ジャガイモの出てくる 映 画  第38集

浅間和夫
 
381.『愛と青春の旅だち』 (原題:An Officer and a Gentleman)
 1982年、アメリカ映画。監督:テイラー・ハックフォード。
 ザック・メイヨ(リチャード・ギア)は、13歳のときに母親が服毒自殺し、水兵の父バイロン・メイヨに引き取られることになり、フィリピンのマニラの軍港に来て父親と会う。その父は、現地の売春婦に溺れる生活破綻者であり、ザックも現地の子供から略奪や暴力を受けて育った。父と帰国して大学を卒業後、シアトルにある海軍のレーニエ航空士官候補生学校に入学するために家を出る。この父は自分より上になることを目指す息子をそんなことは出来っこないと否定する。
 士官候補生学校では、担当教官のフォーリー(ルイス・ゴセット・ジュニア)海兵隊軍曹が、生徒たちを心身両面で鍛えあげるため、徹底的に教育する。そんなある日、ザックは市民との懇親パーティで製紙工場で働く女性のポーラ(デブラ・ウィンガー)と知り合う。街には士官の卵を狙う女性、卒業まで交際した末に捨てられた人やその家族がいる。学校の訓練はペナルティを含め全て厳しく、精神も肉体もギリギリまで絞り込まれる。友人のシドも卒業したらペンサコラの航空基地行きの人を狙う現地女性と交際し、妊娠したと聞かされたり、卒業出来ないと言われたりで、青春にはもめごとが絶えない。
 ザックはポーラの誘いで彼女の家を訪問する。母親はかって学生と結婚したが破れ、二度目の男と住み、娘も士官になる前だけ遊ぶ男に惚れたものと思い、皆白い目で見ている。しかしここで、テーブルでは大皿に白いマッシュポテトが載り、回ってくるシーンがある(写真)。マッシュポテトは余るほどあるが、カップルは席を外しオートバイで出かける。その後卒業直前のサバイバルなどで、疎音となり、友人シドも女性の妊娠騒ぎに遭遇し、騒ぎが尽きない。シドとの友情は一環して固く、フォーリー軍曹と格闘することもあり、青春ドラマは続く。
 連絡疎遠で揉めたポーラとは彼女の働く現場に乗り込み、恋は成就する。晴れて少尉となって卒業し、士官(Officer)となる。紳士としての自覚もついたようである。オートバイで学校に行ってみると、かっての風景通り、軍曹が新人をしごいており、また新たな恋と友情の物語が始まろうとしていた。

382.『卒業』 (原題:The Graduate)
 1967年、アメリカ映画。監督:マイク・ニコルズ。
 アメリカ東部の大学で学業もスポーツも優秀な成績で卒業したベンジャミン・ブラドック(ダスティン・ホフマン) は空路でカリフォルニアへ帰郷する。しかしその顔には覇気がなく、今後の進路も決まっていない。両親は会社を経営している裕福な家である。ベンジャミン祝福を祝うパーティーで、仕事のパートナーであるミスター・ロビンソンの妻(アン・バンクロフト)と会い、家まで送るよう求められ、夫と性的関係のない彼女から誘惑されてしまう。断るが、欲望を捨てきれず電話して会うことになり、一線を超えてしまう。それからはなし崩しにように毎夜、情事に身を焦がすことになるが、虚無感は続く。心配した両親は、同時期に北部のバークレーの大学から帰郷した幼なじみのエレーン・ロビンソン(キャサリン・ロス)をデートに誘えという。ベンジャミンは一度きりのデートでわざと嫌われるようにし向けるはずが、エレーンの一途さに打たれ、二度目のデートを約束してしまう。
 最初のデートのとき、ハンバーガー店のテイクアウトを車中で食べる。セットでつくフレンチフライをそれぞれ食べるシーンがある(写真)。
 ミセス・ロビンソンからもし娘と付き合と、私との関係をばらすと忠告されていたが、しだいにエレーンの素朴さに惹かれていく。思い余ったベンジャミンはエレーンに、正直に話す。怒ったエレーンは大学に帰るが、ベンジャミンは大学に押しかける。彼の気持ちを受け入れかけるが、退学して医学部卒業の男と結婚することにする。ベンジャミンはサンタバーバラにある教会に駆けつけ、エレーンと新郎が今まさに誓いの口づけをした場面で叫ぶ。「エレーン、エレーン!」。ベンジャミンへの愛に気づくエレーンはそれに答える。「ベン!」。阻止しようとする人々を払い、二人は手に手を取って教会を飛び出し、バスに飛び乗る。バスの後部席に座ると、二人の喜びはやがて未来への不安に変わり、背後に「サウンド・オブ・サイレンス」が流れる。

383.『タンポポ』
1885年、邦画。監督:伊丹十三。
長距離タンクローリーの運転手ゴロー( 山ア努)とガン(渡辺謙)がとあるさびれたラーメン屋に入ると、店のタンポポ(宮本信子)が幼馴染みの太った男ビスケンにしつこく交際を迫られていたところだった。それを助けようとしたゴローだが逆にやられてしまう。翌朝、タンポポに介抱されたゴローは商売繁盛を夢見るタンポポから指導を求められる。
 次の日からマラソンなど体力作り、他の店の視察と特訓が始まった。タンポポは他の店のスープの味を盗んだりするが、なかなかうまくいかない。ゴローはそんな彼女を、食通の乞食集団と一緒にいるセンセイという人物に会わせた。それを近くのホテルの窓から、白服の男(役所広司)が情婦と共に見ている。“来々軒”はゴローの提案で、“タンポポ”と名を替える。ある日、ゴロー、タンポポ、ガン、センセイの四人は、そば屋で餅を喉につまらせた老人を救け、後日老人が“タンポポ”を町一番の店にする協力者となる。
 ある日、ゴローはピスケンに声をかけられ、一対一で勝負した後、ピスケンも彼らの仲間に加わり、店の内装を担当することになる...。”品よくパスタを食べるマナーお勉強会”があり、先生(岡田茉莉子)の指導でパスタをスプーンに乗せて、音を立てずに食べる練習をしている脇で、豪快に音を立ててパスタを食べる外国人が居たりと、本筋とは関係の無い10を越える食文化の皮肉入りエピソードをオムニバス形式に構築していく。やがて、タンポポの努力が実り、ゴロー達が彼女の作ったラーメンを「この味だ」という日が来た。店の改装も終わり、“タンポポ”にはお客が詰めかけ、行列が続く。それを確認したゴローはタンクローリーに乗ってガンと共に去っていく。
 筆者の関心は、ラーメン屋を復活させるコメディよりも、映画冒頭のスクリーン側から映画館内を撮したシーンにある。すなわち、上映前、最前列に三つ揃えのスーツと粋な帽子を被った白服の男(役所広司)が、情婦を連れて座る。「こんなところでポテチやセロファンの音を立てられるのは嫌いだ」、言うや否や近くの若いカップル(松本明子、村井邦彦)が、ポテチを大袋から取り出し”パリバリ”とやる。男は近寄り、「もし、映画が始まってこれを食べる音が聞こえたら、俺、お前を殺すかもしれないからな」と若い男の胸倉を掴む(写真)。
 近年の映画館では、フライドポテトやポプコーンは売られているが、ポテトチップスは食べた時や指に油がつき椅子を汚したりするため販売していないことが多い。昔は、2本立ての合間などに売り子さんが『え〜お煎にキャラメル、甘納豆に南京豆』とかのかけ声で、これ等やお茶、ジュース、まんじゅうなどを売って利益を上げていた時代があり、懐かしい。その頃は携帯機器の音や振動などは無かったが、いびきは聞けた。

384.『戦争と平和』 (原題:War and Peace)
 1956年、イタリア・アメリカ映画。監督:キング・ヴィダー。
 19世紀初頭のモスクワでナポレオンが率いるフランス軍が侵入してくる噂のあるころ、ベズコフ伯爵の庶子で進歩的青年ピエール(ヘンリー・フォンダ)がいた。彼はロストフ伯爵家と親しく付き合っており、そこにはお気に入りの娘のナターシャ(オードリー・ヘップバーン)がいる。しかし、まだ少女である。
 ロストフ伯爵家では、長男ニコラス(J・ブレット)が出征し、見送ったピエールは道楽者の友人ドロコフのパーティで乱チキ騒ぎをする。無二の親友アンドレイ公爵(メル・ファーラー)の知らせで、危篤に陥った父の病床へ急ぐ。臨終に立ち会ったクラーギン公爵は娘のヘレーネ(アニタ・エクバーグ)に彼を誘惑させようと思いつく。アンドレイは最近、妻リーゼ(ミリ・ヴィターレ)との仲が気まずく、妊娠した妻を田舎の邸へと送り、戦場へ赴く。ピエールの方はヘレーネとの結婚準備に忙殺される。
 アンドレイは総司令官の幕僚としてチェコに出陣するが、負傷して敗戦となる。休戦条約が結ばれ、将兵はモスクワへ戻る。リーゼはお産で死ぬ。ヘレーネは派手好みであり、ドロコフを誘惑する。ピエールはピストルの決闘で彼を傷つけた上、ヘレーネと別れる。ナターシャはアンドレイと愛し合うようになるがアンドレイは戦地に向かう。そんなときオペラでヘレーネの兄アナトールに言い寄られる。しかしアナトールは、ボロディノの決戦で戦死し、アンドレイは重傷を負い、ピエールも負傷する。
 戦いはロシアに不利となり、人々はモスクワを去る。負傷者の中のアンドレイはナターシャに抱かれつつ絶命する。ピエールは街に一人残って馬上のナポレオンを撃とうとするが実行をためらい、仏軍の捕虜となる。ピエールは暗い物置のような獄中で農民プラトンと一緒になる。空腹のピエールに向かって、
「ジャガイモは好きか? 昨晩のメシはスープと(主食のパンではなく)ジャガイモだった。」
と懐から皮付きのジャガイモ1個を取り出し、ナイフで半分に切り、半分を小犬にあげ、残りに塩を一振りかけてから彼にくれる(写真)。
 ナポレオンのモスクワ撤退の際、ピエールはコサック騎兵に救われる。ロシア軍総司令官ミハイル・クトゥーゾフは、ナポレオン軍をモスクワに誘い込み、そこで大軍を野宿で足踏みさせ、遠く糧食を運ばせ、疲弊、消耗させ、冬を待つ作戦に出る。1812年の11月も末の雪の降る時期となり、ナポレオン軍は自滅のようになり、ネマン川の橋でとどめを刺され、去って行く。戦後、ピエールがモスクワの荒廃したロストフ邸を訪ねてみると大人になったナターシャが待っていた。

註:オードリーにとってこの映画は最初のカラーである。小説ではジャガイモは2回で出てくるが、映画では会話を多少アレンジし、1回であった。それは皮付きの焼き芋と思われ、ナポレオン軍から与えられたもの。フランスでは1770年の飢饉の際募集した論文で1等となつたパルマンティエ(1813年76歳で他界)の影響により、ナポレオン時代のジャガイモ生産量は急カーブで上昇し、この戦いの頃は兵士にも与えていた。一方ロシア側はピョートル大帝(在位1682−1725)が若い頃イギリスやオランダにいるときジャガイモの重要性を認識したのかジャガイモ1袋を本国に送ったことがあったが、国では聖書にもない食べ物であるなどとしてほとんど普及していなかった。この戦いの後になっても、食べると癩病になるなどの話もあり、1842年には作付け強制に反対する一揆を起したほどであったが、国の説得は成功し、翌年には作付けが強化された。ちなみに、我が国で高野長英が『救荒二物考』(きゅうこうにぶつこう)を著したのは1836(天保7)年のことである。

385.『ジェファソン・イン・パリ/若き大統領の恋』 (原題:Jefferson in Paris)
 1955年、アメリカ、フランス映画。監督:ジェームズ・アイヴォリー。
 フランス革命の前夜のパリー、国内にジャガイモを広めようとしたルイ16世はジャガイモの花をボタンホールに挿し、マリー・アントワネッは髪に飾った、と言う話が残っている時代の話である。
 映画では、1785年、アメリカのトマス・ジェファソンは後にファースト・レディとなる長女パッツィを伴い、合衆国大使としてフランスに赴任して行く。彼は2年前に最愛の妻を亡くしており、悲しみのなかの海外生活となった。しかしパリのフランス王室の宮廷生活は華やかなものであった。それを横目にアメリカのために東奔西走していた。ある日ヴェルサイユ宮殿においてラファイエット侯爵が主催するパーティの席上でイタリア人女性マリア・コズウェイと出会い、その魅力に心を奪われるのだった…。
 以下、映画にはそのシーンは見られないが、書いて置きたいものが山ほどある。ジャガイモはハンセン病を引き起こすなどとして1748年ジャガイモ栽培禁止の法律を作っていたフランスに、オーストリアと組んで、イギリス、プロイセン(現ドイツ)等と戦った七年戦争で軍の衛生兵として参加した時にプロイセン軍の捕虜になり、ジャガイモのすごさを知ったアントワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエが帰国した。彼は文頭のようにルイ16世らにジャガイモの重要性を理解してもらったものの一般市民にも周知させようと王を説得して次のような作戦に出た。それはトマス・ジェファソンが赴任した翌年(1786)のことである。最悪の土地でもジャガイモは育つことを証明するため、パリ郊外の荒れた土地サブロンの50エーカー(20ha)にジャガイモを植え、昼だけ目立つ見張りをつけた。どんな食べ物か、と夜盗みに来た農民達により、口コミ作戦は大成功。
 もう一つ映画には無かったことを付け加えたい。トマス・ジェファソンは、アメリカに帰ってから、アメリカ独立戦争期の指導者の一人となり、1801年には第3代大統領となった。当時のアメリカのアメリカでもトマトとジャガイモには「毒がある」と考えられ食べない人が多かった。とくにトマトは猛毒とされ、男性は勇気の証拠としてそれを公衆の場で食べてみせたり、見ていた女性が気を失ってしまうこともあったとか。しかしフランス滞在でジャガイモ料理を堪能し、トマトの俗信も信じていなかったためそのトマトとジャガイモを美味しそうに食べ、客へも提供した。アメリカ料理にジャガイモを浸透しさせるのに貢献した。

386.『スリング・ブレイド』 (原題:Sling Blade)
 1996年、アメリカ映画。監督:ビリー・ボブ・ソーントン。
 監督が演ずる知的障害者カール・チルダースはスリング・ブレイドという鉈(なた)の一種のナイフで、自分の母親とその愛人を殺害し精神病院に入れられていたが、25年ぶりに出てくる。故郷に戻った彼は、フランク(ルーカス・ブラック)という少年と親交を深めていく。
 ある日2人でスーパーに行く。そこでフランクの母親のリンダ(ナタリー・キャナディ)と会う。リンダは、カールが家に泊まることを許す。フランクと町を散策し、リンダの愛人であるドイルが粗暴でであることを聞く。カールは.リンダの家でドイルに会う。ドイルは詩人のモリスたちを招くが、酒に酔ったドイルはモリスたちを追い出し、リンダに手を上げる。
 フランクと散歩に出かけたカールは、両親に弟を捨てさせられたことをフランクに言う。フランクとフットボールをした後、カールは自分の生家に行き、父親と会う。父親に弟を殺した理由を聞き、弟を供養する。その後ドイルに家を追い出される。そしてフランク少年の母親が恋人の暴力に悩んでいる姿を見て、彼の中である決意が芽生える...。

映画でのカールの好物はファストフード店のフライドポテトとなつていたが、監督・脚本・主演のビリー・ボブ・ソーントン自身はどうなのか。高校教師の家で生まれ、地元のヘンダーソン州立大学で一時心理学を専攻後ロサンゼルスに移り住む。俳優になるために演技を学び始めたものの下積み時代はかなり過酷なものだったらしく、金欠のためにジャガイモだけの食事を続けたせいで心臓発作を起こしたこともある。

387.『エリザベス 女王陛下の微笑み』 (原題:Sling Blade)
 2022年、イギリス映画。監督:ロジャー・ミッシェル。
 尊父の兄エドワード8世が国王となって1年足らずで退位。かわってエリザベス2世の尊父・ジョージ6世が王になり、彼女は王位継承者となる。その後、1952年に尊父ジョージ6世が逝去、そこでエリザベス2世が25歳で即位することとなる。以後公務を日々精力的にこなし、チャールズ皇太子、アン王女、アンドリュー王子、エドワード王子の母の役も務め、 2022年2月6日に在位70周年を迎えることが出来た。映画は親しみやすい微笑みで、国民のアイドル・母として慕われた英国君主エリザベス2世の95年間の歩みに迫るドキュメンタリーである。即ちその類まれなる人生と旅路を、女王への深い愛と畏敬の念をもって、過去と現在を交えた映像を、詩的に時にポップに描いき、 ビートルズ、エルトン・ジョンなど著名人たちのインタビューや貴重なアーカイブ映像を通し、誰もが知る女王の知られざる素顔と魅力に迫るもの。

 その内容と比べると、かなり脱線するが、食べ物について補足しておきたい。多くの人に接する必要があるから、身の安全だけでなく、公務への影響を避けるために口臭や体調にも気をつけておられる。ニンニクを食べないのはよく知られたことであり、タマネギも避けている。イギリスと言えばジャガイモは主食のように食べられ、市民はフィッシュ&チップス(揚げジャガ)とかオープンで焼いたものを好んで食べるが、ロイヤルファミリーでは口にしないと言う。理由はデンプン質が多いためであり、パスタやお米も同じ扱いとなっている。エリザベス女王は元気な源は食生活にある、との考えを持っているが、食べ物にうるさいタイプではないと言う。サラダやフルーツは大好きだが、野菜や果物は季節のものしか食べないと言うがバナナは大好きとか。トマトやきゅうりは種が歯に詰まるため、種を除いて召し上がる。肉はレアではなく、ウエルダンを好み、ツナマヨのサンドイッチ、チョコレート関連が大好きらしいが、パンの耳は食べないとか。女王の一日は紅茶とビスケットで始まり、シリアルとフルーツのことが多い。卵はほぼ毎朝食べるが、殻の色は茶色いものが美味しいと選択している。女王はジン入りのカクテルは好き。毎晩、1杯のシャンパンを楽しむようだがビールは苦手らしい。

388.『警視庁捜査一課長 season6 #3』
2022年4月28日放映テレビドラマ。監督:池澤辰也、木川学 ほか。 警視庁捜査一課長大岩純一(内藤剛志)のところに『揚げたてのコロッケを握った女性死体が見つかった』との電話が入った。場所は、東京・銀座の一角にある車2台ほどの小さなコインパーキング。女性の握ったコロッケにはソースで "N, Z, または乙"と読める文字が書かれており、重要な手がかりとなることを想起させた。しかし、徒歩30分圏内にあるコンビニエンスストアやデパートの総菜コーナーで売っているもの(写真)とは、色も大きさも微妙に異なっており、どこで購入したのかは謎だった。現場資料班刑事・平井真琴(斉藤由貴)はこのコロッケは手作りのものと考えた。野次馬の中にコックコートを着た人物を見かけて声をかけるが、その女性・北尾映見(谷まりあ)は何も目撃していないと話して去っていく。被害者揚田温子(あげたあつこ)は近くのスーパーサイコーの惣菜課でコロッケを揚げており、そのソースの要らないコロッケは大人気で、『コロッケの女神』と言われる人であった。防犯カメラでは北尾映見と揚田とは会っており、言い争うところもあった。
 コインパーキング土地には10年前まで精肉店があり、そこで揚田温子が牛本猛造(コロッケ)と働いていたことが判った。北尾の父保久(林家正蔵)が商社を首になった際そのコロッケを食べてその美味しさに感動し、密かに修行に励んでいた。精肉店が土地を売却した際、そこでいつかコロッケ屋を開こうと考えた北尾の父が入手し、その後揚田温子に安く譲っていた。揚田温子は北尾保久が娘映見への愛情あるメモやコロッケつくりの秘術を書いた『コロッケ日記』と土地を娘に返してやり、店を開いてもらおうと考え、繰り返し試作を求め厳しく当たっていた。一方スーパーの売り場主任乙羽公彦も揚田と彼女の揚げるコロッケに惚れこみ、一緒にコロッケの店を開こうと願っていた。問題の土地で申し込んだがものの断られ、運悪く揚田の足が滑ったのだった。
 これまでも、今後もこれほど度々コロッケが見られるドラマ・映画はないであろう。

389.『キュリー夫妻 その愛と情熱』 (原題:Les palmes de M. Schutz)
 1996年、フランス映画。監督:クロード・ピノトー。
 1943年に製作・公開されたアメリカ映画『キュリー夫人』もあるが、ここではイザベル・ユペールがキュリー夫人を演じた頭書のものを取り上げる。
 19世紀末、夫となるピエール・キュリー(シャルル・ベルリング)は、パリ物理学化学学校で研究を行っている貧乏学者である。彼の下にマリ(イザベル・ユベール)が助手として加わることになる。活発で聡明なマリにピエールはひかれ、二人の愛は深まるが、そんなとき、彼らの上司であるシュッツ校長(フィリップ・ノワレ)は自分の栄誉のために“ウラン発光の謎”を二人に3カ月で解くように迫った上、研究予算のほうは削る。しかし、二人はそんなプレッシャーもバネにして研究を進め、放射線の測定と分光学的測定を行うことで新たな原子を発見し、1898年これを“ラジウム(Ra)”と名付ける。
この世紀の大発見が生まれた実験場は倉庫兼機械室を流用した、暖房さえない粗末なものだった。
 映画とは離れるが、後日その場所を訪れたドイツの化学者ヴィルヘルム・オストワルドは、
「それは、馬小屋とジャガイモ倉庫を足して2で割ったようなとこで、もしそこに化学実験器具を備えた実験台がなかったら、私はそれを冗談だと思ったことだろう。」
と述べている( ウィークス/レスター著.大沼正則監訳.2008年.「元素発見の歴史3」.朝倉書店)。ポーランド出身でジャガイモ好きのマリのこと、本当にジャガイモを置いていたかも知れないが。
1898年、キュリー夫人は夫のピエール・キュリーと一緒に「ポロニウム」と「ラジウム」という新しい2つの放射性元素を発見する。これにより1903 年にノーベル物理学賞をアンリ・ベクレル、及び夫ピエール・キュリーと共に「放射能の研究」で 受賞(写真はこのころのキュリー夫人)。1911 年には2度目のノーベル賞として、ノーベル化学賞を「ラジウムおよびポロニウムの発見とラジウムの性質およびその化合物の研究」で受賞する。ある学会で彼らの研究内容について詰問されたシュッツ校長は、「私にも彼らのやってることがさっぱり解らない」と嘆くところがある。そんな俗物校長との駆け引きを交えたりしてコミカルに描くドキュメンタリー・タッチのドラマであり、ラジウムの発見によってノーベル物理学賞を受賞したマリ・キュリーが長期間の放射線被曝による再生不良性貧血で亡くなるまでの生涯(1867〜1934)を描いている。
 その後の進歩により放射線は、私たちの生活のいろいろなところで使われるようになった。例えば、がんの診断・治療、医療器機(手術用メス、注射針、コンタクトレンズなど)の滅菌、、非破壊検査、コバルト60の放射線(ガンマ線)はジャガイモの芽止めに役だっている。

390.『山の郵便配達(原題: 那山、那人、那狗、直訳: あの山、あの人、あの犬)』
 1999年、中国映画。監督:霍建起(フォ・ジェンチイ)。
 彭見明(ポン・ジェンミン)による同名の短編小説を原作とするヒューマン・ドラマ。 1980年代初期の、中国湖南省西部の山岳地域。そこで往復240キロの山道を徒歩で手紙を届けてきた郵便配達人(滕汝駿(トン・ルゥジュン))が年老いて膝を痛めたため、引退を決意し、後を継ぐ息子(劉Y(リィウ・イェ))と一緒に最後の配達をする。ふたりは相棒であり誠実な家族でもある犬(『「次男坊』)もお供に、2泊3日の業務に出発する。父にとっては最後の、息子にとっては最初の郵便配達である。ほとんどの地に、電話やまともな道路が通っていない。父は息子に仕事の真髄を丹念に教えるが、人里離れた山岳や森では疲れと孤独がついてくる。夜はかがり火を焚き、テントを張る。そして、ツァンパ(ハダカムギを炒って粉にしたものにバターを入れて練る。チベット族の主要食品)や焼いたジャガイモを食事にし、自作の山歌を歌う。人のいるところでは、盲目の老婆に白紙の手紙を読んであげたり、買い物をしてやったり、トン族の結婚式の祝宴に加わったり...
 息子はそのような村民たちとの深い交流を目の当たりにし、、郵便配達人の仕事が単に手紙を送り届けるだけにとどまらないことを理解する。実はかってお母さんも山の娘であり、怪我をしたのをお父さんが助けて結ばれていた。しかし、息子は山の娘とは結婚しないという。その理由は、お母さんがいつも故郷を恋しがっていたから。
 いくつかの思い出がフラッシュバックし、息子のトランジスタラジオからは多くのポップ・ミュージックも流れる。最後に重いリュックを背負い一人で配達にでかける息子を父親は無言で見送り、次男坊が追っていく。


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