ポテトエッセイ第37話

本格焼酎大好き【ジャガイモ博物館】

 今焼酎は、よく飲まれています。ボトルもシャレたものがあるためか女性の多い結婚の祝賀会にも出てきます。
戦後の貧しい時代には焼酎の第2次ブームで、良く売れました。高度経経成長期にはビールに押され不振を続けていましたが、昭和55年ころから第3次ブームとなり、人気が出だし、昭和58年にウエスキーを抜き、ビール、清酒、焼酎の順となりました。何回かのブームを繰り返し、今日の地位を築くに至りました。
 何回かの焼酎ブームがあったにもかかわらず、焼酎に甲類と乙類の区別があるのが意外に知られていません。甲類とは、連続式蒸留機によって蒸留したもので、純粋に近く、アルコール分は36度未満で売られております。いっぽう乙類は、地方メーカーでつくられることが多く、単式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分は45度未満です。両者の差は言葉よりも、実際飲んでみたほうがよく判ります。甲類は無色透明で、無味無臭に近く、乙類は特有の香りと風味があります。この好みは人や年代によって差があり、甲類は比較的若い層に好まれます。甲類はさっぱりしすぎてうま味がなく、乙類はくせがあり、慣れない者には取っつきにくいものです。焼酎というと安価を思わせる時代があったので、単なる希釈アルコールと呼ばれるのを嫌い、工業用と区別して甲類をホワイトリカーと呼び、いっぽう乙類は酒税法のこの差別的分類を嫌い、「本格焼酎」と呼んで品格をあげようとしました。
 今(平成初め)、日本人口の過半数は戦後生まれの若年層によって占められるようになりました。これらの人びとは戦後のメチルアルコールで何千人も死んだという安価焼酎に対する偏見がありません。また、見栄や外聞で酒を飲んでいるわけでもありません。うまくて、値段が安い割に満足感があること、アセトアルデヒドが血液中にとどまる時間が日本酒より短くて悪酔いしないこと、そのまま飲まずに、いろいろな方法で割って、マイペースでつき合えるのがよいのです。その時の気分に合わせて、ビール、酒、焼酎などを飲みわけるようになったのです。ホワイトリカーを選んで好みの度合に割ったり、番茶やライムなどで割ってもよいし、本格焼酎を選んで独特の風味を楽しんでもよいわけです。好みは多様化しつつあります。
 北海道でのジャガイモを使った本格焼酎の試験醸造は、昭和51年秋清里町で開始されました。ここでのジャガイモは、それまでほとんどがでん粉原料になっていましたが、少しでも付加価値を高めようとしたのです。幸いその後焼酎ブームが到来、1流といわれる料理屋でも焼酎を飲む人たちが増えました。昔の映画で見たように琥珀の液体をグラスに注いで、生(き)のままストレートで一気に飲み干すことはなくなりました。ほとんどの人は、お湯、炭酸、番茶、そば湯、ライムジュースなど、何かで割って飲んでいます。焼酎をいろいろの場で飲みますが、飲んで酔いたいときもあれば、注がれるのが苦痛のときもあります。お湯などで割る量は自分でコントロールできるので、下戸でも雰囲気に合わせて飲め、お酒に比べマイ・ペースで飲めるのがいいのでしょう。 最近は、モルトが少なく添加物は多い模造ウイスキーとか、水あめやグルタミン酸入りのベタ甘の清酒に愛想をつかした若い層や本格的呑ん兵衛を中心に、くせのない点が評価されてか、焼酎は根強い人気があります。また、価格が安く、飲みやすい。ヤングは戦後の焼酎にまつわる暗いイメージを持ち合わせていなく、どこでもやっているボトルのキープを陳腐なものと感じたりしています。
 最近の清酒は、探せばいいのもありますが、かっての辛みと特有の芳香が消えたものが多くなりました。ウィスキーにも巧妙にエチルアルコールが添加され、さらにその添加物の臭いを消すため合成着色料が入れられ、長期熟成が手抜きされています。宣伝量の多いものが安心して飲めると、信ずる人びとに支えられているのでしょう。
 アルコールの添加の有無は、水割りやオンザ・ロックですぐ飲むと判り難いが、燗してみるか、少し時間をかけると判ると言われます。醸造用アルコールの用途別使用量をみると、その半分が清酒に、4半分が洋酒に添加されています。しかし、清酒の製造量が圧倒的に多いから、洋酒には清酒の四倍ほどのアルコールが添加されていると言われています。ウィスキーと呼ぶより「着色アルコール」が似着かわしく、ジャパニーズ・ウィスキーには文化を語れないものが多いようです。
 アルコールを添加しますと、まず、その臭いを消すため、合成香料を加える必要が生まれ、ついで薄められた本来のうまみを補強しなければならなくなり、ぶどう糖やダルタミン酸ソーダなどの化学調味料も添加することになるのです(最近一部甘さを下げる傾向も出てきているようですが)。これに対し、本格焼酎は天然醸造のアルコールのみを使用ています。アルコール度を一定に合わすため、水を加えますが、合成料や化学調味料を添加する必要はないのです。
 日本でつくられる大多数のウィスキーは、スコッチウィスキーと外見は似ていますが中身は全然違うものです。第1に原料が違い、第2に製法が違っています。すなわち、スコッチウィスキーはスコットランドでつくったモルトウィスキーとグレンウィスキーをブレンドしたものですが、国産でよく知られたウィスキーは穀類以外の原料、つまり廃糖蜜からつくったアルコールを加えてつくっていると思えばいいくらいです。わが国では、輸入モルトを10倍に水増ししても、すぐウィスキーとして売れるようになっているのです(ソバもソバ粉3割以上あればソバと表示できるように)。
 本物のスコッチウィスキーなどは酒税法にいう原酒だけでつくられています。また、日本では熟成期間についても、何一つ規制が設けられていないのですが、スコッチウィスキーでは最低3年以上の熟成が求められているのです。
 日本電子の松下和弘さんはNMRというもので、琉球泡盛(古酒五年)、3年以上寝かせた薩摩焼酎、中国貴州茅台(マオタイ)酒、ソビエト産コニャック「アララート」(表示六年)、スコットランド産ウイスキー「シーバースリーガル」(表示12年)の5種類の水の分子の状態を調べました。その結果泡盛がトップで101ヘルツ、ついで薩摩焼酎とシーバスが103ほど、もっとも劣ったのかアララートで12Oヘルツだったそうです。数値は分子運動を示し、これが小さいほど味としてはまろやかになるものです。焼酎でもいろいろあり、寝かせたほうがきつい香りや味がまろやかになっていきます。
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