ポテトエッセイ第12話

ジャガイモの色【ジャガイモ博物館】

【アントシアン、水煮後黒変、メラニン、調理後黒変、クロロゲン酸、還元糖、グルコース】
 ジャガイモの皮の色は、白黄のものが多いのですが、『紅丸』のような淡赤や、赤、濃紫及びそれらの中間色など多様なものがあります。これらはイモ外側の細胞液中に溶けているアントシアンによってきまり、品種ごとに決っています。 肉色では、黄肉系(メークイン、ホッカイコガネ、キタアカリ、デジマ、ニシユタカなど)と、白色系(男爵薯、ワセシロ、農林1号、トヨシロなど)がありますが、この黄肉系の着色はカロテンによるものです。 生イモの皮をむいて少し時間をおいたときに見られる変色は、傷ついた細胞が空気や酸素にさらされ、チロシンやある種のフェノールが酵素的酸化によりメラニンに変わったものです。
 一方、『農林1号』を水煮した場合などに基部(ストウロン付け根側)に近い内部にできる変色は、鉄イオンとクロロゲン酸の非酵素的反応により黒く着色した化合物を生ずるためと考えられているので、缶詰、サラダ、フレンチフライなどの製造時には品種の選定に注意しなければなりません。
 イモを光にさらした場合などに表面の緑化がみられますが、これは最外側にある周皮細胞に葉緑素が形成されたためです。この緑化の進行は、収穫後の日数が短いほど、温度が高いほど速いものです。また、光の強さに応じて緑化を増しますが、直線的ではありません。 波長も関係してまして、緑の光は緑化が少ない傾向にあります。緑化したイモは、いわゆるソラニンの含有を増しますが、葉緑素が多いからソラニンもかならず多いわけではありません。青い光はソラニンの形成に都合がよく、黄色や赤い光は葉緑素を増やしますが、ソラニンは増やしません。
 緑化を防ぐには、ダンボールなどの不透明なもので被覆するのがよく、普通のお店では見た目も考えなければなりませんので、壁や光はこはく色などにするといいでしょう。
 低温に置かれたイモや未熟なイモは、体内にグルコースやフラクトースが多いものです。この還元糖の多イモのをポテトチツプスやフレチフライとして空揚げしますと、アミノ酸と還元糖が炭酸ガスを放出しながら結合しメラノイジン類となって製品がカステラ色に褐変します(メィラード反応)。空揚げに適する還元糖含有率は生体重で0.1%以下が望ましく、0.2%以上では褐変しやすく、素人はつくりにくいのです。
 低温下の貯蔵などで還元糖が増加したものは、2.3週間18ないし20℃に加温するなどのリコンデショニングを実施しないと加工原料にできません。還元糖含有量を簡便に知るには、糖尿検査用の紙のウリエース、テステープ、クリニステックなどを買ってきて切断したイモに挟んだ後色を比較すればわかります。
ジャガイモレストラン『穀物祭』(札幌市豊平区中の島)
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