ジャガイモの出てくる 映 画  第38集

浅間和夫
 
391.『ヤンソンの誘惑』 (原題: Janssons frestelse, 英題: Jansson's temptation)
 1928年、スウェーデン映画。監督:ヨースタ・ロディン。
 この映画は、筆者が頼りにしている(株)メタモル出版1998年刊の『映画大全集』にタイトルさえ載っていない。しかし、同名の料理がスウェーデンやフィンランドの伝統的家庭料理となっており、似たように冷涼な北国に住み、側にジャガイモとタマネギが豊富にある人に話の種を提供したいため、取り上げることにした。(写真はja_wikipedia1による)
 ジャガイモ・アンチョビ・生クリームを使ったポテトグラタンである『ヤンソンの誘惑』(ヤンソンス・フレステルセ、瑞:Janssons frestelse、 英: Jansson's temptation)は、昔から知られる料理名としては、かなり変わっており、ポテト料理とさえ見当がつかず、その由来が知りたいところである。  スウェーデン人作家のグンナー・スティグマークは1989年に名づけ親は自身の母親であると書いている。即ち、この料理は古くから人気があり、当時は単に"アンチョビとジャガイモのキャセロール"と呼ばれていたが、1929年の新年パーティーでこのキャセロール料理を作ったグンナーの母がちょっとした思いつきで、1928年公開の標記映画にちなんでそう呼んだと。もうひとつは19世紀にいた宗教家で、絶対に肉や魚を口にしない菜食主義者エ−リク・ヤンソンが、ある日カリッと焼けた美味しそうな料理を見て信者を捨ててこそり食べたことに由来するとか、ウスターマルムの主婦、エルヴィラさんがパーティーでシェフの奥さんソフィアさんにアンチョビのグラタンを作らせたが、後になってエルヴィラさんが大好きな俳優が主役を演じた標記映画にちなんで、改めて名前をつけなおした。さらに加えれば、スウェーデン中東部ノルショーピン生まれのオペラ歌手Pelle Janzon (1844-1889)に由来しているとの説もあり、実際のところははっきりとはしていない。
『ヤンソンの誘惑』作り方・レシピは、
https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1170012256/
ttps://macaro-ni.jp/22642

392.『映画:デリシュ!』 (原題:Delicieux)
 2020年、フランス、ベルギー映画。監督:エリック・ベナール。
 18世紀末のフランスが舞台である。美食は貴族だけのものであり、ジャガイモは知られつつあるが美食には向かないと思われていた時代に世界初のレストラン誕生までの秘話を描く爽やかな人間ドラマである。
 誇り高い宮廷料理人のマンスロン(グレゴリー・ガドゥボワ)は、公爵主催の食事会で精魂込めて美味しい料理を作る。 小麦とバターを合わせ、ミルクと卵を混ぜ合わせて生地を繊細にこねていく描写で幕をあける。生地を円形の型で切り込み、薄くスライスしたジャガイモとトリュフを詰めていく。その上に三日月型の生地を重ね合わせて、仕上げに卵黄を塗る。これを宴に出したところ、ある貴族が、「地下のものを使うとは! そんなものは豚に食わせとけ」というと皆が大笑い。豚の真似をする者もいた。このように自慢の創作料理“デリシュ”にジャガイモとトリュフを使ったことが貴族たちの反感を買い、傲慢不遜な公爵(バンジャマン・ラベルネ)に解雇される。失意を抱え、息子(ロレンゾ・ルフェーブル)を連れて実家に戻る。ある日、謎めいた女性ルイーズ(イザベル・カレ)が“料理を学びたい”とやってくる。弟子は不要だと断り続けたものの、ついにその熱意に負けて彼女の希望を受け入れる。このことがあって、マンスロンは料理への情熱を戻し、美味しい料理を作る喜びを再発見していく。そして、ルイーズの助けと息子の協力を得て、開かれたレストランを開業する。店はたちまち評判となり、因縁ある公爵にもその存在が知られることになる。
 まだ貴族と庶民が同じ場所で食を共にすることがなかった時代、この世界で初めてのレストランはその後貴族と庶民が共に食事を楽しむ場となっていくことになる。レストランの発祥には別の説がある。1765年のパリで、滋養があり、元気にさせたり、回復させたり(restaurer)する飲食物を出す店が出て、その名が一般化したのが初まりとの説や1766年、裕福な商人の息子がパリの旅行者を喜ばすために考案したのが初まりだとするのもあるが、三者とも客がメニューから料理を選択できたかのか判らない。1800年代には食堂の意味で用いられたという。
 映画の冒頭から薄くスライスした円いジャガイモが出てくる(写真)。小麦粉の真ん中にバターを載せ、ミルクと卵を混ぜ合わせて生地をこねっていく、生地を円く切り込み、薄くスライスしたジャガイモにトリュフを詰める。その上に三日月型の生地を重ね合わせて、仕上げに卵黄を塗る..これがマンスロンが“デリシュ”と名づけた自慢の創作料理である。デリシュ(Delicieux)とは、フランス語で“美味しい”を意味し、映画のタイトルになっている。

393.『ラーゲリより愛を込めて』
2022?年、邦画。監督:瀬々敬久。
辺見じゅんの力作『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文春文庫、1989年)を原作に、1945年スターリンの命令により実施された元日本兵達のシベリア抑留にからむ話である。厚生労働省の推計では約57万5千人もがソ連に連れて行かれ、収容所で強制労働に従事した。
 映画は、「シベリア三重苦」と表現される酷寒、重労働、飢餓に苦しみ、生きているのが不思議な日々が続くなかで、生きることへの希望を捨てなかった人物、山本幡男(二宮和也)を追うものである。シベリアで過酷な労働に耐えながらも、仲間に微笑みかけ、“生きるのをやめないでください、帰国(ダモイ)の日は、来ます”と人々を励まし、希望の灯をともし続けた。紙も鉛筆も許されないなかで俳句をつくる仲間を育てたりして、仲間から厚い信頼を得ていた。
終戦から8年が経ち、山本に妻モジミ(北川景子)からの葉書が届く。厳しい検閲をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰りを待っています」と。たった一人で子どもたちを育てている妻を想い、山本は涙を流さずにはいられなかった。スターリンが亡くなり、ダモイの日が今度こそ本当に近づいていると感じていたが、その頃、彼の体は病魔に侵されていた。戦友達は彼が隠れて書いた遺書を手分けして暗記して、島根の妻に届けてやることにして興安丸に乗った...
 ラーゲリでは約5万5千人が命を落とした。すなわち、帰国者からの伝聞によると、食料費がピンハネされて、不味くて酸っぱい黒パンにジャガイモのスープ、またはパン無しで小さなジャガイモ2,3個のことが多かった。食糧の支給なしにジャガイモ畑で働かされたときは、芋を隠れて頂戴して帰り、飯ごうで炊いて食べたり、上司付きでジャガイモの皮を剥くときは、厚く剥いて、帰りに拾ってくることもあった。肉が出ない身には蛙は御馳走であり、山つつじ、オオバコ、ハコベ、イラクサなど有名無名の野草や茸は欠かすことの出来ない補助栄養食品であった。白樺の木にタポール(斧)を打ちこみ、傷をつけて待つと出てくる樹液を飲んだり、リスのように五葉松の実をゲットし、煎って食べることもあった。監視兵の隙を見て、笑顔でジャガイモを食べさせてくれるお年寄りに会えた幸運者もいたが、ジャガイモ畑の側を通って帰るときは、盗むチャンスを窺っていた。
 世界の趨勢が好転し、ダモイ方針が決まると、 日本を共産主義化するチャンスと捉え、赤化教育に力が入り、かっての将校や下士官を標的とし、共産主義に賛同しない者を探しだしては、壇上あるいは吊して暴行・糾弾するなどの蛮行が広がった。しかし、帰国して港や大きな駅でインターナショナルや労働歌を歌い上げた時までは効いたものの、その後は共産党に入党して活動分子になった兵士よりも、「うそをつき、密告する」のが共産主義者だったと土産話にする者のほうが多かった。

394.『縞模様のパジャマの少年』 (原題:The Boy in the Striped Pyjamas)
 2008年、イギリス映画。監督:マーク・ハーマン。
 アイルランドの作家・ジョン・ボインの小説を映画化したもの。
 ナチス・ドイツの強制収容所に所長として赴任した父親ラルフ(デヴィッド・シューリス)に伴って、収容所近くの官舎に移り住んだブルーノ少年(エイサ・バターフィールド)の視線で語られる。
 まだ8歳のブルーノは尊敬する父親から収容所は農場であると教えられた。引っ越し後友達がいなくなり、退屈な日々を過ごすが、物置の窓から広がる裏庭の森が見える。近寄ることは母(ヴェラ・ファーミガ)から禁止されていたが、冒険心から近づいてみるとフェンスの向こう側にシュムエル(ジャック・スキャンロン)という、縞模様のパジャマを着た同じ年の子供がいた。靴職人の父と一緒にここに連れてこられ、服を剥がされ、パジャマに着せ替えさせられたと言う。医者だった人もパジャマを着てジャガイモの皮を剥いていると言う。「何をしたの?」と聞くと「何もしていない。ユダヤ人だからだ」とシュムールは答える。しだいにユダヤ人について家庭教師やドイツのプロパガンダ映画から学んでいることとは違う感じを受けていき、家では夫婦の争いも増えてきている。
 またある日、ブルーノが家に戻ってみるとダイニングでシュムエルが食器磨きをしているのを見かける。シュムエルが空腹なことを知り、ブルーノはケーキを差し出す。それをむさぼりついているところを運悪く、父親の部下コトラー中尉に見つかってしまう。恐怖のあまりブルーノは、彼のことは知らない、勝手に盗み食いをしていたと嘘をついてしまう。裏切ったことをとても後悔し、フェンスの場所に謝りに行く。数日会えなかったものの、漸く姿を見たところ顔には、明らかに暴行をうけた痛ましい痕跡が刻まれている。固い握手をして許してもらう。しかし、その折り、シュムエルは父が行方不明だと告げる。ブルーノはお詫びに、収容所内に忍び込んで探してやると約束する。そこではブルーノはシュムエルが用意した縞模様の服を着て歩いたため、ユダヤ人と間違われ、一緒に毒ガス室行きにされてしまう。所内のことは妻でさえ単なる強制労働だと思っており、法曹界ですら、アウシュビッツ裁判によって初めて、全容が明らかになったほど。
 映画は、子供目線にしたため、強制収容所内部の詳細とか、戦争の殺害シーンは一切描かれない。収容所で行われたホロコーストを告発する物語である。

395.『モネ・ゲーム』 (原題:Gambit)
 2012年、アメリカ・イギリス映画。監督:マイケル・ホフマン。
 イギリス人の美術学芸員ハリー・ディーン(コリン・ファース)は、長年メディア王ライオネル・シャバンダー(演:アラン・リックマン)のもとで働いていたが、彼の横柄さと人使いの荒さには我慢できないものを感じていた。億万長者シャバンダー(アラン・リックマン)が御存知印象派クロード・モネの連作『積みわら』の『積みわら・夜明け』を落札して以来、対になる作品で戦時中ナチスに強奪された『積みわら・夕暮れ』を探し求めていた。これを知っていたハリーは、知人の退役軍人ネルソン少佐が描いた贋作の『積みわら・夕暮れ』を利用して大金を巻き上げることを計画する。
ハリーは、超天然のPJ・プズナウスキー(演:キャメロン・ディアス)を仲間に加え、贋作で大金を手に逃亡しようと考える。しかし悪知恵は働くものの大胆さには欠けるハリーの計画は、当初から、PJが次々とトラブルを起こし、シャバンダーの雇った鑑定士が登場してくるなど、完璧だったはずの計画は二転三転してしまい、事態は思わぬ方向へと転がっていくと言う犯罪コメディである。原題の英語のgambit(ギャンビット)とは、イタリア語の足が語源であり、“手始め、切り出し”の意味。チェス用語では,小駒を犠牲にして便利な態勢を導くための初手を言う。
 モネの『積みわら』は収穫後の畑に積まれた干し草の山を描いた一連の絵画の総称であるが、2022年10月23日ドイツ北東部のポツダムにあるバルベリーニ美術館に展示されているもの(1890年作品(Meules)。写真)に『マッシュポテト』がぶちまけられ、大騒ぎになった。実行犯は環境保護団体「Last Generation」(Z世代)の少女であり、「化石燃料を使うという道が、われわれ全員を死に至らしめることを社会に記憶させるためだ、絵画を保護することは地球を守ることよりも大切なのか」と問いかけたそうであるが、このようなエコテロリズム行動は本当に意味があるのか、誰かが大切にするものを踏みにじることは、許してはならない、との声が多い。絵画はガラスで保護されており、損傷はなかったが、器物破損などの容疑で捕まっている。10月14日にも、イギリスの環境活動家団体「Just Stop Oil」のメンバーがイギリスの美術館ナショナルギャラリーに展示されていたゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけ、24日にも4人がろう人形館マダム・タッソーでチャールズ国王のろう人形の顔にチョコレートケーキを投げつけ逮捕されている。続く27日にはオランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館のフェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」を覆うガラスに液体がけられた。2024年1月にもルーブル美術館の所蔵するレオナルド・ダビンチの名画「モナリザ」にカボチャのスープがかけられるも、事なきを得た。

396.『地下室のメロディー』 (原題:Melodie en sous-sol)
 1963年、フランス映画。監督:アンリ・ヴェルヌイユ。
 出所したギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)は、生涯最後の仕事として、カンヌのカジノの地下金庫から10億フランを強奪する綿密な計画を立て、刑務所で知り合ったフランシス(アラン・ドロン)と、その義兄の実直なルイを仲間に引き入れる。フランシスは金持ちの青年を装い、カンヌのホテルに滞在する。カジノの踊り子と親しくなることで、フランシスは一般客が立ち入れないカジノの舞台裏に出入りする口実を設けることができる。
 シャルル達はカジノのオーナーが売上金を運び出す日を狙って、地下金庫を襲撃する。札束をバッグに詰め、何食わぬ顔でホテルに戻り、完全犯罪は成功したかに見えたが、不運が重なり、最後の最後にバッグに入った大金をプールの底に沈めて隠したまではいいが札が浮かんでくる。騒ぎだす人々の中でフランシスとシャルルは、もはやなす術もなく10億フランの札を見つめることになる。アラン・ドロンとジャン・ギャバンというフランス映画界の2大スターが共演した犯罪映画である。
 ところで、5月17日の誕生花はジャガイモである。俳優で最もジャガイモらしい人を挙げろと言われて、想い浮かぶ、「土」、「野暮ったい」、「不格好」、「素朴」、「重厚」などと連想してきて、宇野重吉、笑福亭鶴瓶、千昌夫、チャールズ・ブロンソンなどを揚げる人がるが、ジャン・ギャバンはどうであろうか。彼は1904(明治37)年の5月17日生まれである。1937年の『望ク』によって名声を不動のものにし、ギャング映画に数多く出演し、晩年はマフィアの組長役などを好演した。三度の結婚と三度の離婚を経験し、マレーネ・ディートリヒと浮名を流したことでも有名。気さくな性格で、共演者からも愛された俳優だった。他に誕生花がジャガイモの人を拾ってみると、安部譲二(1937、小説家)、松尾和子(1935、歌「誰よりも君を愛す 」などで知られる女優)、島田陽子(1953)、城之内早苗(1968)、井ノ原快彦(1976)などがいる。

397.『笑わない女』  
 1996年、テレビドラマ。脚本:三谷幸喜。
『警部補・古畑任三郎』シリーズのひとつである。ゲスト沢口靖子にとって適役と言えましょう。ブライオリ女子学院の生活科主任教師宇佐美ヨリエ(沢口靖子)は戒律を基に定めた厳しい校則を律儀に守っているが、ある日口紅を塗ってみる。その後、同僚の阿部哲也に授業で使う本を貸してほしいと頼み込み、背を向けたところを鉄パイプで殴り倒すと、ダンベルに後頭部を打ち付け殺害する。阿部は倒れる直前に宇佐美が着ていたガウンのボタンをむしり取っていた。椅子から足を滑らせた事故として捜査が始まるが警部補古畑任三郎(田村正和)と今泉慎太郎(西村雅彦)は被害者の手は傷だらけで、犯人の物と思われるボタンを握りしめていたままだったことに疑問を感じる。
 全寮制の空き部屋のひとつを借りて、泊まり込みの捜査をする古畑と今泉は、校長から寮の食事に招待される。しかし、その食事は「動物の肉は口にしてはならない」という戒律からすべてベジタブル。しかも、おかずはマッシュポテトのみであった(写真)。御覧の通り、その量は山盛りであり、カラーは3種類あった。すなわち、
マッシュポテトにニンジンを混ぜた「赤マッシュ」
マッシュポテトにグリーンピースを混ぜた「緑マッシュ」
マッシュポテト+ジャガイモの「白マッシュ」
味は似ているため、女生徒はみな隠れて塩をふっているが、今泉だけが「これ美味しい〜美味しい〜」と言いつつ食べた。
 戒律が非常に厳しい全寮制のミッションスクールで、その校則を厳格に守る宇佐美ヨリエの演ずるアリバイやトリックを、巧みな話術と卓越した推理力で崩していき、完璧と思われていた犯行の真相を解明していき、最後に自供に追い込む。

398.『幸福の黄色いハンカチ』  
 1977年、邦画。監督:山田洋次。
 失恋してヤケになった花田欽也(武田鉄矢)は工場を突然退職し、真っ赤なファミリア(4代目のFRファミリア)を購入し、フェリーに乗って釧路に入り、網走へと北上する。そこでナンパして純情な朱美(桃井かおり)とドライブを始める。一方、網走刑務所からは、刑期を終えた元炭鉱夫の島勇作(高倉健)が出所してくる 。最初の食堂で「ビールください」と頼んだ後、「あの〜醤油ラーメンとカツ丼下さい」と注文してから、久しぶりのコップ1杯を両手で握りしめ一気に飲む。(写真:注文したもののイメージ)
海岸で3人が出会い、安宿に一泊。欽也は夜這いを挑むが拒絶されてしまう。翌朝、勇作が突然「夕張に行く」と言い出すが、理由を語らない。勇作に、欽也と朱美は不審がるが、とりあえず進路変更、クルマを進めていく。途中、ひょんなことから勇作がハンドルを握ることになるが、運悪く検問にひっかかってしまった。免許提示を求められた勇作は静かに「持っていません」と答える。そして「昨日、網走刑務所から出たばかリです。罪名:殺人」と告白する。不器用で、酔ったケンカのいざこざからヒトを殺めてしまい、妻・光枝(倍賞千恵子)に「俺があいつにしてやれることはそれだけだ」と離婚届をだしていた。未練の残る彼は、夕張の自宅に「もし、まだ一人暮らしで俺を待っているなら鯉のぼりの竿に黄色いハンカチを下げておいてくれ」の葉書を手紙を送っていた。勇作の想いに胸を打たれた欽也と朱美は、夕張まで同行し、そこで優しい<幸福一杯>の黄色を目の当たりにする・・・。
 この映画を選んだのは、刑務所から出て最初にラーメンを食べるシーンのために高倉健が2日間水だけを飲み、絶食したと知ったからである。ラーメンは日本人によく食べられ、したがって映画にもしばしば出てくる。北海道産のジャガイモの一番の用途は、野菜として食べるものでも、ポテトチップスになるものでもなく、でん粉(片栗粉)用なのである。料理のとろみづけが分かりやすい使い方であるが、蒲鉾、竹輪、ソーセージなどによく使われ、春雨、くずきりやビールの発酵原料となるほか他のでん粉とともに異性化糖、水あめ、ぶどう糖といった糖化製品に多く使われている。これらの製品は、清涼飲料水、調味料、パン、菓子類に入り、この映画のような即席麺は勿論、捜せば偽薬(プラシボ)、オブラート、ボーロ、うなぎの餌、酒類、ダンボール、紙などにも使用されている。

399.『じんじん』  
 2013年、邦画。監督:山田大樹。
 「ガマの油売り」を披露して全国を行脚する大道芸人・立石銀三郎(大地康雄)はすでに妻和子に愛想を尽かされていた。松島での興行の後、幼馴染の農場の田植えを手伝うため北海道の「絵本の里」で知られる剣淵町(けんぶちちょう)へ飛んだ。そのころ東京都立北原高等学校の生徒達も、体験型修学旅行で剣淵町を訪れた。銀三郎の親友高峰庄太(佐藤B作)は自身の経営する「天の川農園」へ4人の高校生佐々木ナナ、遠藤ヒロミ、西原ユカリ、日下部彩香を招いた。銀三郎は農業体験に来ていた女子高生達と過ごし打ち解けたが、日下部彩香(小松美咲)だけは彼に心を開かなかった。彼女は母の再婚相手にも心を開いていなかった。
 そんな時、庄太から、和子が再婚した相手の名字は“日下部”だと告げられる。娘の記憶が6歳で止まっていた銀三郎はようやく彩香が実の娘であることに気付き、激しく取り乱す。
 後日、農協職員や役場の職員達は庄太へ、夏に開催される“けんぶち手作り創作絵本コンクール”の大賞が、東京の出版社と契約できることになったと伝えに来る。そして銀三郎は絵本コンクールに出品し優勝すると宣言し、空港へ向かう彩香へ「またおいで」と声をかける...。
 この映画でふれたいのが、銀三郎が「これを食べるために帰ってきた」と言っていた“でんぷん団子”のことである。人口約3,000人という小さな町にロケ隊が入ったとき、炊き出しする「ひまわり会」、でんぷん団子を焼く「福有会」などが協力した。現在販売されている"冷凍でんぷん団子"は金時豆などが入り、凍ったままを、軽く油をひいたフライパンやホットプレートで、じっくり焼いて食べるものである(写真)。第二次大戦の頃、北海道の農村家庭では、水分のある生でん粉の塊そのものを焼いて、αデンプン化した表面を剥ぎながら砂糖醤油をつけて食べたものだった。当時は勿論、北海道産ジャガイモの最大の用途別消費はでん粉(片栗粉)原料用向けであり、ついでポテチなどの加工用、生食用(野菜)はその次なのである。現在剣淵町には上川北部農協合理化澱粉工場があり、国道40号線沿いには道の駅『絵本の里 けんぶち』」が開かれており、人気がある。

400.『ジャッジ』  
 2014年、邦画。監督:永井聡。
世界一のテレビCMを決める広告の祭典、サンタモニカ国際広告祭。若手CMプランナー太田喜一郎(妻夫木聡:つまぶきさとし)は、社内一のクセモノ上司、大滝一郎(豊川悦司)に押し付けられ審査員として参加することになる。毎夜開かれるパーティに同伴者が必要と知った太田に懇願され、仕事はできるがギャンブル好きの同僚・大田ひかり( 北川景子)も“偽の妻”としてイヤイヤながら同行することに。戸惑う太田は、なぜか審査会に詳しい窓際社員の鏡さん(リリー・フランキー)に怪しげな特訓を受ける。
 世界各国の代表が集合し、華やかに審査会が開幕する中、太田はちくわのCMで賞を獲らなければ「ちくわ堂」をクビになってしまうという、まさかの事実を知る。世界中のクリエイターたちが、やっきになって駆け引きや小芝居を繰り広げる中、ライバル会社のエリート、木沢はるか(鈴木京香)も参戦。太田は持ち前のバカ正直さと、鏡さん直伝の数種類の英語を武器に奔走する。そして、ひかりの助けを借りているうちに、偽夫婦だった2人の距離も次第に近づき始めて・・・?
 『蒲鉾(かまぼこ)』は弥生時代からあったかも知れないが、初めて文献に登場したのが平安時代の1115年(永久3年)。祝宴の膳のスケッチがあり、その中に記録されていた。 そのため、11月15日が『蒲鉾の日』になり、文字の形から11月11日が『竹輪の日』とされた。
 蒲鉾や竹輪は、水産練り製品の一つであり、これにはジャガイモでん粉が使われている。ジャガイモでん粉は、他のでん粉と比べ、比較的低温で糊化し、昔のわらびやくずのでん粉よりも粘度が高く、透明な糊になる特徴があるので、東日本以北を中心に良く活かされている。似たものにはんぺんやさつま揚げもあり、これらの原料魚にはタラ・サメ・ホッケ、エソ、ソイ、イトヨリダイ、トビウオ、タチウオ、ベラ類等の白身魚が使用され、小田原蒲鉾ではクヂが主原料であり、魚の美味しさと良質なタンパク質をそのまま凝縮し、食べやすくし保存性を増したものであり、ジャガイモでん粉が使われるようになってから、粘度やプリプリ感が向上したと言えよう。


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