ジャガイモの出てくる 映 画  第37集

浅間和夫
 
371.『女と将軍』 (英題:The Girl and the General)
1967年、イタリア映画。監督:パスクァーレ・フエスタ・カンパニーレ。
 イタリアとオーストリアの国境地帯。逃げ遅れたイタリア兵タラスコーニ(U・オルシーニ)はオーストリア軍の陣内で将軍(ロッド・スタイガー)を偶然捕虜にする。
 捕まった将校は、ここはオーストリアの陣内だから釈放したほうが身のためだと言う。タラスコーニは敵の将軍を捕えれば1,000リラの賞金、1ヵ月の休暇、金の勲章をもらうことを考え、同意しない。かくて、イタリア軍の陣地に向って二人の奇妙な旅が始まる。途中土地の娘アダ(V・リージ)と知りあい、賞金を山わけの約束で、より奇妙な三人の旅が続けられることになる。 途中で、アダはタラスコーニを騙(だま)して賞金の一人占めを狙らう。首尾よく行ったかに見えたが、すぐタラスコーニが追ってきて、元の木阿弥(もくあみ)となってしまい、再び三人の旅となってしまう。
そうこうするうちに、アダとタラスコーニはしだいに愛しあうようになり、将来の計画などを話しながら旅を続ける。困難な時、特に食糧が不足の時などは、アダのグラマラスな肢体を活かすことにする。つまり、ジャガイモが欲しいときはアダの裸を見せ、それに見とれた農民からジャガイモをもらうと言う具合である。
 イタリア軍陣地が目の前に見えた頃、地雷原にぶつかった。そしてタラスコーニは吹きとばされアダも足をいためて動けなくなってしまう。助けを求めに行こうとする将軍に、アダは、側にいて欲しいと言ったものの、間もなく息をひきとってしまう。そこへイタリア兵がやってくる。将軍は、自分は、死んでいるこの二人の捕虜であったと説明するも、イタリア兵には信じてもらえない。彼らは、二つの死体を運び、将軍をつれて自分たちの陣地へと、戻って行った。かくて、三人の皮肉でコメディな道中記は幕引きとなる。

372.『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 (The Imitation Game)
 2014年、アメリカ・イギリス映画。監督:モルテン・ティルドゥム。
 同性愛が犯罪とされていた時代のことアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は男娼と酒場にいたところを目撃され、わいせつ罪の疑いで逮捕される。担当刑事の追求により、50年以上隠し続けた自分の驚愕な偉業について語り始める。
 1928年ころ、イギリスの寄宿学校に通う若きチューリングは、数学が飛び抜けて出来たことが異質とされ、いじめを受ける毎日を過ごしていた。食堂でニンジン、エンドウ、蒸かしたジャガイモが並ぶ(写真。近年でもこれにブロッコリーを加えたのに出会うことが多い)トレーを頭から被せられたり、教室の床板を剥がして下に閉じ込められたりしする。そんな彼を庇ってくれるクリストファーがおり、彼にほのかな恋心を告白しようとする矢先、結核により他界してしまう。そして1939年、イギリスがドイツに宣戦布告する時代となる。優秀な数学者へと成長したチューリングは、政府暗号学校「ブレッチリー・パーク」で、海軍のデニストン中佐との面接を経て、解読不可能と言われたドイツ軍の暗号機「エニグマ」の解読に携わることになる。役に立たない仲間をクビにし、クロスワード・パズルで選抜したケンブリッジ大卒業の才女ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)、ヒュー・アレグザンダー、後日わかるソ連の諜報員ミンギスらからなる暗号解読チームである。今日コンピュータと呼ばれるようになる装置を作るには多額の資金が必要と中佐に頼むが拒否される。そこでチューリングはチャーチル首相に直接手紙を書き、何と許可を得ることに成功し、首相から暗号解読チームのリーダーに任命される。しかし、周りの無理解と装置の完成・暗号解読までに日数がかかったため、しびれをきたした中佐は、装置の破壊とチューリングの解雇を求める。ジョーンの助言で仲間の気持ちを汲むようになっていたことが幸いしたのか、仲間が中佐を説得し、1カ月間の猶予をもらうことに成功する。その大切なとき、年頃のジョーンが両親から結婚を急かされ、職場を辞めると言いだす。彼女の才能を買っていたチューリングは、同性愛嗜好であることを告げずに、彼女と婚約し離脱を防ぐ。
 猶予が迫ったある日、特定の3つの言葉だけを解読するように装置を設定することで、解読に成功する。装置は即座に暗号の解読に成功。同僚たちは歓喜し、さっそくドイツ軍の作戦を阻止させようとするが、チューリングに「解読された通信に逐一反応してしまっては、エニグマが破られたとドイツ軍に知られてしまう」と指摘し、無念さを感じている仲間と重要書類を焼却処分し、チームは解散し、世間に知られないまま各自普通の生活に戻って行くのだった。
 冒頭の1952年、同性愛という淫らな行為を犯したとしてチューリングに有罪判決が下る。2年の服役か化学的去勢の選択を迫られた彼は、仕事を続けるために後者を選択するが、副作用により手足が震えて日常生活にも事欠く状態になる。訪ねてきたジョーンはチューリングを励ますために、チームの成果が戦争終結を早めて多くの命を救ったことを思い出させ、――「誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げることだってある」と語りかけるのだった。
 作品の最後に流れた字幕にて、彼が41歳の若さで自らの命を絶ったこと、同じ罪名のもと4万9000人もの人々が有罪判決を受け苦しんだこと。そして、2013年に英国はチューリングに対して正式な恩赦を発行したことが付記されて幕を閉じる。なお、タイトルにもある「イミテーション・ゲーム」とは、「人間のふりをしたコンピュータに対して、人間が行うテスト」を指す。

373.『ホステージ』 (Hostage)
 2005年、アメリカ映画。監督:フローラン・シリ。
 ロサンゼルス市警の敏腕交渉人だったタリー(ブルース・ウィリス)は、1年前の人質事件で失敗を犯し心に深い傷を負ったことから交渉人を辞して、小さな町の警察署長になり、妻、娘アマンダ(ルーマー・ウィリス)と生活している。この町で、デニス、ケヴィンの兄弟と、彼らと3週間前に知り合ったマースの3人組が、高級車を盗もうと豪邸に忍び込んだ。そのスミス邸にはウォルター(ケヴィン・ポラック)と10歳の息子トミー(ジミー・ベネット)、14歳の娘ジェニファー(ミシェル・ホーン)がいた。トミーがとっさに無音警報のボタンを押したため、婦人警官が駆けつける。
 スミス邸の若者たちは警官隊に囲まれ、立てこもることになる。スミス邸は防犯カメラやパニックルームなどセキュリティ・システムを完備しており、それが逆手にとられ、容易に近付くことのできない難攻不落の要塞が出来上がった。長い夜の始まり、同時にタリーには人質の幼い少年を犠牲にしてしまった過去の悪夢が襲い掛かる。人質交渉は二度とやるつもりはない。
 だが、運命はタリーを放って置いてはくれなかった。妻のジェーンと娘アマンダが“ある組織”にさらわれたのだ。スミスは巨大な犯罪組織のマネーロンダリング(資金洗浄)に手を貸している会計士であり、娘を人質にとった組織が必要とする機密資料が保管されていたのだ。タリーの前に現れた謎の男は、組織の者が到着し、機密資料が入ったDVD-ROMを見つけるまではタリーが現場を指揮し、邸宅に誰も入れるなと命じる。さもなくば妻子の命はない、と。最も愛する者たちのために、ほかの家族を犠牲にするのか、それとも…? タリーは究極の選択を迫られ、続く命がけのシーソーゲームが迫るのか...。
 筆者の関心は、『ダイ・ハート』、『デス・ウィッシュ』などに出演し、お得意の銃をかまえる独特ポーズのブルース・ウィリスがこの映画ではその娘ルーマー・ウィルスと共演していることにある。ブルースの容貌を拝見すると頭部の毛はきれいに消失しピカピカ、正にジャガイモ似の俳優である。彼と2000年に離婚したが今も親しくしている女優デミ・ムーアとの間に生まれた長女のルーマー・ウィルス(1988〜)は、鼻の下から顎までが長めであり(写真)、ゴシップサイトPEREZ HILTON.COMなどで、『ジャガイモ』、『ポテトヘッド』、『不細工なイモ』などと呼ばれことがある。ルーマー本人もかって、
「父に似たあごが嫌いだったの。母は美しいのに、わたしは『ジャガイモ』って呼ばれているでしょ。だから美容整形が必要だと思い詰めたのよ」と語ったこともあるが、髪を金髪に染めたりして頑張っている。アメリカではジャガイモという形容詞は女性につけることが多いのは何故であろうか。
 (写真はブルース・ウィルスの娘ルーマー)

374.『ワン チャンス』 (One Chance)
 2013年、イギリス映画。監督:デヴィッド・フランケル。
 ポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)少年は、1985年頃、ロンドンの西方およそ200kmにあるウェールズに住むいじめられっ子であったが、歌だけは得意であり、夢はオペラ歌手になることであった。成長して携帯電話ショップの店員となる。ある日店の先輩のお節介により、初めてメル友に会うことができる。その日は、花屋が休みで、なんと懐中電灯を買ってプレゼント。デートの途中で母と会い、そのガールフレンドのジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)を家に招くことになり、ジャガイモ料理でもてなされる。
 ジュルズに背中を押されて夢を叶えるためヴェネツィアに留学する。オペラ教室では、相手女性を本気で愛さないと上手くなれないと言われ、共演者の女性と熱愛行動を共にし、彼女の家にも行くことになる。その家庭でもジャガイモが出てきて、ジャガイモ好きおばあちゃんから沢山入った皿を回されるシーンがある。しかし、憧れのパヴァロッティに自信のなさを指摘され、「君は一生歌手になるのは無理」と酷評されてしまう。失意での帰国となり、携帯電話ショップの店に戻り、例の先輩と外に出て、白紙に載ったチップスことフレンチフライを食へるシーンがある。映画の最初のころ彼と歩く街でもフレンチフライと白魚を出す御存知のFish & Chips店の看板がチラッと出てくる。
 その後、ジョルズに会いに行くが、落選報告をサボったことをなじられる。去る彼女を美声で振り向かせ、結婚に漕ぎ着けるものの、交通事故、虫垂炎や甲状腺の腫瘍の手術など不幸が連続する。ジョルズが2か所掛け持ちで働いても、それらの治療のための借金を抱え、玄関の呼び鈴が鳴ると夫婦で隠れる日々が続く。
 そんな2007年のある日、ジュルズが"素人からのスター発掘"を謳うTV番組を見つけ、自信消失していた彼を励まして"ケイタイ・ショップの店主がオペラを歌う"ことで参加する。彼の歌声に心頭した人々の大拍手や司会者の涙が見られ、10万ポンドをゲットし、レコードも売れる。住む家も買うことができ、ジュルズが料理をつくる。そんなシーンで、ピーラーでジャガイモの皮を剥いていた(写真)。
 こうして発掘されたダイヤモンドの原石は、その後世界的オペラ歌手へと成長する。筆者にとっては、イギリスの一般家庭におけるジャガイモの地位がわかるような映画であった。

375.『ミステリと言う勿れ Episode 1』
 2022年、テレビドラマ。プロジューサー:草ヶ谷大輔 熊谷理恵。
 「月刊フラワーズ」に連載した田村由美の作品をフジテレビが映画化したもの。
 秋の晴れた朝、「今日はカレー日和」と深鍋で調理(写真)している大学生久能整(ととのう、菅田将暉、すだまさき)の所に刑事の藪(遠藤憲一)と池本(尾上松也)がやって来る。近所の公園で殺人事件があり、遺体で発見されたとして大隣署への任意同行を求められる。死体は大学の同級生である寒河江だった。殺人などやっていないと主張するが、連日出頭を求められ取調室で追求されるが、淡々と否認する。その間に逆に刑事らは、久能により雑談、言動などから過去や日常生活が分析され、効果的な助言を貰っている。すなわち、久能は記憶力、推理力に優れ、心の洞察や解析も凄く、容疑者なのに信頼を勝ち得ていくところが面白い。
 学友寒河江の車が3年前藪警部補の妻と息子をひき逃げしていた真実が分かる。続いて1年半ほど前大学で寒河江の近くにいた久能が帰り際鍵を落としたことがあり、寒河江に目を付けていた藪が拾い、合鍵を作っていて、久能を殺人犯に仕立てて家族の敵と考えられる寒河江を殺そうとしたことが分かってくる。藪は寒河江が犯行を自供し出頭すれば殺す気はなかったが、ひき逃げを認めなかったために殺したと犯行を認めることになる。
 かって、寒河江は夏休みが明けると成績低下を理由に親から車を取り上げられ、その後先輩たちに乗り回されていたとぼやいており、先輩らによって頻繁に金銭を脅し取られていた。このため、久能は藪の妻子を轢いたのは寒河江ではないと推測する。これが的中する。風呂光聖子(伊藤沙莉)巡査が事情聴取した人物が、寒河江の車で妻子を轢き逃亡していたこと自供する。
 久能は言う、「事実はひとつしかないが、真実は人の数だけ変わる。そんな見方(正義も)の違いで、戦争まで起こしてしまうこともある。」と。そんな雑学の披露も面白い。男が主体の仕事人間が集い、可笑しな組織を守る人が中心の職場にメスを入れることになる。久能の語りから、池本も奥さんの小さな苦労を理解してやる優しい側面を見せるようになったりする。事件の解決には、当初から無実と推定していた風呂光巡査が影で協力しており、危うくえん罪になるところを救う活躍を見せる。
 Episode 2の予告でもカレーを食べようとしているところから始まる。久能にとって良く晴れた土日が「カレー日和」であり、時間をかけてジャガイモの形がなくなるまで煮込むのが大事らしく、タマネギはいつもたっぷり使っている。そして肉は鳥や牛ばらブロックなどを使い、トッピングはコロッケかメンチかつなどである。久能はこのようなカレーライスは好きだが、カレー味がするものは嫌いと言い、土曜日の雨の日にはポテトサラダを食べに行くとか。

376.『お葬式から事件は始まる』第1話 (原題:Vier Frauen und ein Todesfall)
2005年、オーストリアテレビドラマ。プロデューサー:イサベレ・ヴェルター。
 原題を訳せば『4人の女性と1人の死』となる。即ち、好奇心旺盛で、年齢も人生経験も異なる4人の女性が犯罪の匂いを嗅いで、解明するのを趣味としているコメディ話である。4人とは、家庭菜園を愛する行動派のユーリエ(アデーノ・ノイハウザー)、パブの店長マリア(ブリギッテ・クレン)、若きシングルマザーのサビーネ(マルティナ・ペール)、そして後から参加するヘンリエッテ(ギャビー・ドーム)のことである。
 アルプスにあるイルムという村で、心臓外科医のハインリッヒ・カスパーが看護師のピア・ホルツァーから薬を貰ってから関係したところ心臓発作で急死する。葬儀ではハインリッヒの妻が「鳥の餌」のような食事(健康食とも言う)を続けていたからだと陰口たたいたり、バイアグラを呑まされてやったから腹上死したとか言い出したり、ユーリエが病院から強心剤がなくなっていることを聞いてきたりする。この二種を呑まされたのではないかと、医師シュテファンに遺体を掘り起こして再鑑定をするよう頼んだりし始める。
 そんなおり、驚愕の事実が判明してくる。ハインリッヒは20年前に、助手が開発した画期的手術法を自分がしたことにして発表し、助手を追い出していた。その人こそシュテファンであり、自力で病院を建て8年間経営を続けてきたのに、ハインリッヒはまたもその病院を乗っ取っていた。そんな確執があるなか夫を亡くした喪主ヘンリエッテ医師を尊敬していたシュテファンが犯人と分かる。そして罪悪感にかられて自殺を選択してしまう。
 終わり頃の食事では彼女らのところにドイツ語圏などの料理の付け合わせで見られるクネーデル(ドイツ&オーストリア風団子)の大きいのが給仕された(写真)。この時は色が白いものだったので、生のジャガイモを摺り下ろしたものに茹でてマッシュポテト状に潰したものを混ぜて球状に成形してから、改めて茹でたものと思われる。なお、劇中のイルムという村は架空の地名であるが、実際の撮影は、オーバーエスターライヒ州のザルツブルクに近いファイステナウと言う美しいところで撮影されている。

377.『恋せぬふたり』第1話
 2022年、NHKテレビドラマ。演出:野口雄大、押田友太、土井祥平。
 スーパーまるまる本社営業戦略課勤務の兒玉咲子(さくこ、岸井ゆきの)は、会社の後輩が企画した「恋する〇〇」キャンペーン(写真はそのひとつの"恋する肉じゃが")の商品を見に支店を訪れる。後輩の面倒見も良く周囲から慕われる性格であり、普段隣席の後輩も自分を愛していると錯覚している。しかし彼女から恋愛感情が全くないことを告げられ、しばらく会社を休むことになる。咲子はその業務も引き継ぐことになり再度スーパーを訪問し、展示を担当している高橋羽(さとる、高橋一生)と言葉を交わす。
咲子の母親は結婚を急がし、会社でも、周りからず〜と未だかい、ポンコツかいと言われるほどの恋愛することを前提とした社会になじめず日々暮らしている。高校時代からの気心の知った親友門脇千鶴(小島藤子)と恋・愛・面倒無しのルームシェアを計画するものの千鶴が元カレとヨリを戻して、ドタキャン。「運命の相手を見つけるといいね」と捨てセリフを投げて出て行ってしまう。
 心が折れそうになった咲子はその気持ちをブログに書き込む。それに他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」と書いて反応している人を知る、それがカレーうどんのことも書いており、それが売り場の高橋だと知る。喫茶店は目立つと、すぐ近くの高橋の家に行き、考え方を披瀝しているうちに「恋しない人間もいる」と言われハッとする。そして、「恋愛感情抜きで、家族になりませんか?」という咲子の同居提案に首をかしげる高橋であったが最近悩まされているお節介な御近所さん対策になると思い直し受け入れることになる。
 第1話はこのような恋もセックスもしない二人の関係を描いたコメディドラマのスタート話。今後どんなことで振り回すのか。脚本家の吉田恵里香は「恋愛は幸せの選択のひとつにしか過ぎないこと。誰かの生き方に他人がとやかく言うものではないこと、等々…恋愛至上主義の世界では忘れられがちな事柄たちです。本作では、それらに真正面から向き合いました。」と語つている。知らずのうちに、周りが決めた『当たり前』に振りまわされ、疲れているかも知れない人には見て欲しいドラマかも。

378.『イコライザー』
 2014年、アメリカ映画。監督:アントワーン・フークア。
 かってCIAの工作員であったマッコール(デンゼル・ワシントン)は、引退後ボストンのホームセンターに勤務し、ひっそりと生活していた。ある夜、テリーと名乗る少女娼婦のアリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)がロシアンマフィアのスラヴィにひどい扱いを受けているのを知ったことから、警察に寄らずに悪と立ち向かうことを決意する。静かな怒りに燃える彼は、スラヴィ含め、その場にいたギャング5名を、その場にある物だけ用いて30秒足らずで殺害してしまう。
スラヴィのボスであるウラジミール・プーシキンは、部下で頭脳明晰なテディ・レンセン(マートン・ソーカス)をボストンに派遣する。マッコールを犯人だと確信するテディであったが、襲撃は失敗し、彼の経歴を洗っても正体もわからず、テディはますますマッコールに興味を持つ。一方、マッコールのはテディが元KGBの難敵であること、また一部のボストン市警の刑事が彼らに加担していることを知る。さらにマッコールは次々とプーシキンの拠点を破壊し、彼らの東海岸における活動自体が危ぶまれるほどの事態となる。
 ある日、テディは戦力をかき集め、ホームセンターの店員を人質に取って、マッコールを港へ誘き出す策に出る。しかしマッコールはテディを出し抜いて人質を救出すると、逆にホームセンターで彼らを待ち受ける。地の利と殺しの道具が豊富なホームセンターを舞台に、テディたちは成す術なくマッコールに殺されていく。その後マッコールはモスクワに行きプーシキンの屋敷に潜入すると、彼を電気の罠に掛けて殺害する。後日、ボストンで再び平穏な生活を送るマッコールにアリーナが声を掛けてくる。マッコールは自分を"イコライザー"と認識し、自分のもつ高い能力を必要とする人たちのために使おうと決意するのであった。
 筆者の関心は、ホームセンターで働くラルフィ(ジョニー・スコアーティス)。彼は警備員になりたいのであるが採用試験で体重も審査されるため、90kgのタイヤを引いて救助のトレーニングに励んだりしている。太りすぎの人にはカロリーの高いポテトチップスは禁止であるが、野菜と無卵マヨネーズを挟んだサンドイッチだと食べているが。噛む音でマッコールに見つかって、「ツナの骨を噛んだ音です」と言い訳するも、取り上げて確認されてしまう(写真)。ばつ悪そうにポテトチップスを退かしていく。そこでマッコールは、「だらしないなぁ」と優しく叱かるシーンがある。

379.『長津湖』
 2021年、中国映画。監督:チェン・カイコー、ツイ・ハーク、ダンテ・ラム。
 映画の中の説明はないが、ソ連のスターリンの同意と支援を取り付け、アメリカは韓国を支援しないと考えた金日成労働党委員長率いる北朝鮮軍が1950年6月38度線を越えて韓国に侵略戦争を仕掛けたことによって勃発したのが朝鮮戦争である。当初その北朝鮮軍が朝鮮半島のほぼ全てを占拠する。しかし国連軍(アメリカ軍他)が介入することとなり、逆に北朝鮮軍を中朝国境近くまで追いつめる。連合軍総司令官ダグラス・マッカーサーはかって一緒に日本を倒した中国が参戦してくることは無いと踏んでいた。しかし、この映画ではここで数で勝る中国人民志願軍が参戦することになる。北朝鮮の北部は山岳地帯で天然の要塞。映画はその長津湖(ちょうしんこ)周辺で1950年11月末から12月にかけて行われた「長津湖の戦い」に参戦し連合軍と戦った中国人民志願軍を愛国の英雄として描くものあり、中国では大ヒットした。
 連合軍側兵士を、ほぼ10倍の兵により二重に包囲し、物資の補給を絶ってやる時期もあり、撤退に追い込むことに成功する。筆者の関心は戦意高揚よりも、米兵士が感謝祭の七面鳥の足を食べるている一方で、中国側七連隊の連隊長の弟である伍万里(イー・ヤンチエンシー)は薄いジャケットを着て、厳しい寒さの下の戦闘の合間に凍ったジャガイモを食べるシーンにあった(写真)。
 蛇足になるが、中国の動画系メディアの『白鹿視頻』によると、江西省の頼と言う人がこの映画のシーンをまねて冷凍馬鈴薯(ジャガイモ)をかじったところ、歯周炎(歯槽膿漏)のため歯が緩んでずれてしまい、病院で3本抜くことになってしまったと言う。さらに近年、中国の多くの地域では、クリスマスやイブを祝うなどの外国の祝日を禁止し、公的広場に飾っているクリスマスツリーを倒す事例とか、「外国人に媚びるな、長津湖の戦いを思い出せ、当時の革命殉国者を思い出せ、彼らはクリスマスイブに何を食べたか?」と書かれていたとか、2021年には、ジャガイモ1個を紙箱に入れ「クリスマス禁止」とプレゼントをしている例もある。長津湖の戦い以降、中国は世界で一番近隣諸国と紛争を起こしている国へと変わっているのは残念なことである。

380.『ジェシー・ジェームズの暗殺』 (原題: The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford)
2007年、アメリカ映画。監督:アンドリュー・ドミニク。
南北戦争(1861-65年)後、ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)は、その兄フランク(サム・シェパード)と共に率いる仲間と25の強盗や殺人をやり、全米に知られていた。19歳の若者ロバート(ボブ)・フォード(ケイシー・アフレック)はその記事や関連本を読んで憧れ、兄チャーリー(サム・ロックウェル)に付いて一味に加わる。1881(明治14)年、34歳のジェシーは最後の仕事として仲間を集めミズーリー州で、夜に列車を止め、乗客や金庫から金品を奪う。その後隠れ家であるカンザスシティーで1879年から農場を経営し、弟3人を養育しているハワード家の未亡人マーサのところに行くが、その時レシピらしきものを見ながらナイフでジャガイモの皮を剥くシーンが見られる(写真1)。映画の舞台となるこの地方では雪も見られるが、比較的温暖な地方であり、まだ南軍支持者のいるところである。
指名手配を受けている男達は、分散したり、会ったりしながら次々と移動しなければならない。ある日ジェーシーのいとこウッド(ジェレミー・レナー)がボブのいる農場にやって来る。実はウッドの継母に手を出したディック(ポール・シュナイダー)もチャーリー達の農場に隠れていた。仲間争いから、ボブは思わず、ウッドを撃ち殺してしまう。ジェシーが来て夕食となり、チャーリーの怪我を不審に思い、訪ねるがボブが如何にジェシーに憧れてきたかを話したり、自分とジェシーの間にどんな共通点があるかについて話す。その時またもジャガイモが出てくる。ボブはジェシーに粉吹きいもを渡し、自分もつっつきながら、話を誤魔化す(写真2)。そんなことが重なり、ジェシー自身も精神に不安定を生じ、不眠症になって、占いに頼ったりして神経をすり減らす。
 ついに、ボブはジェシーの所在を警察に密告する。ジェシーがある朝新聞を持って帰って来る。新聞はディック(写真2右端)逮捕を報じていた。、ジェシーはボブに疑いの目を向け、ボブとチャーリーは緊張を強いられる。ジェシーは拳銃を外し、壁に掛かった絵の汚れを拭こうとする。その瞬間にボブは背後からジェシーを撃ち殺す。そしてチャーリーと逃げ出し、警察に電報を打つ。  ジェシーの遺体は写真に撮られ、多くの人が遺体を見るために自宅を訪れる。ボブとチャーリーは暗殺の様子を描いた演劇に出演するようになり、チャーリーがジェシー役を演じる。しかし、ボブは臆病者との野次を浴びて聴衆に殴りかかる。チャーリーはしだいに精神を病むようになり、自殺してしまう。ボブも歳月と共に暗殺を後悔するようになる。そしてある日、ボブは熱狂的なジェシーのファンにより撃ち殺されてしまう。以上実在の人の話を元にしている。


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