ポテトエッセイ第27話
【版画は吉岡真一さんの年賀状より】
コメ、トウモロコシ、アワなどのイネ科作物では、モチ種とウルチ種が知られています。 この違いはでん粉粒を構成する多糖類に起因し、モチ種はアミロペクチンだけですが、ウルチ種ではアミロースを何割か含んでいます。水の中で、でん粉を加熱していきますと、粘着力を増して糊となりますが、これにはアミロペクチンの性質が主に関係しています。御飯の例では、アミロペクチンが少ないと、朝炊いたものが晩にはボソボソとなりやすいのです。 イネ科作物以外でも、モチ種が見つかっており、ヒユ科のハゲイトウに似たアマランサスにもあります。これはジャガイモ、トウモロコシと共にインカ古代文明を支えた作物で、ヒトに不可欠のアミノ酸であるリジンやメチオニンの含有率が高く、アレルギー性患者に関心を持たれており、私も農業試験場の畑で試作したことがありました。
通常のジャガイモでん粉はウルチで、アミロースの含有はコメとほぼ同じ2割ですが、1987年、オランダでX線処理したイモの中からアミロースの無いモチ種(ワキシー)が見つかったという報告が出されました。ドイツのEuroPlant社やオランダの Aveve社ではアミロペクチンだけからなるでん粉を生成する品種を開発しています。
【写真:澱粉粒子。10〜40ミクロンが多い】
ジャガイモでん粉は、トウモロコシなどの穀類でん粉に比べますと、大粒です。それを糊にしますと、低温で透明な糊になり、粘りが強い特徴があります。ジャガイモでん粉は、水を吸って膨れるときの弾力を利用したカマボコ・魚肉ソーセージなどの水産練製品の外、水あめ、ブドウ糖、インスタント食品、乾電池、着物、上質紙、偽薬、おしろいなど、2,000を超えるものに使われています。 今後、これにモチでん粉が加わりますと、その用途がいっそう多様化し、需要の拡大が期待されます。そして・・・、イモ団子をつくろうとしたらすり鉢がすりこ木と共に持ち上がってしまった、などと言う話が聞かれるようになるかも知れません。