う怪物「グラボイズ」と、人間たちとの戦いを描く『トレマーズ』シリーズの3作目であるが、監督は変わっている。
第1作から11年後。地底怪物グラボイズ退治で名を馳せたバート・ガンマー(マイケル・グロス)はアルゼンチン政府から依頼されたシュリーカー狩りを終え、田舎町パーフェクション(英語版)に帰ってくる。そこではジャック(ショーン・クリスチャン)は相棒ビュフォードと共にやらせの体験ツアーを営んでいたものの、本物のグラボイドが現れビュフォードと観光客が殺されてしまう。3匹いると分かり、「絶滅危惧種」なので2匹を駆除することになる。バートは油断してグラボイドに食べられてしまう。しかし、バート邸に誘い出し、バート邸の地面に埋め込まれたコンクリート壁に激突させて、体内から助け出される。
バートとジャックはジョディ、ミゲルと共に残り2体を探す。その後、グラボイドがシュリーカーに変態し、突然変異体のエル・ブランコも現れる。さらに、そのシュリーカーは飛行可能なアスブラスターに変態し、ミゲルが殺される。1匹は、爆薬を使いバートの自宅こど爆殺するものの、武器も無くなる。
仲間2人とゴミ捨て場に逃げ込み、アスブラスターを倒すために使えそうな廃品をかき集めて筆者期待の手製のポテト銃(ジャガイモバズーカー、potato cannon, potao gun,spud gun)を作り出し、アスブラスターを全滅させることに成功する。
しかし、バートは突然現れたエル・ブランコに襲われ動けなくなり、さらに生き延びていたアスブラスターに見つかってしまう。エル・ブランコがバートの超音波腕時計に反応していることを知ったジャックは腕時計をアスブラスターに投げつけて、エル・ブランコに共食いさせる。騒動の終った後、ナンシーは捕獲したアスブラスターを高値で売却してミンディの学費とし、ジャックはジョディと親密になり、絶滅危惧種のエル・ブランコがいるパーフェクションは保護区に指定され、地上げの動きもでてくるが・・・。
(2019.1.30)
213.『王の男』(ワンエ ナムジャ)
2005年、韓国映画。監督:イ・ジュニク
15世紀末から16世紀初め、燕山君(よんさんぐん:第10代王、1495-1506年)治世下の李氏朝鮮のこと。芸人チャンセン(カム・ウソン)と女形芸人コンギル(イ・ジュンギ)は仮面劇の良き相棒であり、綱渡り曲芸、人形劇などをやっている。しかし頑張ってもらったチップが蒸かしたジャガイモのこともある(写真)。
韓国にジャガイモが入ったのは日本より遅いはず。この写真がジャガイモであれば、この時代にジャガイモが出てくるのおかしい。時代考証のチェックがいい加減である。コロンブスが第1回の航海のとき、バハマ、キューバ、ハイチなどを発見したのが1492年であり、ジャガイモはまだソウルには来ていない時代の話。この映画は韓国の観客動員数の記録をつくったが史実とフィクションを融合させたドラマティックであるもののスキャンダラスとも言えるストーリーである。
映画に戻り、一旗揚げるために、二人は漢陽(現代のソウル)へ行き、王をネタにした仮面劇で民衆の笑いと人気を得た。その評判を聞き、忠臣チョソンが二人を王宮へ招き、燕山君(チョン・ジニョン)の前で演じることになったが、緊張のため上手くいかない。そんな中、女形芸人コンギルが機転を効かせて王様を笑わせることに成功。こうして、チャンセンたちは王宮の芸人として召し抱えられる。
先王のネタを基にした仮面劇を見て、激怒した王は、ついに母親の死に関わった側室たちをその場で切り殺し、ショックを受けた皇太后も死ぬ。
王の寵愛を得た女形芸人コンギルは官職を与えられ、毎夜呼ばれて、王の前で指人形劇をやる。嫉妬心を燃やすチャン・ノクスにより、市中には当時普及しつつあったハングルによる抗議文が張り出され、それを見た王は激怒する。死刑の前日、チャンセンは綱渡りをしながら、王のネタで演ずる。再び、王の怒りを買ったチャンセンは、両目を焼かれてしまう。悲しみのあまり、コンギルは手首を切って死のうとする。盲目になったチャンセンは、最後の綱渡りに臨む。一命を取り留めたコンギルも綱渡りに加わり、演技を続ける。”生まれ変わっても芸人になりたい”と二人は開放された気持ちになり、新しい世界へと旅立つ・・・。
(2019.1.31)
214.『無花果の顔』
2006年、邦画。監督:桃井かおりの初作品。
庭に花の咲かない無花果の木がある門脇家は、ごく平凡な家族。映りの悪いテレビを叩いて直そうとする母(桃井かおり)、茹でたジャガイモに塩辛を乗せて(これが最高という地域もあるが、筆者はジャガバター好み)風呂上りのビールを美味そうに飲む父(石倉三郎)、そんな団欒の風景をカメラにおさめる娘(山田花子)、つまみ食いをして叱られる弟(HIROYUKI)がいる。 今夜の夕食は、ちゃぶ台でチーズフォンデュをやる、何でもない幸せな一家である。
父は水道・ガス管のベテラン配管工であり、その後徹夜仕事があり、現場に近いウィークリーマンションを借りたという。また、昔職人仲間が手抜き工事をした建物がリニューアル中で、夫は誰もいない夜間の現場に密かに侵入し、当時の手抜き工事の配管をボランティアで、ていねいに直したりしている。ボランティアの案件が無事終わり、やっと通常の仕事を始めた矢先、夫が現場で倒れ死亡してしまう。
テキパキと通夜の準備をする母。その傍らで、葬式用の写真を探していた娘は、自分が“養女”と記されている戸籍謄本を偶然見つけ、唖然とする。母は父の死が受け入れられないのか、コロッケを作り続けるシーンも見せてくれる。
そして間もなく母は、住み慣れた家を引き払い、東京タワーの見える娘のアパートで新生活をスタートさせた。かたや娘も、ライターとして新たな道を歩み始める。
妻は仕事を見つけた。料理が美味いきちんとした飲み屋で働き始める。その店の主人(高橋克実)が求婚し、門脇のあの家を素敵にリニューアルして、二人が住み始める。両家の子供たちは祝福してくれ、ちょっとした小説家となった娘が赤ちゃんを出産した。娘が嫌がった年上の男(岩松了)の子だったが、娘はひとりで育てるという。こんな人々の生きざまを庭先からじっと見守り続け、見守って行く無花果の木があった。幸せの変遷を描き、向田邦子の小説や小津安二郎監督作品とも異なるタイプの、喜劇も入った映画である。
(2019.2.1)
215.『娘たち』(原題:Девчата、英訳:GIRLS)
1962年、ソ連。監督:ユーリー・チュリュキン。
シベリアの村でコックとして働き始めたトーシャ(ナデージダ・ルミャンツェワ)は、素直で明るい女の子。建設現場で働く女好きの男の子のイリヤ(ニコライ・ルィブニコフ)に親しくされ、これが恋だと大喜び。やがてそれは、イリヤとその悪友たちによる悪戯であることが分かり、トーシャは彼との絶交を決意する。だがこの時、イリヤは本当にトーシャを好きになっていた。
しかしどちらもプライドが高く、互いに好意を抱きながらも自分から一歩踏み出すことができない。労働階級を賞賛し、明るい未来への夢に溢れた心温まるロマンティック・コメディは時代を超えた白黒映画となった。
ロシアでは、ジャガイモは『第二のパン』と呼ばれ、ほとんどのスープやサラダに使われている。主人公はコックであり、ジャガイモ料理好きの娘。ドラニキ(ポテト・パンケーキ)、赤いビーツも使われたボルシチ、挽肉にジャガイモ等の入ったピロシキなど、ジャガイモ料理をたくさん御確認出来れば幸いである。ジャガイモを使って如何にさまざまな料理が作れるか知ることができる映画であった。
(2019.2.2)
216.『孤独のススメ』(原題:MATTERHORN、マッターホルン)
2013年、オランダ。監督:ディーデリク・エビンゲ。
オランダの田舎町に、妻に先立たれ一人息子とも別れて孤独な日々を過ごしている初老の男フレッド(トン・カス)がいた。起床や朝食の時間から始まり、規則正しく生きており、村人と話すのはプロテスタントの教会ぐらいのもの。
ある日、無精ひげの男が突然、車の燃料を買うお金を貸してほしいと言ってきた。しかし車は持っていない。罰として、フレッドの庭仕事を手伝わせることにする。そして、そのことがきっかけで彼の家に居つくようになる。こうして知的障害のある寡黙な男テオ(ルネ・ファント・ホフ)との共同生活が始まることとなる。
ところがテオは庭仕事の御褒美にビスケットをねだったり、夕食ではジャガイモをぐちゃぐちゃにつぶして食べたり(写真)、日曜礼拝に行く前の朝食に寝坊し、お祈りもせずにパンに手を出したり、ナイフやフォークを使わずに手づかみで食べたりと、全ての行動がフレッドと正反対な生活が始まる。
近隣住民は、一つ屋根の下で暮らす男たちをゲイだとからかったり、神の名の下、人は皆等しく受け容れられるべきと説きながら、さまざまな嫌がらせを仕掛けてくる。
しかし、フレッドは、何ものにも束縛されずに自由に振る舞うことに羨望を覚えたのか、彼を追い出さずに置き続けることになる。そして、食材の買い出しに行ったスーパーでテオが山羊の鳴き真似が得意であることを知ると、裕福な家の依頼を受けて、子供の誕生パーティーの余興を引き受けることまで始めるのだった。
心ならずも始まった共同生活を送る中、二人に友情のようなものが生まれ、さらにフレッドの規則正しい単調な日常も変化していく。さらに、妻や息子の思いも分かってきて。名曲"This is my Life"と共に人生を肯定する寛大な気持ちに浸ることになる。
(原題のマッターホルンはアルプス山脈の霊峰であり、妻にプロポーズした思い出の地。)
(2019.2.3)
217.『ラルジャン』(原題: L' ARGENT )
1983年、フランス。監督: ロベール・ブレッソン。
小遣いに不足したブルジョワ少年が親に無心するも断られる。金(ラルジャン)を貸した友人は偽札を使ってお釣りをくれればいいと唆す。彼らはその札を写真店で使う。偽札をつかまされた店の主人夫婦は、これを燃料店への支払いに使う。結果、従業員イヴォンは(クリスチャン・パティ)何も知らずに食堂で使って告発される。彼は写真店を訴えるが、店員ルシアンの偽証で責任を負わされ失職する。ルシアンは商品の値札を貼り替えて、差額をかすめ取っていたが、見つかって解雇される。だが、その掌中には店の合鍵があった。
一方、イヴォンは知人の強盗の運び屋をし、未然に逮捕され3年の実刑を受ける。その間に愛娘が病死、妻の心は彼を離れる。刑務所で、睡眠薬を貯めて自殺を図るが未遂に終わる。やがて、写真店を荒し逃げ回っていたルシアンが入所してきて、赦しを乞い、見返りに脱獄の誘いをするが、イヴォンは刑期を終えて出てきて安ホテルに泊まるが、何故か主人夫妻を惨殺し、はした金を奪って逃走。
ある村で老婆に出会い、彼女の家で暮らすようになる。彼女は、事情を知り、「私が神ならあなたを赦すわ」と理解してくれる。暴力的な義父に仕え、障害者の息子を抱え、妹夫婦の食事も作る天使のような老婆。そして、畑からジャガイモを収穫してくるシーンを見せる。ここでようやくイヴォンが落ち着いたのか、犬を撫でながら彼女の傍らに静かに座っていたり、洗濯物を干す彼女に、木の実をあげたりもする。しかし、また「金はどこだ?」と要求し、一家を殺害。こんな死についての物語であるが、ホラー映画ではない。
ラストは、レストランで男が酒を飲み、自首をして客たちから眺められながら警察に連れ去られる・・・。金の虜になった男がいたことで、不運にも偽札をつかまされたことから歯車が狂ってしまう青年の姿を心理描写なしに寡黙なドキュメント・タッチで描いた作品であった。
この映画の撮影に、映画評論家ベルナール・キュオ(1935-95)の娘で、後にフランスの映画監督・脚本家となるエマニュエル・キュオ(1964〜。当時18歳の文学部学生)が父の友人のミシェルのお誘いで立ち会っていた。そして、後年次のように述懐している。
「イヴォンがシャベルを手にし、土の中のジャガイモを掘り集める場面を覚えています。適正な音を見出すために、彼(ブレッソン)は1日半、そのショットだけに費やさなければなりませんでした。その1日半は実に感動的でした。ブレッソンが付け加える細部の合目的性に応じて、関係者も納得させられました。彼によって、最少の音が途方もない重要さをもたらします。普通は、それほどまでに音を推敲ことはありません。」
218.『ウィンターズ・ボーン』(原題:
Winter's Bone)
2010年、アメリカ映画。監督:デブラ・グラニク。
2006年に発表されたダニエル・ウッドレルの同名の小説に基づいている。19世紀、ミズーリ州の封鎖的山奥ヒルビリーと呼ばれる不毛の土地に住む17歳の少女リー(ジェニファー・ローレンス)は父親を探していた。麻薬の密造で逮捕された父は、保釈後に姿を消していた。父が裁判に出廷しないと、保釈金のかたとして家と土地が没収され、家族は路頭に迷ってしまうのだ。しかし、母親はドラックの影響なのかどうか廃人状態になっている。
吹きすさぶ北風。容赦なく降る雪。まるで互いを監視しているかのような血族。リーの属する一族にとって、掟破りは死に値する罪なのだ。リーも、父親が一族の掟(おきて)を犯したために、殺されたと確信している。リーは、12歳の弟ソニーと6歳の妹アシュリーを、けなげであるというよりは諦めからくる責任感のように世話することになる。リーは馬の餌代に困り、近所の人に馬を譲り、猟銃で野鳥を撃ち、鶏肉を調達する。近所の人はリーの家の窮状を知っているためにジャガイモとシチュー粉を持ってきてくれたりする。リーは、「負のスパイラル」状況から抜け出す手段として軍隊に志願することを決め、成長していく。
そんな時、親戚たちが父親の遺体の在処をリーに明かす。リーは遺体の一部を「送り主不明の届け物」として警察に提出することで、父の死を証明し、家と家族を守り抜く。しかし、父の兄である叔父は、弟を殺した犯人を突き止めていた。復讐は続くことになる…。
映画の途中で、愛くるしい弟妹を見せつつ、負の連鎖から逃れられないであろう運命を感じさせるシーンがある。淡々とジャガイモを切ったりするところであり、得も言われぬ暗さの中の迫力を放つ。いっぽう、ラストでリーがバンジョーをつま弾く姿には小さな光を感じさせる。
(2019.2.5)
219.『恋するシェフの最強レシピ』(英題:
This Is Not What I Expected)
2017年の香港・中国映画。監督はデレク・ホイ。
原作はラン・バイスーの小説『男人使用手册』。2017年の第30回東京国際映画祭では、ワールド・フォーカス部門で『こんなはずじゃなかった!』の邦題で上映されたもの。
ホテルのウェスタン・レストランの見習いシェフを務める29歳のグー・ションナン(チョウ・ドンユィ)は、ホテルのジェネラル・マネージャーと秘密の交際をしていた。しかし金融危機がホテルを襲い、ションナンはマネージャーと破局し同時に仕事も失ってしまう。この苦難の中、ションナンはホテルの経営の後任となった実業家ルー・ジン(金城武)と出会う。
ジンは、ビジネスにも食事にも常にパーフェクトを求める高慢な男だ。世界の味を知り尽くした“絶対味覚”を持つ彼にとって、このホテルの有名料理長が提供するメニューはどれも特別に感動できるものではなかった。 ひとり例外がいた。ションナンだけが自由な発想で斬新なレシピを編みだし、ジンの舌を満足させることに成功する。しかし、互いに顔をあわせることなく、ジンがテーマを決めて料理をオーダーすると、ションナンもプライドをかけて完璧な逸品を次々と編み出していった。(写真は美味しそうなシチュー。ジャガイモのホールも見える)
そのある種の対決がヒートアップするにつれて、ジンはその人に会ってみたいと思い始める。だが“食”を通して心を通わせはじめた二人の前に、美貌と才能で勝るシェフ(リン・チーリン)が現れる…。 ロマンティック・コメディ映画と銘打っていたが、ドキドキするラブシーンは期待できなく、ヒロインは特に美しいわけでもない。しかし、食べた人の感謝の気持ちを受けて次の創作に精を出すキャッチボールのような関係がコミカルに描かれる。
(2019.2.6)
220.『ゾンビ・ホスピタル』(英題:INSANITRIUM)
2008年、アメリカ映画。監督:ジェフ・プーラー。
ジャック(ジェシー・メトカーフ)の妹リリー(キーリー・サンチェス)は、母の死により病んでしまい自殺未遂をしたため、精神病院に入れられてしまう。ジャックが連絡をしても、リリーに会うことができなかった。こうなったら自分も入院するしかないと考え、自らの体に傷をつけて、血まみれの姿で公園に行く。警察がやってきて、ジャックは見事に病院に連れて行ってもらうことに成功する。
病室を案内してくれのは、後でふれる看護師のナンシー(オリヴィア・マン)。彼女が突然患者に襲われて、ジャックが非常警報ボタンを押して助けるが、その後ジアネッティがとんでもない人体実験をしていることを知る。
ナンシーに脱出を勧めるが、彼女は信じようとしない。妹の様子を見に行くと、彼女も病院が危険なことに気が付く。集団セラピーが行われているとき、薬の投与と手術を受けていた患者が豹変してあばれ、ナンシーは指をかじられてしまう。ジアネッティ(ピーター・ストーメア)が使っている薬は感染力が強く、ナンシーも感染し、ヴェラを襲ったりするが、その後ナンシーは、患者に首を噛まれて死亡する。
ジアネッティは、自分にも薬を投与していて、狂暴化する。それをジャックが何とか倒して縛り付ける。リリーとジャックは脱出に成功し、パトカーに救われる。患者達が外へ走り出すと、ジアネッティが彼らに向かって、「戻ってきてくれ」と叫ぶ。
この映画をここで取り上げたのは、看護師役のオリヴィア・マン(Olivia Munn)を紹介するためである。彼女はこのホラー映画の外に、これまで『Big Stan』、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』、『デート & ナイト』、『アイアンマン2』にも軽い役で出演している。
そして、彼女は、インスタグラムの中で 、
「日本産のジャガイモにはヒアルロン酸が多く含まれていて、皺対策になるのよ。ヒアルロン酸サプリとかビタミン剤とかあるけど、食事として自然に摂取することが自分の細胞システムの中に取り込む一番良い方法だと思うの」
と独自の美顔の秘訣を説明している。その効果は筆者には分からない。しかし何で日本産なのか、品種か育てる土なのか知りたいところである。原因は育ちにあるようだ。オリヴィアの母は中国系であり、彼女をつれてアメリカ空軍の男性と結婚し、父親の仕事の関係で東京に住んでおり日本産ジャガイモを口にしていた事実があり、日本でファッションモデルの経験もある、言うなれば日本育ちのハリウッドスターである。
【註。ジャガイモでん粉やグリコーゲンはブドウ糖1種類が複数結合してできているホモ多糖類であるのに対し、ヒアルロン酸は2種類以上の単糖類が結合したヘテロ多糖類であり、人の体内では蛋白質と結合する性質を持つムコ多糖類でもある。関節液や関節軟骨に含まれたヒアルロン酸は、骨と骨との間の動きを滑らかにする潤滑作用や、クッションの役割を果たす緩衝作用で知られ、皮膚のみずみずしい張りを保つ働きもある。ジャガイモはヒアルロン酸をつくるのに必要なパントテン酸とビタミンCを含むことから、効果があるとされたのかも知れない。】
(2019.2.7)