ジャガイモの寝相を見たことがありますか?
ジャガイモが出芽して10〜30日ころの日中に特定の株に目をつけ、その葉の着いている角度をチエックしておき、早朝にでももう一度眺めてみてください。昼は葉を横に拡げ、夜から早朝には葉を鋭角に保ち、茎の中心をとり囲むようにしています。本能的とでも言うのでしょうか、茎の先にこれから伸びてくる茎や葉のもとになる大切なものがありますので、夜間には冷え込みや霜から守るように包んでしまいます。この現象は就眠と呼ばれております。
ジャガイモになる果実の中の真正種子を植えてみると、幼苗時代にこの夜と昼の葉の動きを活発にやるものとそうでないものがあり、就眠運動の顕著な個体(系統)は、茎葉が概して大形優勢であり、いもの収量が多い傾向が知られています(田口1941)。
開花間近にまで育ったものでも、就眠しますが、その寝相にも品種間差がありあります。ある年の夏至の4時半最近の若者品種の寝相を見てみましたところ、ほとんど昼と変わらないものもありましたが、「アスタルテ」は幼芽のように頂部を立てダイズの寝相そっくり、「ワセシロ」や「とうや」は、大きくなった茎の中間についている葉柄をよじるようにして葉の裏側をみせ、台風によってもまれたかのように朝寝しています。そのバライティたるや、修学旅行などで、大広間で寝ている子供達にそっくりです。
オジギソウやダイズなど、マメ科植物でも、昼は葉を開き、夜は葉を閉じる習性を持っているので観察できます。マメ科では就眠運動を起こさせるケリドン酸のカリウム塩の働きによることが判っていて、オジギソウでは極微量ですが、ケリドン酸より1万倍も活性の強い就眠物質を含んでいるそうです。
チューリップの花が昼間開いて、夜に閉じているのは、昼夜の気温の変化が原因であり、気温が高いと、花弁と茎とのつけ根に近い部分(基部)の生長速度が、外部の細胞より内部の細胞のほうが早くなるため、花弁を外側に押し倒すような感じになり、花が開いてしまいます。
ヒマワリの花の動きもその名の由来からみで話題にのぼりますが、つぼみのころは太陽のほうへ少し向きますが、絵に書かれるころではバラバラになり、方位を測ってみたところ南東ないし東を向いたままのものが多かった。名の由来は、日について回るからと言うよりも、丸い形が学名のヘリアントウス(太陽)のとおり、つまり黄金の日輪にあると言うべきでしょう。 (『いも類振興情報』第60号p20,1999/7)