カタクリでんぷん

ジャガイモでん粉についての質問

『カタクリ』、『カタクリ粉』ってジャガイモでん粉のことですか

 『カタクリ』とは、元来北国で雪解け後の4〜6月に渓流ぞいの木陰に、淡い紫紅の花をつけて上品にさくユリ科の野草です。別名「ゆりいも」ともいわれ、うぐいすが寄ってくる花として「ホーホケキョ」と呼んでいた地方もあったとか。うつむくように咲くピンクの花には「初恋」「寂しさに耐える」など可愛らしい花言葉がついています。北海道ではまだ大群落に咲くことが多く、オバタリアンまでとはいきませんが、少女が大集合でせまってくる感じがします。葉、花茎ともよく熱湯をくぐらせると食べることができます。
 茎は地中深くのびていますが、昔この鱗茎(りんけい)から良質のでん粉をとっていました。これが本当の『片栗粉』でしたが、少量しかとれないので、今この名で売られているものはジャガイモでん粉です。
 古名は堅香子(かたかご)。花の姿が『傾いたかご』に似ているところからつけられたらしい。

【左:カタクリ、この根から昔カタクリ粉を採った】
 『万葉集』の巻19に、大伴家持が、井戸に集まった少女らが笑い興ずる寺の井戸のそばに、カタクリの花が美しく咲き乱れる春の明るい風景を次のように詠んでいました。

もののふの八十少女らが汲(く)みまがふ
 寺井の上の堅香子の花

安政年間(1854〜) 北海道函館近郊亀田で馬鈴薯澱粉を製造(*高橋偵蔵著「農産製造学」を引用した全国澱粉連合会刊岩瀬亮、邊辺恵三著「日本及各国澱粉事情」p10-11)
天保 4年 1839年 群馬県嬬恋村大字大笹(元の大笹村)で九郎助がいも摺下しの機械を試作してジャガイモでん粉をとり、以後『加多久利』と呼んでこの地方随一の特産に育てた。(1982年「嬬恋村誌」p809-813)
天保 8年1837年 オランダ語を訳して「澱粉」とした。
明治 3年 1870年 千葉郡蘇我町で十左衛門が澱粉を製造し『片栗粉』の名称を得た。(*、△大正6年(1917)刊北海道庁内務部「馬鈴薯澱粉に関する調査」p8-14)
明治11年 1878年 北海道開拓使が澱粉を製造。薯1石(180L)から澱粉10.2kgを製造(△)。
明治14年 1881年 北海道の七飯勧業試験場で屑薯を利用して澱粉を製造。薯450kgから澱粉42kgを製造(△)。
明治15年 1882年 山越郡八雲村の徳川開墾地で辻村堪治(かんじ)が米国から手回し式澱粉製造機を取り寄せた。しかし1俵から僅か3.6kgの澱粉しか採取できず、自殺した。
明治26,7年 澱粉相場が高騰したので、この後空知、十勝、網走、上川等の各地で水車や馬廻し機を使って馬鈴薯澱粉の商品生産が始まった(*、△)。
明治30年 1897年 川口良昌が水車の力でジャガイモをすりつぶす機械を開発して7.8kgまで歩留まりを向上させた。かくて1904(明治37)年の八雲の澱粉生産者は241戸になった。翌年近隣の農家も参加して『八雲片栗粉同業組合』を設立するまで発展した。その製品は"八雲産"のブランドで他産地より高く評価された。☆
☆日本農業新聞刊・酒井勉著『市場への挑戦/農産編』

その外のでん粉もあるようですが

 でん粉には、片栗粉の原料となっているジャガイモをはじめ、小麦、サツマイモ、トウモロコシ、米、クズ、もち米などがあります。また、エスニック・デザートとして親しまれている輸入タピオカでん粉もあります。特にジャガイモでん粉は高品質の素材として、アイスクリームやお菓子、かまぼこ類やソーセージ、うどん・そば等の即席麺や生麺にも使われ、独特の歯応えと味をひき立てています。
 くず(葛)は、マメ科の大型つる性多年草で、山野・荒れ地で他の木などにからみついて自生・繁茂しているもの。葉は卵円形の小葉3個からできている複葉で、裏は白っぽい。花は真紅で蔓に近いほうから咲いていきます。蔓は強靱で、民具をつくる際材料にされます。
 大きな葉が風にひるがえり、裏が白く見えるところから裏見=恨みの語呂合わせで、
 恋しくばたずねて来てみよ和泉なる 信太の森のうらみくずの葉
と、歌われた例があるとか。
 くずは秋の七種(くさ)の一つです。
 吉田幸弘さんは、『生活のなかの植物』でおよそ次のようなことを書いています。
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 お月見にはお団子を十五夜には15個、十三夜には13個供える。また秋の七種(ななくさ)とか秋の収穫物を供えます。秋の七種とは山上憶良の
 秋の野(ぬ)に咲きたる花を指(および)折り
  かき数ふれば七種の花 
 萩が花 尾花 葛花 撫子の花
  女郎花 また藤袴 朝貌の花
という歌に基づいており、春の七草が摘み草の材料を集めているのに対し、秋の七種は眺める花を集めている。しかも艶やかな花ではなく、清楚な花を集めている。
 萩は、どこの野原にも生えているマメ科の低木でピンクの花を開くヤマハギのことだろう。これは草ではなく木である。したがって秋の七種は七草ではなく七種と書くべきだという主張すらある。この主張は正しいと思われるので、ここではそれに従った、・・・
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 肥大した根からとった澱粉をとりますが、これを葛澱粉(葛粉、クズコ)と呼んでいます。今日葛粉といって売っているものはほとんどがクズの澱粉ではないは皆さんもよく知っていましょう。
 根から採る良質のでんぷんは、くず餅、くず桜などに使われ、奈良県の吉野くずが有名です。しかし精製に手数がかかるため、やはりいもでんぷんに取って代わられました。
 根はカッコン(葛根)と呼ばれ、風邪薬葛根湯などの漢方薬に使われています。

ジャガイモでん粉の特徴というか、いいところを教えてください

   片栗粉を使うとトロリとお料理を仕上げることができます。他のでん粉にはみられない粘度の高さは、ジャガイモしょでん粉ならではです。ツルリとした喉ごしや冷めにくいアツアツ感。このとろみの魅力は、素材のうま昧をしっかり閉じ込めてくれます。透明度が高い点もでん粉の中では一番です。たがら、にごりなく、しかも色鮮やかにお料理が仕上がってきます。このようにジャガイモの片栗粉にはいいことがいっぱいです。

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片栗粉の上手な保存方法ってあるのですか

 コーンスターチや小麦粉でん粉に比べ、一番湿気を吸収しやすい。だから、お料理に使いやすい素材とも言えますが、その分細かな注意を払う必要があります。袋をゴムでとめてキッチンの戸棚に“ポイッ”していませんか。それを止めて、開封後はびん等の密閉式の容器に移しておきたいものです。こうすれば、品質を長く維持できるだけでなく、さがしやすく、調理の能率も向上します。
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