ジャガイモ博物館,病害虫防除,生理障害防除、空洞、あんこ、変形

病害虫防除の要点

V.生理的障害

塊茎の症状を写真で確認してみたい方は、次を見てください。

* 塊茎の症状*へ行く)

1.二次生長
(A)形の変形(こぶいもなど)
 発生原因:地温が高いと形の変形が多くなりやすい。特にその後に降雨が多かったり、逆に乾燥あるいは高温が続くと、いろいろな形の二次成長が発生する。
 伸長型、こぶ型、人形型には多肥、高地温・乾燥後の降雨などが影響しており、鎖となったり(鎖型)、萌芽しているもの(萌芽型)は高地温や土壌の乾燥で塊茎内に植物ホルモンのジベレリンが増加した場合に見られ、又裂開型は降雨の後の急速肥大が影響した発生することが多い。
 発生防止対策:
(1)遅くまで窒素が効かないように、適正施肥を心がける。
(2)培土の形は富士山型を避け、カマボコ型とし、土の量を十分に寄せる。
(3)温度、水分など変化を減らすため、土つくりしておく。

(B)表面の変化(ラセット粗皮)

 発生原因と発生防止対策:外国品種では固有な性質としてもっているものが多いが、日本の品種では、本来ラセット(ラシット)のものは少ない。これが見られるのは、二次成長の一種で、7月に高温乾燥が続いた年に多い。この発生を防ぐには、上記の(1)〜(3)を心がけておく。

2.皮目肥大
 発生原因:土壌が多湿の場合に発生する。
 発生防止対策:
(1)暗渠排水の実施。
(2)心土破砕。
(3)浅植え、深培土。
(4)堆肥などのすき込みによる透水性の改善。

3.中心空洞
 発生原因:塊茎の急激な肥大により中心部への炭水化物の供給が不十分なときとか、高地温下での水分ストレスとか、塊茎内部への急激な水分の流入によって、澱粉が糖に変わる時にも発生する。特に、次のような条件が複合した場合に発生が多くなりやすい。
(1)多肥。疎植。欠株や株間の不揃いでいもが大きくなった。
(2)マルチ栽培で地温が高くなった。
(3)肥大の旺盛な6、7月ころの地温が高かったり、これに一時的降雨が加わるとき。
(4)茎数が少ない。培土不足、黒あざ病株、pH高め。
 発生防止対策:
(1)欠株を少なくし、株間をやや狭くして、2Lなど大いも比率を下げる。
(2)施肥、特に窒素量を多くしない。
(3)培土を十分やる。
(4)大きくなりやすい品種では、全粒種いもを使うなどして、地力・用途に合わせた茎数を確保する。
(5)排水のよい土地にする。
(6)適期植付けとし、遅植えなどはしない。
(付)発生には品種間に差があり、「エニワ」、「男爵薯」、「トヨシロ」で多く、「きたかむい」、「ゆめいころ」、「さやあかね」で見られることがあり、「メークイン」、「ホッカイコガネ」、「ワセシロ」、「キタアカリ」では少ない。(「とうや」は裂開が見られる。)
  空洞部は、引き裂かれたようなものなどいろいろで、日時が経過したものはカルス細胞により褐色となり、時には黒変も見られる。サイズの大きいほど発生率が高まるが、外見からこれを区別して除去するのが困難である。
 なお、「黒色心腐」同様、食べても問題はありませんが、その色あいや舌ざわりなどから、普通は当該部分を調理に先立ち切除するほうがよい。
 中心空洞を、切断することなく、しかも多量のものを扱いつつ検知する技術は、いろいろな方法で検討されております。つまり、(1)軟X線の照射をしてコンピュータ解析するもの、(2)振動を与えるもの、(3)超音波、(4)光の透過量等々が俎上に上がっております。
空洞のクレームなど*へ行く<

4.緑化(グリーン)
じゃがいもは『塊茎』(茎)なので、掘り取って光に当ておくと、茎の色である緑に近ずいていく性質がある。
病斑(パッチ)状に緑化しているものは、畑での培土が悪かった場合など、圃場で発生したもの。砂土や沖積土の改良と、培土、選別の注意が要る。
 塊茎表面にやや広く緑化が進んでいるのは、収穫後の畑や店頭で、光に当たり、光に当たる時間に比例して葉緑素(クロロフィル。無毒)が増加したもの。同一品種ではこの緑化の程度と風味を下げるα−ソラニンなどのグリコアルカロイド(PGA)含有は比例することが多いため、貯蔵、選別、包装から、消費者の保管まで、光に当てないようにする。 PGAが多い塊茎は煮てもエグく、我慢して食べるのは難しいので、広く言われているほど恐ろしいものではない。
アルカロイドの話*(エッセイ45)へ行く< 色の話*(エッセイ12)へ行く<

5.褐色心腐、ヒートネクロシス
 発生原因:小さな褐色班点が周辺部に多いもの(ヒートネクロシス)と、中心部に多いもの、両者の混ざったものがあります。ヒートネクロシスは塊茎肥大期の地温が高いときに発生しやすく、中央に多いものは土壌が乾燥したときに発生しやすいが、通常同時に起こることが多い。
 発生防止対策:
(1)土壌水分を保持するため、堆肥を前作に十分やっておく。
(2)他の生理的障害同様に、軽度のものは種いもに使用でる。
(3)「アトランチック」や「紅丸」で発生しやすい、「きたかむい」や「さやあかね」で見られることがある。

6.黒色心腐 (あんこ、ぱんだ)
 発生原因:畑、保管、輸送時の高温。酸素供給不足。
 発生防止対策:
(1)透明マルチは培土前にはがす。
(2)培土を十分やる。
(3)収穫後、通気性の劣るシートで覆わない。
(4)サツマイモより10度ほど低い温度で保管する。
(5)種いもの浴光催芽は20℃以下に心がける。
黒色心腐症状外*へ行く<

7.維管束褐変
 発生原因:土壌乾燥時のレグロックス散布。水分ストレス。半身萎ちょう病、乾腐病。
 発生防止対策:
(1)土壌の極端に乾燥しているときにレグロックスをかけない。
(2)散布後1,2日でわかるのでチエックできる。
(3)石灰窒素は褐変を増やさない。

8.打撲


 発生原因:収穫、選別、輸送時の打撲。
 打撲耐性品種間差:ホッカイコガネ(ポリフェノール含有が少ない)、さらゆきは出にくく、メークイン、さやか、はるか、ハロームーン、しんせいはやや強く、とうや、トヨシロは中、男爵薯、キタアカリはやや弱く、十勝こがね、こがね丸は弱い。
 発生防止対策:
(1)鉄部との打撲を少なくするようにする。
(2)落下の高さを低くする。
(3)温度の低いところで扱わない。10月以降の収穫、冬季の選別時に注意する。
(4)積み込み、積み降ろし時の投げ、小型貨物で田舎道を走ったりしても発生する。
 

9.押傷
 発生原因:過度の加重。脱水。ぼみの著しいものは復元できない。
 発生防止対策:
(1)年を越えて大量ばら積みしたものなどでは、春2月ころ積みかえる。
(2)ばら積みの高さを低くする。
(3)「男爵薯」、「農林1号」は出やすいので注意する。

10.ホウ素欠乏

発生原因:大きないもなどの内部に褐色の斑点が纏まってできる。上位の葉が黄化し、葉縁の枯死、葉柄が黄褐に変色する。
(1)pHが高くなると、ホウ素の吸収が悪くなるので、畑のpHは5.6程度にし、過剰な石灰を入れない。
(2)土壌が乾燥しすぎると発生が助長される。

付.剥皮褐変(剥皮黒変、酵素褐変) Enzymic browning、Enzymatic darkening,blackening after peeling
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