ポテトエッセイ第2話

  ジャガイモの皮【ジャガイモ博物館】


【写真は「男爵薯」の子で、ホクホク・ヘルシーな『キタアカリ』】 ジャガイモの粉ふき(水煮)の際、予め包丁で皮をむく習慣のある地方と、煮てから割箸などをあてて皮をむく地方があるようです。
 かって、私の勤務先で、ジャガイモを皮つきのまま煮て、おいしかったので隣の部屋にお裾分けしたところ、不評でしたが、こちらの部屋では争うように食べたことがありました。この相違は、隣の部屋では「イモは皮をむくもの」との先入観に基ずくものと思われました。概して言えば、わが国の南ほどむかずに煮るのではないでしょうか。

ドイツなどでは、粉ふきは皮つきが常識です。第一次世界大戦を始めた皇帝ことウィルヘルム2世(在位1888年から30年間)の勅令にも次のようなのが載っていました。
 「ジャガイモは皮をつけたまま食べよ。しかし、どうしても皮をむく必要があるなら、決して生のうちにむくな。必ず蒸すか、煮た上でむくようにせよ」と。
 そして、勅令の後には内務大臣の次のような注釈が添えてられていました。
「ジャガイモを生のままで皮をむくと、皮に中身が11%も着いて捨てられる。蒸すか煮るかしてから皮をむくと、容易に薄い皮だけをむくことができる」と、
 11%も捨てるというのは、ドイツ人が日本人ほど手先が器用でないためか、強調表現のためだったのか定かではありませんが、明治天皇の法令並みに難しいことで知られる教育勅語、
「朕(ちん) 惟(おも)うに わが皇祖・・・・」
に比べますと、身近でやさしい点がおもしろいですね。
 塊茎の剥皮又は切断をした後そのままにしておくと、切り口が褐色に変化し、さらに放置しておくと、切断後2〜5時間で黒色に変わっていく。これは、傷ついた細胞が空気にさらされ、ある種のフェノール化合物(クロロゲン酸及びアミノ酸チロシン)からメラニンへの酵素的酸化によって発生したもの。黒ずみ(褐変を)の原因である酸化反応を妨げるには、すぐ水につけて酸素の供給を断つとか、薄い酢水(酸)につけておくとか、加熱で酸化酵素を殺しています。この剥皮褐変は「男爵薯」、「マチルダ」、「とうや」などで多く、嫌われものです。しかし、ポリフェノールには抗酸化作用があり、ガンや心臓疾患の予防に効果があるとされています。人間の体内に病原体を撃退する免疫抗体があるように、植物にも同様のポリフェノールというものがあり、細胞内で有害な酸素との反応を防いでいます。ジャガイモには赤ワインほどの抗酸化物があるわけではないが、飲み過ぎとか食べ過ぎで糖尿病や心臓病の引き金になる心配はありません。

 料理の際、皮として包丁で切り捨てられる部分には、中心部に比べて、でん粉が多いのです。このことは煮てみると外側が崩れやすいので、すぐ判ります。この外、目に見えない蛋白質、リボフラビン、ビタミンB6、造血作用剤として知られている葉酸やミネラルも多いのです。
 「男爵薯」の導入者で知られる川田竜吉男爵も、かって姪あての手紙で、グラスゴー滞在中の夜分に車に釜をのせ、皮つきのままのジャガイモを焼きがらホキーポキー、々と言って売っていたり(写真1816年ロンドン。春山行夫の「食卓のフォークロア」より。ここではふかしジャガイモ。)、皮は薄く剥いでいることを書いていました。
 彼も『大切なのはカワダょ』と言いたかったのかも知れません。


 最後に、ジャガイモの皮を上手く剥く方法を書いておきましょう。
@ジャガイモを熱湯に入れます。
A2分くらい入れたらすぐに冷水に入れます。
 冷水としては、氷がたくさん入っている氷水がよい。
Bついで水から取出し、皮を手で剥くようにツルっと剥いてください。
C上手くいかない時もあるかもしれませんが、トライしてみてはいかが。

 調理のしかたとビタミンCの損失
ホウレンソウなどに比べて、塊で肉部が薄くなく、澱粉質で囲まれており損失がすくない。
生を100として、電子レンジで94、蒸すと91、皮つきゆでにより87、皮なしゆでで83程度になります。

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